ガイドコメント
イギリスはバーミンガム出身のロック・バンド、エディターズの2ndアルバム。プロデューサーは、U2やR.E.M.を手がけるジャックナイフ・リー。世界的に好評を博した前作からさらに進化したサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01SMOKERS OUTSIDE THE HOSPITAL DOORS
UKチャートでNo.1を獲得したアルバム『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』からの1stシングル曲。堂々としたバンド・サウンドにのせて語られる、“誰か向きを変えてくれ 一からやり直させてくれ”という切実な歌声が印象的。
02AN END HAS A START
キレの良いドラミングや扇情感をたたえたエレキのリフがリードするロック・チューン。安定した演奏には並々ならぬ実力が感じられ、スピーディで変貌自在な展開も見事。2ndアルバム『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』からの2ndシングル曲。
03THE WEIGHT OF THE WORLD
“人生のあらゆる断片は 最後にひとつになる”と繰り返される哲学的な詞が、いかにも彼ららしい。シンプルに奏でられるドラムやギターによる、空間をうまく活かしたプレイが神秘的なムードを作っており、抑制を効かせたヴォーカルもそれを助長。
04BONES
ジャックナイフ・リーによるプロデュースが冴えわたったナンバー。甲高いエレキ・ギターの響きと疾走感にあふれたドラミングが、ひたすら走り続ける彼らの姿を表わしているかのようだ。ロック・バンドによるダイナミズムを体現している。
05WHEN ANGER SHOWS
シンセサイザーを用いたイントロこそ幻想的に始まるものの、内省的なヴォーカルが一気に厳しい現実の世界を描き出す。“言ってくれよ 大丈夫だと”と切実に歌われる言葉が、激しいドラムと悲壮感の漂うギター・サウンドの間に空しく響く。
06THE RACING RATS
“時間がないことを知っていながら、それでも無駄に過ごしてしまう”といった詞に顕著な、堕ちていくことを止められない苦しい現実を歌ったナンバー。翳りのあるヴォーカルが、まさに曲のテーマにぴったりだ。無視できないリアリティを持っている。
07PUSH YOUR HEAD TOWARDS THE AIR
“涙の海に溺れないで 僕はいつだってそばにいる」という詞が勇気を与えてくれる感動的なナンバー。ゆっくりとしたテンポで想いを噛み締めるように一言一言を発するヴォーカルには、誠実さがあふれている。シンフォニックなギター・サウンドも見事。
08ESCAPE THE NEST
痛々しいほどに、甲高いギター・サウンドが印象深いロック・チューン。頑張ってみたが疲れ果て、進まなければならないが先は長すぎる……。そんな状況に置かれながらも必死に耐える主人公が最後に発する“今 街の光が見えるだろう”のフレーズが感動を誘う。
09SPIDERS
ただでさえミステリアスなヴォーカルを持つトム・スミスの、「時には知らない方がいいこともある」という格言的な言葉が、硬質なバンド・サウンドの上を不可思議に鳴り響く。ゆったりとしたナンバーにもかかわらず、ピリピリとした緊張感に包まれた一曲だ。
10WELL WORN HAND
2ndアルバム『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』の本編を締めくくるスロー・ナンバー。一音一音慎重に鳴らされるピアノをバックに、ほぼアカペラ状態のヴォーカルが“こんなことになって 本当にごめん”とつぶやけば、そこには悲しみだけが押し寄せてくる。
11A THOUSAND PIECES
スピード感に包まれた激しくドラマティックなサウンドとは対照的に、“今夜 僕の心は砕け散った 千のカケラに”というトム・スミス(vo)らしい繊細なイメージが綴られていく。野太い中にも憂いを感じさせる歌声がインパクト大。
12OPEN UP
彼らにしては珍しく、安らかで温かなギターが鳴り響く一曲で、普段は陰りを感じさせるトム・スミスのヴォーカルも心なしか穏やかに聴こえる。2ndアルバム『アン・エンド・ハズ・ア・スタート』の日本盤ボーナス・トラック。