ミニ・レビュー
深遠なサウンド空間の中、研ぎ澄ました三つの音と、性急な歌声が協調とせめぎ合いを繰り返しながら、さまざまな心象風景を語りかけてくる、そんな一枚。そして、各曲のイメージを絵で表現したアート・ブックにより楽曲の世界観はさらに広がる。
ガイドコメント
2005年発表の4thアルバム。“REST&ACT”と銘打った2ヵ月連続リリースのシングル曲など、3ピースの枠を超えた高い音楽性を発揮。洋モノのような味のあるヴォーカルにもいっそうの磨きがかかっている。
収録曲
01introduction
柔らかなアコースティック・ギターによって奏でられる、美しいメロディ・ラインが出色のインスト・ナンバー。けたたましいハウリング音から、アルバム『and world』の次曲「world symphony」へとシームレスに繋がっていく。
02world symphony
「私」と「世界」との関わりが俯瞰的視座で語られるスケールの大きなリリックに圧倒される。訳して「世界交響曲」と名づけられた、プリミティヴな初期衝動とダイナミズムに満ちた10thシングル。
03id-イド-
タイトルの「id-イド-」とは、フロイトによって提唱された“快楽を追求する無意識的衝動”という意味の心理学用語。心象風景と内面的葛藤が、疾走感のあるメロディック・パンクにのせて描かれているナンバー。その手触りはもはや文学的だ。
04River
イントロのファンキーなギター・プレイからノック・アウトされるノリのいいミディアム・チューン。Aメロとサビのコントラストが強烈な印象を残す、ACIDMANにはしては珍しく“踊れる”一曲に仕上がっている。
05季節の灯
アルバム『and world』で「world symphony」で提出された「私」と「世界」の関係について、改めて正面から向き直った作品。「world〜」と表裏一体をなすシングルともいえる。彼らとしてはストリングスを初めて本格的にした導入した楽曲でもある。
06SOL (inst.)
アルバム『and world』の前半部と後半部の橋渡しとなる、インタールードとしての要素が強いインストゥルメンタル。力強くもメロウなメロディ・ラインが印象的なナンバーで、シングル・カットされた「ある証明」のカップリングにも収録されている。
07銀河の街
揺らぎのあるスペーシーなギター・リフ、瑞々しいまでのサウンド・スケープ。スケールの大きい楽曲が多数収められているアルバム『and world』のなかでも、特に壮大な宇宙観を感じさせるミディアム・ナンバー。
08夏の余韻
ほぼすべての曲作りを担当しているヴォーカルの大木伸夫ではなく、ドラムスの浦山一悟が作曲を担当したセンチメンタルなロック・バラード。タイトルどおり「夏の余韻」を感じさせる、季節感にあふれた作品に仕上がっている。
09プラタナス
跳ねたリズムや柔らかなメロディが楽曲全体を支配し、中間部におけるベース・ソロは快感指数100%。ACIDMANの突き抜けたポップ・センスが楽しめるナンバー。まずは肩の力を抜いて、リラックスして聴こう!
10water room (inst.)
アルバム『and world』の3曲目のインスト・ナンバー。麻薬のように中毒性の高いメロディが、プログレッシヴ・ロックのごとく幻想的な響きをもってループする。ギターの不思議な音色は、弦をスプーンで叩くという独特の奏法によるものだ。
11stay on land
アルバム『and world』は、本作品から壮大な終幕に向けてゆっくりと走り出す。静けさをたたえながらも、圧倒的な表現力で楽曲をドラマティックにもっていく展開力は、まさにACIDMANならでは。魂の込められたリリックにも注目のナンバーだ。
12ある証明
彼らのネクスト・ステージへの到達を証明した、通算8枚目となるシングル。ガレージ&パンクのテイストを漂わせながらも、その骨格はあくまでメロディアス。眩暈するほどの強烈なドライヴ感で聴くものを圧倒する。
13and world
アルバム『and world』のラストを飾るのは、祈りにも似た崇高な想いが世界の隅々まであふれ出していくかのような、彼らの集大成的作品。最後でアルバム1曲目の「introduction」へと回帰する展開が、実にドラマティックだ。