ミニ・レビュー
2004年名曲大賞候補の「ロックンロール」とは別種の興奮を与えてくれる5作目。ドラマーの交代によって表現の質を変えたこともあり、思いっきりアナログの世界で今という時代を切り取ることに成功している。派手さはないが間違いなく傑作。★
ガイドコメント
映画『ジョゼと虎と魚たち』の音楽を担当、ドラムのクリストファー・マグワイアが正式加入と、話題のつきないくるり。リアルなロック・サウンドつまった5thアルバム。
ガイドコメント
映画『ジョゼと虎と魚たち』の音楽を担当したりドラムのクリストファー・マグワイアが正式加入したりと、彼らにとって2003年は激動の1年だった。そんな中でリリースされた5thアルバム。リアルなロック・ナンバーがズラリ。
収録曲
01グッドモーニング
早朝の新宿、夜行バスで上京してきた男女ふたりの物語。夢を抱き上京したものの視線から、行き交う人、電車……という日常の瞬間を切り取っている。朝靄のようにゆったりと漂うストリングスの波や穏やかなリズムが、その瞬間にマッチしている。
02Morning Paper
くるりのキテレツな言葉が炸裂。無秩序に並べられたような歌詞の中に、「解散しない」というポジティヴな力強さと「冬の泉越える歪み」という韻を踏む面白さを、ひとつにさらりと収めるあたりはさすが。アグレッシヴなギターも絶品!
03Race
音楽的振幅の大きさを感じさせる1曲だ。バンジョー、チェロを採り入れることで、切なくも不思議な浮遊感漂う世界が創り出されている。のほほんとした声の裏側で、魂をすり減らして音を掴もうとしているくるりが見えてくる。
04ロックンロール
新しいドラマーのクリストファー・マグワイアを迎えて発表した5thアルバム『アンテナ』からのシングル曲。電子音やエフェクトを多用した前作までとは一転し、バンド初期に戻ったかのようなロック・ナンバー。
05Hometown
くるりのホーム・タウンは、バリバリのロックンロールということか。個々の楽器がぶつかりあい爆発しているサウンドには厚みがあり、ジャム・セッションのようにフリーキーでファンキー。うねるギター・ソロが印象的だ。
06花火
「花火は全て消えてゆく」 と歌うように、瞬間の美しさの後に残る、刹那的悲しみの質感を持っているナンバー。ベース・ラインは自由自在に空間を這い、終盤にリズム・アップしたドラムと絡むあたりは圧巻。
07黒い扉
ゆったりとしたリズムにダーティーな臭いを感じるギター・サウンドが堪らなくかっこいい。沸々と湧き上がるメロディが濃厚なグルーヴとなり、聴き手に黒い扉の向こう側をイマジネーションさせる刺激を持っているナンバーだ。
08花の水鉄砲
キレのいいギターとドラムのサウンドで、つい行進していまいそうな小気味良い幕開け。「水鉄砲」「帷子の辻」「桃源郷」「鈍色」と昔の言葉を多く散りばめた歌詞が新鮮で個性的。言葉遊びが楽しいロックンロール。
09バンドワゴン
岸田繁の歌声や人間味を存分に堪能できる弾き語りナンバー。歌い出しのカウント、息遣いから弾き語りならではの生々しい空間が伝わり、伸びやかな声が気持ちよく心に響く。何ら飾らない、ありのままの姿が垣間見られる。
10How To Go (Timeless)
5thアルバム『アンテナ』収録の、バンド初期を思い出させるストレートなロック・ナンバー。モラトリアムな自分と現実の社会で生きることのギャップという、若者なら誰もが突き当たる壁をテーマにした青春ソング。