ミニ・レビュー
10年の活動に終止符を打ったハスキンの集大成といえるベスト・アルバム。入手困難音源も多数収録。日本のメロコア、エモコア史に燦然と輝く、ポジティヴさと摩訶不思議な魅力を兼ね備えたバンド。その軌跡と歴史を紐解くのにうってつけのアイテム。
ガイドコメント
2005年3月6日のライヴで、約10年に及ぶ活動にピリオドを打つハスキンの、10年の軌跡を網羅したベスト・アルバム。ライヴ会場のみでの販売音源をはじめ、現在入手困難な貴重な音源も多数収録されている。
収録曲
01ONLY WAY
パンク特有の荒々しいギター・サウンドに、ハスキング・ビーらしい美しいメロディ・センスが光るエモーショナルなナンバー。磯部のひたむきさが伝わる歌声は、聴くだけで元気になれる。
02GIVE A SHIT
超高速の8ビートに乗せて力強いメッセージを叩きつけるパンク・ナンバー。「誰がどう思おうと関係ない 自分自身で決めて良いんだ」と人間の根源に訴える歌詞は、パンク=青少年という常識を覆し、大人の心にもまっすぐに響くだろう。
03DON'T PICK YOUR NOSE
タイトルはふざけてるが、自らの半生と都会で生きる現在を歌ったセンチメンタルなパンク・ナンバー。メロディアスなサビは感情を込めて歌う磯部の姿が想像できるほどエモーショナルで、思わず心が揺さぶられる。
048.6
磯部(vo)の故郷、広島でかつて起きた悲劇、そこから年月を重ねた現在を、自身と重ねて歌ったナンバー。「僕はそこで生まれたことを誇りに思っている」という詞が印象的。イントロの壮大な高音ギターが8月の快晴の空を思わせる。
05QUESTION
彼らの楽曲中でも異色といえる、ピアノがフィーチャーされた軽快なミドル・ポップ・ナンバー。シンプルなメロディと掛け合いのあるヴォーカルにより、ライヴでの人気も高い。彼らのメロディ・センスがひときわ光る一曲。
06WALK
横山健(Hi-STANDARD)プロデュースの1stアルバム『GRIP』(96年発表)に収録。キャッチーなメロコア路線を踏襲したサウンドが若さを感じさせる。ためらわず、とにかく前へ歩みを進めることを歌った一曲。
07A SINGLE WORD
人生において誰もが出会うであろう大切な人への愛を歌ったエモーショナルなパンク・ナンバー。サビ終わりの「Thanks」というクールなフレーズに“愛”が集約されている。その後のギター・ソロの壮大さは圧巻。
08OUT OF SIGHT、IN MY MIND
冒頭からのポップなAメロが印象的なパンク・ナンバー。「自分の中の自分に見えていない部分」を歌う。「いつか自分の持つ魅力がわかるさ」と、磯部の経験から悟ったような詞に、説得力とカリスマ性が感じられる。
09SUN MYSELF
“自然に身を任せることで、自分であることを取り戻す”ことを歌った、8ビートのエモ・ナンバー。ギター・ソロ終わりの大サビともいえるメロディの広がりには、ハスキング・ビーのセンスが存分に発揮されている。
10PUT ON FRESH PAINT
勇気を出して一歩踏み込んだ結果、手にできたことやものに対する喜びを歌ったパンク・ナンバー。高速の8ビートから一転、シンプルに展開するサビが気持ちいい。「それはすごい力さ」と、かすれ声で必死に歌う磯部の言葉には、抜群の説得力が感じられる。
11LIFE
親しみやすいポップなギター・リフで始まるパンク・ナンバー。時間に追われるだけで歳を重ねるのではなく、時には泣き、時には笑い、思いのままに生きていきたい。そんな誰もが思う感情をパンキッシュなサウンドに乗せて歌っている。
12THE SUN AND THE MOON
ハスキング・ビーの代表曲のひとつに挙げられる傑作ナンバー。キャッチーなメロディ、壮大な展開、エモーショナルなヴォーカル。彼らのすべてが詰まったかのようなサウンドは「This is HUSKING BEE」といっても大げさではない。
13FACE THE SUNFLOWER
“思い切って一歩踏み出そう、そうすれば道の先には必ず同志がいる”と、純粋にまっすぐ進むことの素晴らしさを歌ったパンク・ナンバー。スピードをキープしながらも小気味よく展開するリズム・チェンジが聴きどころだ。
14後に跡
アコースティック・ギターを用いた、日本語で歌われる弾き語りナンバー。シンプルなサウンドゆえ、磯部(vo)の息遣いまで感じることができる。同音異義語を多用した詞は、思わず歌詞カードを開きたくなってしまうほど不思議な語感がある。
15海の原
ミディアム・テンポのロック・ナンバー。マイナーからメジャー・コードへと展開する流れは、パンクというよりは歌謡曲的なテイストが強い。歌詞は日本語で古典的な言葉を多用し、硬派な空気を醸し出している。
16BY CHANCE
「宇宙」「太陽」といったスケールの大きな言葉を使いながらも、人として生まれたこと、大切な人と出会ったことをリアルに歌った詞が秀逸。リスナーを良い意味で混乱させるであろう、イントロからAメロへの急な展開も聴きどころ。
17欠けボタンの浜
爽やかなアコースティック調の弾き語りから、力強いバンド・サウンドへ展開するミディアム・ロック・ナンバー。サビの壮大な展開、日本語を一つ一つ噛み締めるかのような磯部のヴォーカルは感動的。思わず一緒に歌いたくなる。
18#4
ハード・ロック調のイントロから8ビート・ロックへと展開する、ハスキング・ビーのポップ・センスが爆発したキャッチーなアンセム・ナンバー。ライヴ映えするであろうサビにおけるコーラスの掛け合いがクール。
19新利の風
4thアルバム『the steady-state theory』からの一曲。ミドル・チューンのなかにも、凝ったアレンジが感じられ、リフを刻むギターとピアノの絡みが心地よい。日本語詞の「ひらり」「さらり」といったこれまでにはない言葉の瑞々しさが心地よい。
20NEW HORIZON
平林一哉がメイン・ヴォーカルをとった痛快なパンク・ナンバー。ポジティヴな歌詞もさることながら、複雑でありながらスピード感を失わないメロディの展開が秀逸。平林のハイ・トーン・ヴォイスも聴きどころだ。
21The steady-state theory
彼らの楽曲にしてはやや控えめなサウンドだが、スピード感は抜群の日本語パンク・ナンバー。サビでのコーラスの掛け合いは思わず口ずさみたくなるほどキャッチーだ。ラストのサビで、2人のヴォーカルがハモる瞬間が感動的。
22DAWN AND GONE
冒頭からスピード全開の痛快なパンク・チューン。リズムを転換しながら大胆に展開するサビに、平林一哉のハイ・トーン・ヴォーカルが瑞々しく映える。疾走しながらもストーリー性を感じさせるメロディ展開は、さすがハスキング・ビーの仕事だ。
23一道のイデア
イントロのメロディアスなギターがクールなミディアム・ロックンロール・ナンバー。クラムボンの原田郁子がコーラスとして参加。彼女の声が、くどくもなり得るメロディを畳みかける展開の中に清涼感を与えており、心地良ささえ感じさせる。
24青い点滅
思わず目を閉じて曲の世界に入り込んでしまいそうな、クリスマスの風景を描写したセンチメンタルなロック・ナンバー。サウンドの盛り上がりが最高潮に達し、磯部の掛け声とともに登場するハーモニカの響きがクールだ。
25摩訶不思議テーゼ
シンプルなメロディとアレンジだが、徐々に増していくドライヴ感が心地良い8ビートのロック・ナンバー。その中で淡々と鳴り響く意味深な歌詞は、不思議な説得力を持ってリスナーの心を揺さぶる。