ミニ・レビュー
名古屋を拠点に活動する男性4人組グループが、インディでの3作を経てリリースしたメジャー・デビュー・アルバム。ロックをベースとしつつも、さまざまなジャンルの音楽の要素を取り入れ、ポップに仕上げることができるセンスと視野の広さが実に頼もしい。
ガイドコメント
踊れて泣けると噂のロック・バンド、the ARROWSのメジャー1stアルバム。インディーズ時代の名曲群を成長著しい彼らが新たにレコーディングした曲や書き下ろしなど、入門にも最適のアルバムといえる。
収録曲
01ロックンロールダンシングガール
スコーンと音を立てながら突き抜けていく、高速のロックンロール。しなやかなビート感とキャンディ・ポップなメロディがひとつになって享楽的な空気がどんどん増していくあたりが、バンドの本質を端的に伝える楽曲だといえる。
02ナイトコール
宇宙の彼方までぶっとんでいきそうな浮遊感を持つギター・リフ、力強くグルーヴしていく4つ打ちのビート、ファンクの要素を感じさせるベース・ラインなど魅力たっぷりのサウンドが展開される。独創的なミクスチャー感覚がはっきりと現われたナンバーだ。
03プレイボーイは憂いボーイ
サルサ、ボサ・ノヴァのファクターを採り入れたアレンジメントからは、このバンドが持つ音楽的な懐の深さが伝わってくる。歌の内容は“たまには里帰りもいいじゃん、ラクにいこうよ”という感じで、思わず気分がラクになる。
04スターサーカス
インディーズ時代から名曲の呼び声が高いミディアム・ダンス・チューン。フィッシュマンズからの影響をしっかりと血肉化し、カンペキなオリジナリティを発揮しはじめた記念碑的楽曲といえるだろう。美しいメロディにうっとり。
05JIVE JIVE
特にライヴにおいて爆発的な支持を獲得しているアッパー系のナンバー。強靭なビートをたたえたバンド・アンサンブル、繊細なイメージのギター・リフとエッジの効いたカッティングが同居したアレンジが見事。
06恋する摩天楼
軽快な裏打ちのリズムとドラマティックな展開を見せるメロディがひとつになった、ユニークなアイディア満載の楽曲。次はどうなっちゃうんだろう? というワクワクとした期待感は、まるで恋のような感覚で響いていく。
07oh!ベイビー!!
邪な気持ちを抱きつつ、それでも純朴な感情を忘れないでいる。そんな男子のリアルな恋心をテーマにしたラブ・ソング。ゆったりと体を揺らしながら、ソングライターである坂井竜二の世界観をたっぷりと堪能してほしい。
08イエスタデイワンスモアーズ
気になる彼女をバイクで送った思い出と「どうやら、フラれたらしい」という予感。あまりにも切ない物語を、繊細な心地良いメロディと映像的なサウンド・メイキングで映し出したミディアム・チューン。
09二人三月 (New Mix)
アコースティック・ギターの軽やかなカッティングとふくよかなホーン・セクションが印象的な、ラブリーな恋の歌。彼女の振る舞いにドギマギしながら、僕らは少しずつ大人になっていく……。こういう世界観にもARROWSの個性が表われている。
10うわさの彼女
素朴な空気をまとったメロディと“彼女”に対する温かい気持ちを綴った歌詞がひとつになった、アコースティックな手触りのナンバー。デリケートな情感と良質のポップ・センスを兼ね備えた坂井のヴォーカリストとしての魅力が伝わってくる。
11BGMの向こう側
久しぶりに会った彼女とのドライブはやっぱり切ない結果になりそうで……という歌詞を、爽快感にあふれたサウンドのなかでさっぱりと歌い飛ばす。ほんのりとした悲しみと心地良いダンス・トラックの美しき邂逅が、絶妙の味わいだ。
12星空歩く地球ウォーク
レゲエ、ダブの要素を大胆に解体し、オリジナリティあふれるポップ・チューンとして再構築したナンバー。はかなくて切ない生活のなかに潜む“なんか、これ、よくない?”という貴重な瞬間をとらえた歌詞を含め、このバンドの本質が垣間見られる1曲といえるだろう。