ガイドコメント
本格派ソウル・シンガー、アリシア・キーズの2007年11月発表のアルバム。情熱的な歌声やメロディ、卓越したピアノ演奏など、彼女の魅力が存分に詰め込まれている。現代のソウル・ミュージックにおける一つの完成形と言えそうだ。
収録曲
[Disc 1]
01AS I AM
70's風のレコード・ジャケットの雰囲気そのままにレコード針を落とす音からスタート。アリシアが敬愛するショパン「ノクターン 第20番嬰ハ短調(遺作)」をベースとしたクラシック・ピアノを披露する、アルバム『アズ・アイ・アム』のイントロとなるインスト。
02GO AHEAD
“ここから出て行って! 立ち止まらないで!”と、傷ついた末についに別れを決心した女性の吹っ切れた様子を活き活きと描くナンバー。クラヴィネットやモーグ・ベースによる弾力感のあるサウンドが、70年代のファンキーな世界を再現する。
03SUPERWOMAN
すべての女性のために立ち上がるスーパーマンならぬスーパーウーマンであることを高らかに宣言し、同時に世の女性たちを励ましてもいる。アルバム『アズ・アイ・アム』では、前曲から続くように同テンポのリズムでピアノが奏でられる心憎い仕掛け有り。
04NO ONE
80年代以降のアーバン系シンガーとしては異例なほど喉を大きく開いて力いっぱいに歌い上げて見せる、70年代オリエンテッドな曲。ピアノをベースとしながらも、明らかに従来とは違ったスタイルを作り上げ、もはやここにはソウルやロックの垣根はない。
05LIKE YOU'LL NEVER SEE ME AGAIN
プリンスの代表曲のひとつ「パープル・レイン」の流麗なエンディングを膨らませていったと思われる美しすぎるラヴ・バラード。“殿下”の影響はサウンドばかりではなく、裏声を交えた色っぽく妖しく迫るヴォーカルにも色濃く表われている。
06LESSON LEARNED
マイケル・フランクスのごときジョン・メイヤーのヴォーカルがやさしくサポートする中で、アリシアがありったけの力を歌に込めるその対比の美しさは特筆すべきもの。ジョンはギターでも参加しており、こちらもまた好プレイを聴かせる。
07WRECKLESS LOVE
1970年前後のガールズ・グループを思わせるポップなリズム・アレンジメントが楽しいアップ・ナンバー。ひたむきで向こう見ずな若い愛を懐かしみ、その時代へと思いを馳せる逃避行を夢見心地のサウンドの中に巧みに織り込んでいる。
08THE THING ABOUT LOVE
愛に戸惑い、愛に苦しみ、愛に悦び、愛に生きる人の性。リンダ・ペリーが制作参加したロック色の強いサウンドをバックに、アリシアはそんな“愛”の本質を、押し殺したような歌声でごく真面目に真っ正面から捉えてみせている。
09TEENAGE LOVE AFFAIR
“日記にあなたの名前を書くの。あなたの名字、そして私の名前”と、初々しい十代の恋を軽快なビートに乗せて歌うキャッチーなナンバー。プロデュースには、ファンク系アクトのプラントライフのジャック・スプラッシュが関わっている。
10I NEED YOU
70年代を思わせるシンプルなビートが多いアルバム『アズ・アイ・アム』収録曲の中で、例外的に複雑な打ち込みビートを用いてはいるが、そのメッセージ性やヴォーカルのスタイルは他曲同様にまっすぐだ。サックス奏者のエヴァレット・ハープが参加。
11WHERE DO WE GO FROM HERE
ウータン・クランにも使われた古いソウル・ナンバーを引用し、原曲よりも泥臭さを増してレゲエ・フレイヴァを加味したような仕立て。生きていく辛さを歌うテーマは、国境はもちろん、時代も超越したまさにエヴァーグリーンなもの。
12PRELUDE TO A KISS
ジョン・レノン「イマジン」を想起させるピアノがしんみりと心に響き、アリシアの伸びやかな歌声に癒される。ピアノ一本をバックにアリシアが独唱する2分強のプレリュードながら、まったくその短さを感じさせない充実した内容だ。
13TELL YOU SOMETHING
エレキ・ギターの入り方やマーチング・ビートなどのアレンジにU2の影響が透けて見えてくるロック・テイストのナンバー。アリシアのヴォーカルは無防備なほどにまっすぐで、彼女の愛に対する真摯なスタンスがひしひしと伝わってくる。
14SURE LOOKS GOOD TO ME
生ドラムやベース、ギター、ピアノ、オルガンといった昔ながらのバンド・サウンドをバックに、荒々しいかすれ声を押し出すアルバム『アズ・アイ・アム』のラスト・ナンバー。R&B界の歌姫がパワフルで人間くさかった70年代のロックを見事に再現してみせている。
[Disc 2]
01WAITING FOR YOUR LOVE
02HURT SO BAD
03SUPERWOMAN
04NO ONE