ミニ・レビュー
15周年にあたり制作された、アルバム未収録B面曲を集めた裏ベスト的な作品。B-SIDE集ゆえに、シングル過去作を反転させ並べたデザインのジャケットが彼ららしさを表現している。タイトル曲に劣ることのない質の高さをあらためて実感できる2枚組全20曲。
ガイドコメント
デビュー15年目を記念するミスチルのカップリング集は、年代順に並べた2枚組仕様。トップ・アーティストの宿命から解放された、ウィットの利いたナンバーを多数収録。オリジナル・アルバム『HOME』の流れを汲んだ、非常にナチュラルな作品だ。
収録曲
[Disc 1]
01君の事以外は何も考えられない
92年発表の2ndシングル「抱きしめたい」のカップリング曲。デビュー前からライヴで演奏されていたナンバーで、桜井の初々しい歌声が新鮮だ。グロッケンの音色が可愛らしいキャッチーなラヴ・ソングを、ケルティックな間奏で引き締めている。
02my confidence song
94年発表の5thシングル「イノセント・ワールド」のカップリング曲。シンプルなアコースティック・ギターをバックに歌う、痛快なプロテスト・ソングだ。デビュー2年目にして、現在のミスチルの世界観はすでに完成していたといえる。
03雨のち晴れ (remix version)
95年発表の8thシングル「es〜Theme of es〜」のカップリング曲で、4thアルバム『Atomic Heart』にも収録されていたナンバーをリミックス。遊び心と毒気をたっぷり含んだ10分弱の大作となっている。
04フラジャイル
95年発表の9thシングル「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌〜」のカップリング曲。刃のように鋭い言葉と教会でライヴ録音された荒削りな演奏がベスト・マッチ。ファンキーなサックスとソウルフルな女性コーラスが、刹那的な雰囲気を盛り上げている。
05また会えるかな
大ヒット・シングル「名もなき詩」のカップリングとしてリリースされた、小品ながらも味わい深い“隠れ名曲”のひとつ。恋がはじまるドキドキ感を、シニカルな視点でユニークに描いている。
06Love is Blindness
96年発表の12thシングル「マシンガンをぶっ放せ-Mr.Children Bootleg-」収録曲。余分な音を一切削ぎ落とした演奏をバックに、退廃的な歌詞がより重く響く。ミスチルのダーク・サイドを代表するナンバーといえる。
07旅人
96年発表の12thシングル「マシンガンをぶっ放せ-Mr.Children Bootleg-」に収録。風刺の効いた歌詞とは裏腹に、明るく突き抜けたメロディが胸に突き刺さる。ミスチルの隠れ名曲的なナンバー。
08デルモ
97年発表の13thシングル「Everything(It's you)」のカップリング曲。ジャミロクワイを意識したという緩いグルーヴは、ミスチルとしては異色のサウンドだ。“デルモ”と“おりも(政夫)”をかけた脱力のオチが、意表を突いている。
09独り言
99年発表の16thシングル「光の射す方へ」に収録された、アコギとブルース・ハープのシンプルな弾き語りナンバー。桜井のフォーキーな歌唱と“独り言”のコーラスが、ボブ・ディランの「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」を彷彿とさせる。
10Heavenly kiss
2000年発表の18thシングル「口笛」のカップリング曲で、倦怠期のカップルを優しい視点で描いたナンバー。エフェクトを効かせたギター、エレピやホーンなどをちりばめたAOR風のサウンドが、成熟した雰囲気を醸し出している。
[Disc 2]
011999年、夏、沖縄
2000年発表の19thシングル「NOT FOUND」のカップリング曲。何よりもまず言葉数の多さに圧倒される、ミスチル流の新世代フォーク・ソング。浜田省吾から影響を受けたという世界観と吉田拓郎調のメロディにリスペクトを感じる。
02花
2001年発表の20thシングル「優しい歌」のカップリング曲。11thシングルとして96年にリリースされた曲を、アレンジを一新してアルバム『B-SIDE』に新録。アコースティック・ピアノを基調としたポジティヴなサウンドに生まれ変わった。
03さよなら2001年
シングル「君が好き」のカップリングに収録されたアルバム未収録曲。世界がもう少しだけ幸せな明日になれるようにと、平和への思いをストレートに綴ったメッセージ・ソング。
04I'm sorry
23枚目のシングル「Any」のカップリング曲で、アルバム未収録の貴重なナンバー。ケンカ別れをしてしまった恋人に、ありったけの誠意をこめて謝り、許しを乞うといった、ちょっと情けなくもユニークなラヴ・ソング。
05妄想満月
2004年発表の26thシングル「Sign」のカップリング曲。寺岡呼人との共作で、和み系の曲調にストーカー風の主人公を描いたストーリーが面白い。フォークとジャズ、純情と妄想が交錯する、アコースティックなワルツだ。
06こんな風にひどく蒸し暑い日
2004年のレコード大賞で大賞を受賞したシングル「Sign」のカップリングに収録された曲で、「youthful days」のような青春歌が、ミスチルには珍しいディスコ・ビートで演奏されている。
07ほころび
アコースティック・ギターのノスタルジックな響きが印象的な、オーガニックな温かみを持つナンバー。いまはいなくなってしまった“君”への思いを伝える歌詞や、4人のアンサンブルがリアルに伝わるサウンド・メイクもいい。
08my sweet heart
どこかジャジィな雰囲気を感じさせるアレンジメント、しっかりと肩の力の抜けた演奏、音楽的な深みを感じさせるギター・ソロとオルガンの絡み。このバンドが持つ音楽的レンジの幅広さをはっきり証明する、何気ない名曲。
09ひびき
悲しみに満ちた世界情勢と、平凡だけど素晴らしいシアワセに囲まれた日常。大きく離れたふたつの事象をナチュラルに結びつけ、しっかりとしたリアリズムを体現することに成功した、アコースティック・テイストのナンバー。
10くるみ-for the Film-幸福な食卓
小林武史が音楽を担当した映画『幸福な食卓』の主題歌。クラシカルな空気をもたらすピアノ、ストリングスと“ねぇ くるみ”と優しく語り掛ける桜井のヴォーカル(ファルセットがきれい!)が静かな感動を与えてくれる。