ミニ・レビュー
ロバート・ジョンソン作品集を挟み4年ぶりとなったオリジナル作。彼流儀のブルースが展開されてるのは言うまでもないが、“愛”を歌う時に感じられる、楽曲・サウンド・歌唱の表情の柔らかさが格別印象的。“帰る場所”を持つ、愛に満たされた60歳の男の今が味わえる。
ガイドコメント
4年ぶりのオリジナル・アルバム。幸せに満ちあふれたムードと愛情の匂い、それが今作のテーマで、クラプトンの心身ともの充実ぶりが実感できる。「セイ・ホワット・ユー・ウィル」の新ヴァージョンも収録。
収録曲
01SO TIRED
「自分を描いた日記のようなもの」とクラプトン自身が語るこの曲は、愛する妻と子供たちに囲まれ幸せな毎日を送る彼の心情を素直に反映した、軽快なテンポのナンバー。終盤には愛娘の泣き声も聞くことができる。
02SAY WHAT YOU WILL
言うまでもなく、SMAPが取り上げたことで知られる作品。オリジナルは愛・地球博の公式アルバム『Love the Earth』に収録されていたが、ここでは新たにレゲエ調のアレンジが施されている。
03I'M GOING LEFT
一時期スティーヴィー・ワンダーの夫人だったことでも知られ、2004年に他界したシリータ・ライトの2nd『スティーヴィー・ワンダー・プレゼンツ・シリータ・ライト』(74年)に収録されていた曲。ソウルフルに盛り上がるナンバーだ。
04LOVE DON'T LOVE NOBODY
70年代屈指のR&Bヴォーカル・グループ、スピナーズが74年に発表した隠れた名曲をカヴァー。「真実の愛とは何か」に気がついた時の男の素直な心情をソウルフルに表現した素晴らしいバラードに仕上がっている。
05REVOLUTION
レゲエ・ビートによる力強いナンバー。ライフ・スタイルを大きく変えようとする男の決意表明を歌った内容で、まるでクラプトンが自分自身に向けて語りかけているようだ。抑制されたギター・ソロも渋く曲を盛りたてる。
06LOVE COMES TO EVERYONE
ジョージ・ハリスンの79年の名曲をカヴァー。オリジナルに忠実なアレンジによる、亡き親友に捧げられた素晴らしいヴァージョンである。間奏のシンセ・ソロは、なんとスティーヴ・ウィンウッドが担当している。
07LOST AND FOUND
クラプトン・バンドの一員でもある左利きのギタリスト、ドイル・ブラムホールIIが、バンドでのジャム・セッションをもとにまとめあげたナンバー。いかにもクラプトンらしいブルース・ロックが堪能できる1曲だ。
08PIECE OF MY HEART
クラプトン・バンドのギタリスト、ドイル・ブラムホールIIのデモ・テープの中からクラプトンがピック・アップしたナンバー。クラプトンらしい味付けで、ブルージィな世界を最上のポップ・ミュージックへと昇華させている。
09ONE DAY
コンテンポラリー・カントリー・シーンを代表するアーティストのひとり、ヴィンス・ギルのペンによるブルージィなミディアム・バラード。間奏およびエンディングで聴ける、熱のこもったクラプトンのギター・ソロが素晴らしい。
10ONE TRACK MIND
「残された時間はすべて君に捧げる」と歌われる、クラプトンから夫人に向けた究極のラブ・ソング。歌詞はもちろん、曲調なども含め、作品全体から幸せなオーラが溢れ出ている。聴いている側は思わず「御馳走さまっ!」って言っちゃいそう。
11RUN HOME TO ME
愛する家族と過ごす何気ない休日の平和なひとときを綴ったラブ・バラード。妻と子供を持つ父親なら思わず共感してしまうこと必至のナンバーといえるだろう。大きな愛を描いているだけに、曲調も壮大だ。
12BACK HOME
まるでサイモン&ガーファンクルのようなアコースティック・ギターの繊細なフレーズで幕をあけるこの曲は、幾多の苦難を乗り越えて、ようやく帰るべき家を見つけたクラプトンの心情が穏やかに綴られているナンバーだ。
13SAY WHAT YOU WILL
愛・地球博の公式アルバム『Love the Earth』に収録されていたオリジナル・ヴァージョン。日本のファンには、SMAPが取り上げた曲としておなじみだろう。ここでの“フレンド”とは、クラプトンの愛する夫人のこと。