ミニ・レビュー
2005年度の全英最大のヒット・アルバムに輝いたシンガー・ソングライター、ジェイムス・ブラントのデビュー作。心に染みる柔らかなメロディとジェントルなハスキー・ヴォイスが織りなす彼の歌世界は、優しさに満ちた秀逸なヒーリング・ミュージックだ。
ガイドコメント
イギリスの吟遊詩人/ストーリーテラーにして、稀代のメロディ・メイカー/シンガー・ソングライター、ジェイムス・ブラントの日本デビュー盤。このヴォーカルとメロディが、全ヨーロッパを魅了した。
収録曲
01HIGH
渋い擦れ声から一転、「I'm high」と美しいハイトーン・ヴォイスで歌われるサビが、一度聴いたら忘れられない程の衝撃を残す一曲。アルバム『バック・トゥ・ベッドラム』からのシングル・カット曲。
02YOU'RE BEAUTIFUL
ジェイムス・ブラントの名を世界中に広めた大ヒット曲。ドラマ『小早川伸木の恋』の挿入歌にも使用され、その美しくも悲しいメロディと歌声で視聴者の耳を惹きつけた。全英シングル・チャート6週連続1位も頷ける。
03WISE MEN
優しいメロディのなかに「攻め」を感じる一曲。彼の歌い方にも多少アグレッシヴな印象を受ける。音を過剰に付け加えず、本人の弾くクラシック・ギターとエレピの響きを大事にしている演奏も聴きどころ。
04GOODBYE MY LOVER
涙が浮かんでくるほど美しく悲しいメロディに、あまりに切なく、あまりに虚しい歌詞が合わさっている。曲のほぼ全体が本人によるピアノの弾き語りで占められており、そのシンプルさが悲愴感をいっそう際立たせている。
05TEARS AND RAIN
スロウなリズムと優しい旋律が心地良い一曲。メロディの起伏に合わせて、美しく上下するジェイムス・ブラントの声が光る。稀代の美少年の堕落と破滅を描いた「ドリアン・グレイの肖像」を、詞の題材にしている。
06OUT OF MY MIND
彼独特の美しいメロディを根底に残しながらも、曲や歌詞はどこかトリッキー。エレキ・ギターを掻き鳴らし、天使のような歌声で「僕は頭がおかしいんだから」と繰り返し歌うサビは、痛々しくも美しい。
07SO LONG JIMMY
ロックンロール色の強いアレンジが施された、故ジム・モリソンへのメッセージ・ソング。アウトロにドアーズの「ライダーズ・オン・ザ・ストーム」のオルガン・フレーズ加えて、ジムへのオマージュを表現している。
08BILLY
リズミカルでありながら哀愁が漂うメロディに、意味深な歌詞が魅力な一曲。夜を思わせるアーバンなアレンジと、ジェイムス・ブラントの擦れ声の組み合わせがセクシーだ。彼が弾くジャジィなピアノ・プレイにも注目。
09CRY
全体を通して優しく温かみのあるメロディが心地良い、「ユア・ビューティフル」を彷彿とさせるようなナンバー。イントロの淡々としたギター・リフと、サビの美しいコーラスが、シンプルながら耳に残る。
10NO BRAVERY
シンガーとして活動する以前に軍隊に所属していた彼が、派遣先のコソヴォで書き上げた曲。内戦で破壊し尽くされた世界を目の当たりにした衝撃を、歌詞に色濃く反映し、ほぼピアノの弾き語りで歌い上げている。
11YOU'RE BEAUTIFUL
バックがアコギのみ、とシンプルなだけに、彼の最大の魅力である歌声がさらに前面に押し出され、オリジナルとはまた違った魅力を放っている。名曲とは、余計な装飾を全て取り払っても名曲なのだと再認識させられる。
12NO BRAVERY
リズム隊やギター抜きの、声と鍵盤だけの弾き語りライヴ・ヴァージョン。内戦に身を置いた際に、彼自身が感じたことが込められているこの曲は、シンプルであればあるほど悲しみや虚しさがより生々しく伝わってくる。