ミニ・レビュー
デビュー25周年ベスト・アルバム。80年の懐かしいデビュー曲「バスルームから愛をこめて」や「赤道小町ドキッ」「ビタミン」ほか、レアな掘り出し曲まで全16曲をタップリと収録。パワーあふれる山下久美子のキュートな魅力がたっぷり。黄金のレーベルも豪華絢爛。
ガイドコメント
2005年のデビュー25周年を記念したべスト・アルバム。数多くのヒット・シングルを中心に、これまで市販されていない作品など貴重な音源も収録。入門者からマニアにまでおすすめできる。
収録曲
01バスルームから愛をこめて (2000version)
80年発表のデビュー・シングル曲。オールディーズ・テイストのロッカ・バラードで、せつない女心が歌われている。オリジナルは松任谷正隆のアレンジだったが、これは2000年にリリースされたセルフ・カヴァー・アルバムに収録された佐橋佳幸によるリアレンジ・ヴァージョンで、桑田佳祐がバック・ヴォーカルで参加している。
02赤道小町ドキッ (2000version)
82年にリリースされた、彼女の初ヒット・シングル曲。これも2000年のセルフ・カヴァー・アルバム『THE HEARTS』のヴァージョンで、作詞・松本隆、作曲・細野晴臣、編曲・高橋幸宏という豪華な布陣となっている。オリジナルは化粧品のCMソングで、ライヴではすでに超満員だった彼女のTVメディア進出となった曲。
03Tonight (星の降る夜に)
91年にリリースされたアルバム『Joy for U』に収録されていた曲で、シングルとしても発売になった。布袋寅泰が作曲、編曲だけでなく、コーラスにも参加している。ありがちなポップスのようでいて、かなり変則的なコード進行であり、一筋縄ではいかない曲。ギターのリフも印象に残る。
04いっぱいキスしよう
93年リリースのアルバム『CENTURY LOVERS』に収録されていた曲で、これもシングルとして発売になった。シンセサイザーが飛躍的に進歩した時代の雰囲気を反映して、スペイシーなバック・トラックとなっている。淡々としたメロディの中で、山下は情感のあるヴォーカルを聴かせている。
05宝石
94年リリースのアルバム『LOVE and HATE』に収録されていた曲で、これもシングルとして発売になった。アップ・ビートで力強い曲でありながら、どこか恋愛の不安を感じさせる雰囲気を持っているという、いかにも山下久美子らしい楽曲。布袋寅泰とのコンビネーションがうまく決まった曲だ。
06DRIVE ME CRAZY
「宝石」同様、アルバム『LOVE and HATE』に収録されていた曲。TVドラマ『東京大学物語』の主題歌にもなっていたので、近年の彼女の曲でもっとも一般的に知られている存在と言えるかも。ヴォーカリストとしての説得力も強く感じさせる曲で、ロックとポップスの融合という意味でも魅力的。彼女の金字塔のひとつ。
07Close your eyes
95年にシングルのみでリリースされたクリスマス・ソング。非常にしっとりとした大人のラヴ・ソングといったおもむきで、寒い冬の温かい心といったニュアンスを感じさせる。詞は彼女自身によるもので、曲は布袋寅泰、アレンジは布袋寅泰との共作が多いSIMON HALE。
08最後の初恋
96年リリースのシングル「TOKYO FANTASIA」のカップリング曲で、「TOKYO FANTASIA」ともども、作詞・湯川れい子、作曲・筒美京平という、彼女にとっては異色な作家陣による作品。とはいえ、歌謡曲テイストはそれほど濃くはなく、詞も曲もさすがプロフェッショナルと感じさせる個性的な作品となっている。
09SING A SONG
98年リリースのシングル「FOUR SEASONS」のカップリング曲で、これが布袋寅泰との最後のコラボレーションとなった(作詞、作曲、編曲すべて布袋)。最初は淡々と始まりながら、少しずつ壮大な響きを持つようになっていく構成が深く印象に残る感動的な雰囲気。
10KID
2001年にデビュー20周年企画としてリリースされた洋楽女性アーティストをカヴァーしたアルバム『SOULS』に収録されていた曲で、オリジナルはプリテンダーズ。ロック感あふれるオリジナルとはずいぶん違う、ボサ・ノヴァ・テイストのアレンジに、大人の女としての魅力を感じさせる。
11ビタミン
2002年に「恋が死ぬ」とダブルAサイド・シングルとしてリリースされた曲で、現時点での最新シングル。詞は松本隆、曲はキリンジの堀込泰行。プロデューサーには高野寛を迎えている。出産を経験し、母となってからのシングル第1弾で、それゆえの変化が感じられるかも。
12悲しみよこんにちは
よしもとばななの書き下ろし短編小説が封入された、2003年のアルバム『歌う女、歌わない女』に収録されていた一曲。作曲は、モーニング娘。関連で活躍している松原憲で、アレンジの島田昌典はSURF TRIPのキーボード奏者としてaikoのファンにはおなじみ。山下のファルセットが聴ける、珍しい楽曲。
13あの桜の木の下で永遠に
直木賞作家・篠田節子が“青春”をテーマに書き下ろした短編小説を封入した、2004年のアルバム『壁のない世界』に収録されていた曲。小説同様、曲も大人の視点からの青春を描いており、独特のせつなさに満ちている。この小説+CDのシリーズで、山下は次々に新しい歌い方を開拓しているようで、この曲でもそれを感じる。
14ちっぽけなすべて
小説家とのコラボレーション第3弾にして完結編となったアルバム『ちっぽけなすべて』(今回は唯川恵とのコラボ)のタイトル・ソング。単純ではないが普遍性のある感情を、大人ならではの表現力で歌っている。メロディやアレンジも同様に、個性的でありながら多くの人の心を捉えるような作りになっている。
15オーロラ
2002年に高島屋各店のみで発売されたチャリティ・キャンペーン・シングルで、当時中学生だったニューヨーク在住のアーティスト、Junichiがジャケットを手掛けたことも話題になった。彼女にとって2曲目のクリスマス・ソングだが、「Close Your Eyes」と決定的に違うのは子供に向けて歌われている点だろう。
16天使の唄
99年に公開された映画『きみのためにできること』(監督・篠原哲雄)の主題歌で、今まで彼女のオリジナル・アルバムには収録されていない楽曲。ベスト・アルバム『Best & Premium Songs』は代表曲を集めたというより、知られざる名曲を多めに収録したというニュアンスが感じられる。そのなかでも出色の作品。
仕様
CDエクストラ内容:「ちっぽけなすべて」 (PV)