ミニ・レビュー
同年代のファンから熱狂的な支持を得る“ティーンの代弁者”、加藤ミリヤ。独特の歌声とソングライティングで知られる彼女のサンプリング・ベスト盤がついに登場した。デビュー曲「夜空」から早くも4年。20歳を迎えた彼女の今後がさらに楽しみになる一作だ。
ガイドコメント
現役女子高生としてデビューした加藤ミリヤが、20歳を迎えてリリースするベスト・アルバム。さまざまな音楽との出会いをコンパイルした、成長し続ける彼女のサンプリング・ヒストリーとなっている。
収録曲
01恋シテル (Album Ver.)
“トゥルットゥットゥトゥールルル”の愛らしい惹句が耳を引く、シャニース「アイ・ラヴ・ユア・スマイル」を拝借。元来微笑ましい曲だが、“本気に好きになってもいいですか”と急速に恋へと発展する乙女心を描写した詞世界が絶妙なウキウキ感を作っている。
02このままずっと朝まで
タント・メトロ&デヴォンテ「エヴリワン・フォールズ・イン・ラヴ」を導入したミディアム・ポップ。夜が明けるまで一緒にいたいと願うガールズ・ソングで、ちょっと背伸びをしたラヴ・アフェアに憧れる浮かれた気持ちを等身大のヴォーカルで披露している。
03ディア ロンリーガール
松本隆&筒美京平コンビ制作の佐東由梨「ロンリーガール」を題材にした3作目。女性の名前を連呼するヴァースが斬新で、マーヴィン・ゲイ「セクシャル・ヒーリング」を背景にして、虚無感に暮れる心境を2000年代にティーンエイジを過ごす世代の視点で綴る。
0419 Memories
安室奈美恵の大ヒット「SWEET 19 BLUES」にインスパイアされたミディアム・スロー・バラード。2008年当時“19歳の今だから歌いたい”という強い願いから発表。大人にはなりたくないけど子供扱いしないでと、思春期独特の感情を歌っている。
05ジョウネツ
朝本浩文制作でヒットしたUAの「情熱」のコーラスを大胆に採り入れた4thシングル。題名をカナにしたように、2000年代のティーンエイジャーの視点での恋焦がれ募る想いを歌う。繊細なヴォーカルで心細さを表現しきったミリヤの成長がみてとれる曲。
06愛が消えた日
サンプリング・ベスト盤『BEST DESTINY』新録曲。哀愁漂うサックスのイントロ、レゲエ風の緩やかなバック・ビートやブリッジでのヴォーカル・エフェクトなど、巧みなアレンジが光る。まだ思い出にできない恋について歌ったミディアム・スロー。
07Better days-sweet love side-
童子-Tが加藤ミリヤと田中ロウマを迎えた「better days」のミリヤのソロ名義版。デュエット+ラップという掛け合い形式の原曲とは異なり、女性の視点から過去の素敵な恋愛の思い出を綴る。恋を通じて大人に成長した雰囲気が、歌唱にも感じられる。
08for so long
m-flo初期のメロウ・チューン「been so long」を借りたスロー・バラード。別れを迎えたくない物憂げな心境を綴った原曲とは意趣を返して、長い間待ち続けた人に出会えた喜びをしっとりと歌う。石成正人の過不足ないギター・アレンジが秀逸。
09So gooood
面倒なことは忘れて明日からまた頑張ろうというポジティヴなメッセージ・ソング。リップ・スライムの「One」を採り入れたトラックは3rd Productionsによるプロデュースで、清々しさと期待感をもたらす仕上がりとなっている。
10夜空
アナログ盤が瞬時に売り切れになったという、2004年発表の1stシングル。BUDDHA BRAND「人間発電所」をネタ使いしたトラックにハスキーなヴォーカルを乗せ、“期待する時代を描きたいの”と語った、衝撃的なデビューにふさわしい一曲。
11ONE DAY (夜空Remix) (加藤ミリヤ♥m-flo)
m-floとのコラボ曲「ONE DAY」に加藤ミリヤの1stシングル「夜空」を組み込んだリミックス・ヴァージョン。ミリヤの特色のひとつであるコンシャスなリリックは、「夜空」のフレーズと融合することでより伝播性の高いものとなった。
12for so long PART2
m-flo「been so long」をモチーフにした「for so long」の続編。詞はほぼ「for so long」と同様に大切な人と一緒にいられる喜びを歌うが、BPMを速めたことで若々しさとポップ感を増したアレンジとなっている。
13ミシェル (愛のテーマRemix)
大野雄二作曲、You&The Explosion Bandの「ルパン三世 愛のテーマ」を速めのテンポで敷いたアダルトな曲。フルートとホーンが織りなす扇動的なバックと、“君がいれば何も要らない”とはかない恋心を歌う哀切な歌唱のケミストリーが絶妙。
14FUTURECHECKA (feat.SIMON、COMA-CHI&TARO SOUL)
ZEEBRAらの「PARTEECHECKA」をモチーフにした曲。シーンを築いてきた先輩たちに敬意を表しながら、SIMON、COMA-CHI、TARO SOULを迎え、“未来ならうちらに託して”と時代を牽引する覚悟を歌ったパーティ・チューンだ。