ミニ・レビュー
新曲1曲を含む初のベスト・アルバム。徹底してポジティヴな開放感あふれるメロディとオルタナ的バンド・サウンドという基本形を軸に、ダンス・ビートや打ち込み、音響処理などを加味して進化してきた道程がよくわかる。2000年代国内ロックを総括するような一枚。
ガイドコメント
2012年1月18日リリースの初のベスト・アルバム。フル・アルバム6枚、ミニ・アルバム2枚から厳選した16曲にシングル「マーチングバンド」を加えた全17曲を収録。これまで発表してきた珠玉の“アジカン”サウンドとその変遷がたっぷりと味わえる。
収録曲
[Disc 1]
01遥か彼方
骨太なベースで幕を開ける1stミニ・アルバム『崩壊アンプリファー』収録のロック・ナンバー。荒削りなサウンドながら、バンドの持つ爆発力を詰め込んだような圧倒的な推進力が気持ちいい。後藤のがなるようなヴォーカルも心に刺さる。
02未来の破片
メジャー・デビューを果たしたアジカンが放った1stシングル。かき鳴らすギターのイントロから16ビートで疾走する前半や、サビでの絶妙な音の引き算、開放感のあるブリッジなど、ドラマティックなアレンジと表情豊かな後藤のヴォーカルが秀逸。
03アンダースタンド
1stフル・アルバム『君繋ファイブエム』収録のミディアム・ロック・チューン。比較的落ち着いたテンポながら、サウンドはゴリゴリ。オクターブ奏法でかき鳴らすギター・リフがメロディを引っ張り、力強く歌い上げる後藤のヴォーカルが映える。
04君という花
2003年発表の2ndシングルで、4つ打ちのバスドラムと裏打ちのハイハットでリズムを刻むダンスロック・ナンバー。無骨な雰囲気を醸し出すイントロから、まるで“君という花”が咲くかのように広がりを見せるサビへの展開がどこか温かみを感じさせる。
05リライト
人気アニメ『鋼の錬金術師』オープニング・テーマに起用された5thシングル。スッキリとした前半から“消して リライトして”と声の限りにシャウトするサビへの展開が印象的。声をループさせ一気に変貌するブリッジのアレンジもユニーク。
06君の街まで
色鮮やかなギターのアンサンブルがサウンドに心地よい広がりを持たせる6thシングル。ファルセット・ヴォイスを多用し、色彩感覚豊かな詞を歌い上げる。スペースシャワーTV主催のMVA2005でコンセプト賞を受賞したユニークなMVも楽しい。
07ループ&ループ
印象に残るリフをイントロから多用する4thシングル。いい感じで力の抜けたテンポ感と要所をキッチリと押さえるアレンジでシンプルながらも広がりのある世界を構築。言葉遊びを巧みに使いつつ“つまらないイメージを壊せ”と歌う。
08ブラックアウト
3rdフル・アルバム『ファンクラブ』収録のナンバー。絡み合うギターのフレーズを中心に、ビートを変化させて色合いを絶妙に加工、浮遊感を生み出すセンスの光る小技が楽しい。“冬の雪原に茹だる炎天下”など、独特な言い回しも健在。
09ブルートレイン
不協和音のようなイントロから、変拍子を駆使したアレンジに驚かされる7thシングル。トリッキーなリズムとサウンドを見事に飼いならしつつ、メロディはしっかりと聴かせる技量は見事。メロディ全編をとおして非常に手数の多い伊地知のドラミングも楽しい。
10或る街の群青
松本大洋のマンガを基にした映画『鉄コン筋クリート』主題歌として書き下ろされた9thシングル。映画の持つ独特な世界観を見事に投影。“ソコカラナニガミエル?”など、作品にも登場する言葉を散りばめた歌詞にもニヤリとさせられる。
11アフターダーク
テレビ東京系アニメ『BLEACH』第7期オープニング・テーマに起用の10thシングル。僕らはまだ何もしていないから、どこまででも進め! と力強く綴る。スピード感抜群のドラミングの上でギターがビートを刻むイントロがクール。
12転がる岩、君に朝が降る
11thシングルとして2008年に発表されたロック・チューン。俳優や映画スターにはなれないけれど、できれば世界を塗り変えたいんだと優しく、しかし凛とした態度で歌い上げる。鮮やかに広がるサウンドとともにじんわりと胸に染み込んでいく。
13ムスタング
浅野いにおの漫画『ソラニン』に触発されて書き上げられた2ndミニ・アルバム『未だ見ぬ明日に』収録のミディアム・テンポのロック・チューン。ブリッジでかき鳴らされるギターと泣き叫ぶような後藤のヴォーカルが心を打つ。
14藤沢ルーザー
カラッとしたサウンドとエネルギッシュなビートでグイグイと進む12thシングル。伸びやかなメロディ・ラインとエッジの効いたサウンドの対比をうまく聴かせながら全体をキャッチーなテイストで包み込む、アジカンならではの抜群のポップ・センスは見事。
15新世紀のラブソング
ラップ調の歌唱が特徴的な13thシングル。“あの日僕がセカンドフライを上手に捕ったとして”など、リアリティのある身近な歌詞から壮大な物語へと展開していく歌詞が秀逸。細やかなリズムを刻みながらも、スケールの大きいビートを感じさせる。
16ソラニン
浅野いにお原作の映画『ソラニン』メイン・テーマの14thシングル。作中で“種田”が作った歌詞を編集して使用している。ゆるい幸せがもたらす“悪い芽”をじゃがいもの芽に含まれる毒素“ソラニン”にたとえた疾走感のあるロック・ナンバーだ。
17マーチングバンド
ベネッセ「進研ゼミ高校講座」CMソングとして書き下ろされた16thシングル。タイトルよろしく“マーチング”のようなドラムが印象的なナンバー。断片的に情景を描く後藤らしい歌詞だが、背中を押してくれるような力強さを感じさせる。
[Disc 2]〈DVD〉〈Return To The Basics vol.1〉
01フラッシュバック
02未来の破片
03電波塔
04アンダースタンド
05夏の日、残像
06無限グライダー
07その訳を
08N.G.S
09自閉探索
10E
11君という花
12ノーネーム