ミニ・レビュー
98年に結成以来、インディーズで2枚、メジャーで6枚のアルバムを発表したバンドのこれまでの足跡を2枚に収めた集大成的ベスト盤。デビュー・シングルの「サニー」で重々しく始まり、浮遊感のある映画『アカルイミライ』の主題歌「未来」などラウドなサウンドの中に希望が見える。
ガイドコメント
バンド結成10周年を記念した自身初のベスト・アルバム。2007年までにメジャー・レーベルから発表された全シングル16曲、映画『魁!!男塾』の主題歌「刃」などを含む、大ヴォリュームの一枚だ。10年間の重みと濃密さが伝わってくる。
収録曲
[Disc 1]
01サニー
02涙がこぼれたら
03光の結晶
新たな音楽観が表われたミディアム・テンポのサマー・ソング。ドラムの松田が語った子供の頃の空想物語に、ギターの菅波が伴奏を付けているうちに完成した曲。アグレッシヴなギターと熱い青春の香に満ちた詞が、青臭くも新鮮に響いてくる。
04未来
“未来”をテーマにした、美しく甘い輝きを持つノスタルジック・ポップ。繊細なギターとシンプルなドラム、そしてどこか和の香りを漂わせるメロディが懐かしい。山田の飾り気のない素直なヴォーカルが、希望と絶望を伝えている。
05キズナソング
06幾千光年の孤独
07生命線
美しいアルペジオに彩られた、シリアスなロック・ナンバー。主人公の男が生きることに絶望し、線路に身を投げる。日常の最悪な状況は“変えていけるいつだって、ともに生きよう”と叫ぶ声に、切迫感を持つスリリングなギターが重なる。
08ひとり言
激しいシャウトを交えた歌唱と、一人ぼっちの男を描いたやさぐれた詞、そして粗い録音が独特の世界を作り出すギター・ロック。まったりとした暗い空気感が漂う演奏と狂気に満ちた夢にうなされる詞が、怪しく迫ってくる。
09美しい名前
10初めての呼吸で
“この曲を聴いた人の生活が、ちょっとでもイキイキとすればいい”というメンバーの心がこもったロック・ナンバー。穏やかな速度のビートとじわじわと高まっていく力強いヴォーカルに、新しい表現方法を見出している。
11カオスダイバー
12奇跡
[Disc 2]
01レクイエム
人間の感情や死といったドラマを描いた、エネルギッシュに燃え上がるロック・ナンバー。“戦闘シーンの激しいアクションが飛び交う中で流れてくる音楽”をイメージして作ったのだそう。人の強さと弱さを描いた詞が生々しい。
02コバルトブルー
03ブラックホールバースデイ
体の芯にまで響きわたるドラミングと轟音系の美メロが飛び交う、ドラマティックな疾走ロック・チューン。メンバーが全員で音を鳴らし、合わせながら完成させたという。“前に進むには、自分を信じるしかない”という思いを込めている。
04夏草の揺れる丘
05夢の花
06空、星、海の夜
07舞姫
08罠
09世界樹の下で
10風船
微かにイースタンの風味が漂う、美しく切ないギター・ロック。穏やかな歌声から徐々にシャウトを交えていくヴォーカルと叙情性を帯びたメロディが印象的。静と動の間を行き交うギターの演奏が、儚く危うい人の心を表わしているよう。
11冬のミルク
バンドとして初めて制作したという、思い入れの深いロック・ナンバー。初期のスタイルが生きている曲を今の形で録り直している。曲の持つシンプルな味わいと普遍的な切なさや温かさが、成長した演奏力によって、さらなる厚みを加えている。
12声
13刃
和太鼓や応援団のホイッスル、スタッフを巻き込んだコーラス、そして暴れまくるギターが痛快な和風ロック。日本男児の激情を表わすような熱い歌声と大和魂を吹き込んだ詞が潔い。聴き終わった後に、祭りの後のような不思議な陶酔が残る。