ガイドコメント
ジャンルを超えて数々の名曲を発表してきた、EGO-WRAPPIN'のベスト・アルバム。タイプ別に分けられた2枚組で、彼らの12年の軌跡が凝縮された豪華な一枚となっている。
収録曲
[Disc 1]〈ヤルキ盤〉
01サイコアナルシス
聴けば目の前を一瞬にしてにぎやかなキャバレーに変えてくれる、歌謡曲のムードが漂う、弾けたジャズ・ナンバー。ノスタルジックかつ勢いのあるメロディに、自然と体が揺れてしまうこと間違いなし。
02くちばしにチェリー
アップ・テンポのジャズ・グルーヴが曲の終わり近づいていくほどフィーバー。スリリングな展開に合わせ、飄々と、時に泥臭さも醸し出す歌唱力に脱帽。TVドラマ『濱マイク』の主題歌として起用され話題に。
03PARANOIA
精神病の一種で、体系だった妄想を抱くという“パラノイア”をテーマにした、センシティヴでどこか破滅的なヴォーカルが胸に突き刺さる一曲。トランペットの音色とジャジィなピアノ演奏が醸し出すアダルトなムードが魅力的だ。
04GO ACTION
ときに早口言葉のように無感情に、ときに宙を舞うように奔放に操られるヴォーカルが印象的な歌謡曲風のナンバー。緩急をつけた緊張感のある展開のなかで、ファニーな演奏を聴かせるトランペットに惹きつけられる。
05Sundance
ギターが心地良いリズムを刻む、ポップでキャッチーなナンバー。一語一語を丁寧に発声する、ソフトなヴォーカルが深い愛情を紡ぎ出すよう。シンプルなサウンドへ採り入れた動物の声を真似た効果音が、大自然の清々しさを運んでくる。
06WHOLE WORLD HAPPY
アルバム『Night Food』のほとんどは森雅樹が作曲しているが、本作のみ中納良恵が作曲を担当している。センスたっぷりのラグ・タイム・ピアノのようなアコースティックで温かみのあるサウンドで、グッド・タイム・ミュージックというにふさわしい雰囲気を持ったナンバーだ。
07Nervous Breakdown
スキャットをフィーチャーした英語詞の4ビート・ナンバー。ヴォーカルの中納良恵のハードな歌いっぷりは、パンクやハード・ロック・バンドのヴォーカリストに引けを取らないほど激しく熱い! ライヴならではの、英語詞の中にも日本語で観客を煽るのがおもしろい。
08BIG NOISE FROM WINNETKA〜黒アリのマーチングバンド
アルバム『Night Food』のオープニング・チューンは、タイトル通り“マーチング・バンド”っぽい雰囲気を持ったユニークなナンバー。ヴォーカルに入ってからの盛り上がりは、ライヴでの熱い演奏を想像させる。
09カサヴェテス
サックスが吹き荒れ、踊り出したくなるジャジィなナンバー。華麗なキレと存在感を放つ、楽器のように高質な歌声。曲中、突然訪れる静謐。アコーディオンを弾く場面では、クラシックなどの音楽に精通した教養の高さが見え隠れしている。
10Crazy Fruits
“今宵仲よくキッスをひとつ”など、愛にあふれた“二人”の関係を情緒豊かに描いたラウンジ・ミュージック調の一曲。流麗なピアノ演奏や繊細で華麗なドラミングに乗せた、透明感あふれるヴォーカルが艶やかさを演出している。
11マンホールシンドローム
浮遊感たっぷりの技巧的なヴォーカルに、表情豊かなギター、切れのあるドラム。グルーヴィ、メロウ、ミステリアス。変幻自在にリズムとムードを変えていく万華鏡的サウンドで、スキルの高さを証明した1曲。
12Mother Ship
疾走感あふれるロック・スウィングなキラー・チューン。ショー・タイムを予感させる華やかなサウンドに、中納良恵の歌声がショー・ガールのごとく鮮やかに踊る。軽快でありながら、グルーヴ感に満ちたビビッドな仕上がり。
[Disc 2]〈セツナ盤〉
01finger
アコースティック・ギターとヴォーカルのみによって奏でられる、ハートウォーミングなナンバー。“No Hello It's Good-bye”と別れのメッセージを綴る、中納良恵の透き通るように瑞々しい歌唱が感動を誘う。
02a love song
シンプルなタイトルにこそ重みが感じられる、全編英詞によるラヴ・バラード。艶やかなヴォーカルとアダルトな音色を聴かせるトランペットや落ち着いたムードを醸すパーカッションが、スウィートな空間を生み出している。
03あしながのサルヴァドール
ポエトリー・リーディングからスタートする、4ビートのミディアム・ナンバー。オブリガートで要所を締めるホーン・セクションは、オーサカ=モノレールの武嶋聡を中心としたセットで、ジェントリーな雰囲気を一段と醸し出している。
04かつて..。
J-POPシーンにジャズやブルースを定着させたアルバム『満ち汐のロマンス』のオープニング曲。終わった愛から進みだす女性の姿を、スウィングするリズム隊と跳ねるピアノに乗せて歌われる、ジャジィなナンバー。
05色彩のブルース
世の中にEGO-WRAPPIN'の名を知らしめた、平成ブルースの傑作。ひっそりした酒場が似合う、あやしげで色っぽさが匂い立つようなサックス・プレイや、力強くて悩ましげなヴォーカルが魅惑的。
06老いぼれ犬のセレナーデ
イントロのコントラバスは、mama!milkの清水恒輔によるもの。ゲスト・プレーヤーにもソロ・パートをフィーチャーさせてしまうところに、ユニットというより、コンボとしてのサウンド創りをしてきた意識が伝わってくる名バラード。
07A LIE
優しくメランコリックなサウンドに乗せて、女性の健気で儚い恋心が綴られていく全編英詞によるバラード・ナンバー。温かく包み込むようにも、冷たく突き放すようにも聴こえるハーモニカが絶妙なアクセントとなっている。
08官能漂流
ダークなギターのアルペジオが全編を彩る、シンプルで鬱蒼とした世界観が魅力のナンバー。昭和歌謡を思わせる官能と悲哀に満ちたヴォーカル・ワークが秀逸で、終盤に向かって次第に高ぶっていく感情の波が心を揺さぶる。
09BYRD
中納良恵による流麗なピアノの弾き語りに始まり、ゴージャスなバンド・サウンドへと転調していくラヴ・バラード。一途で哀しい女性の恋心を歌い上げた、エモーショナルなヴォーカルが胸に突き刺さる。
10マスターdog
緩やかなスウィングに乗って、彼らの日常を描いたスロー・ナンバー。夜中に小さな近所のレストランを訪れて、熱めのスープを頼む。そして「あなたを思うと眠れない」と静かに歌う。彼らには珍しい親密な雰囲気が漂ってくる。
11Calling me
センチメンタルな女性の恋心を歌ったジャジィなトラック。トランペットやピアノが繊細かつエレガントな空間を作り上げるなか、“私の名前を読んで 呼んでくれなかったら傷心してしまう”という切実な想いが綴られていく。
[Disc 3]〈DVD〉LIVE DVD SIDE「BOOT WRAPPIN'」