ミニ・レビュー
2002年のデビュー以来ヒット曲を数多く生み出してきた彼女の初のベスト盤。7枚のシングルのタイトル曲すべてとカップリング曲、アルバム収録曲から選曲した全16曲。武部聡志、井上陽水、小林武史と作曲家陣が豪華。本人の言霊が乗った歌詞も独特の個性を発揮している。★
ガイドコメント
2006年でデビュー5周年を迎える一青窈の、初となるベスト・アルバム。デビュー曲「もらい泣き」など、新旧のヒット曲を網羅。さらに、サマー・イベントで好評を博した新曲も収録する。
収録曲
01ハナミズキ
ピアノとストリングスの壮麗なサウンドで、彼女の歌の力が最大限に引き出されたバラード・ナンバー。“君と好きな人が 百年続きますように”という祈りがハナミズキの白い花のように清らかで美しい。
02翡翠
03もらい泣き
台湾人の父と日本人の母の間に生まれ、独特の言語感覚と強く柔らかい歌声が魅力の女性シンガー、一青窈のデビュー・シングル。サビ頭から“ええいああ”という歌詞が印象的。この1stでいきなり大ブレイク。
04一思案 (ひとしあん)
井上陽水が提供した、空で眠っているようなたゆたう空気感に満ちた音にのせ、詩を淡々と読み上げていく。メロディに乗って歌い出す瞬間の気持ちよさは神様からの贈り物のよう。
05月天心
月天心とは、泣くためにある満月の夜のことだという。思えば、彼女は自分が歌うのは泣くためだと言っていた。流麗な北京語で始まるドラマティックなこの曲は、自身のルーツというものが込められた作品でもあるのだろう。
06影踏み
2005年のJRAイメージ・ソング。振り返れば家族の愛に包まれていた……そんな当たり前のことを気付かせてくれる美しいスロー・バラードだ。父母をすでに亡くしている一青窈だけに、なおのこと切なくなってくる。
07うれしいこと。
自身出演のコンタクトレンズ洗浄液、ボシュロム「レニュー マルチプラス」CMタイアップ曲。「お願い聞いて」と始まるのは、愛されていることの幸せを確認するラブ・バラードだ。美しく響く鉄琴の音色と一青の素直な歌い方が、ムードを盛り上げる。
08江戸ポルカ
ポルカというボヘミアン・フォーク・ミュージックをベースにした、エロティックで騒がしく、心に速度を与える楽曲。サビ頭の“手々と、てとてとしゃん”という言葉が耳に残る。
09大家 (ダージャー)
「大家」とは、北京語で「みんな」「大きな家族」を意味する言葉。“失って、初めて 大事なものがわかっても、もとには戻れない”けれど、大丈夫と歌ってくれる家族のような優しさが心温めてくれるナンバー。
10さよならありがと
ミサワホームのCM曲。恋愛は無断に好きになることからはじまり、皮肉にも憎んで「ありがと」と別れを結ぶ。そんな恋の辛酸を、一青窈は和のテイストの言葉を選んで綴る。静かなメロディ・ラインは癒し度満点である。
11指切り
一歩踏み込んだ恋愛を歌う昭和歌謡テイストのラブ・ソング。Mr.Childrenのプロデュースなどで知られる小林武史が作曲・プロデュースということで、ロック色も強い。これまでとは異なる一青窈に出会える。
12アリガ十々
大ヒットした1stシングル「もらい泣き」、1stアルバム『月天心』にも収録された心温まる名曲。ヴォーカルを活かした音作りで、両親への愛や、自分を生んでくれた奇跡を感謝するメッセージが胸にじんわりと残る。
13かざぐるま
藤沢周平原作の映画『蝉しぐれ』のイメージ・ソングに起用された7thシングル。主人公と幼なじみが織りなす悲恋という映画そのままの純愛世界が、一青窈らしいアジアン・テイストのなかで切々と表現されていく。
14金魚すくい
「もらい泣き」のイメージのみを持つ人には、かなり驚きを与えるであろうR&Bテイストあふれる楽曲。小さな頃に感じたお祭りの夜の妖しい空気感、神社の持つ独特の怖さも感じる詞世界にも注目。
15あこるでぃおん (Long ver.)
切なく儚い学生時代の恋の想い出を歌ったノスタルジックなナンバー。ストリングスとピアノを中心とした繊細なサウンドと青くさい詞に、思わず胸がキュンとなる。シンプルなサウンドの中で、ウッド・ベースの存在感ある重厚な音色が印象的だ。
16てんとう虫
名プロデューサー小林武史が作曲を手掛けた、メロディアスでノスタルジックなミディアム・ナンバー。日常的な出来事を独特の感性で切り取る一青窈の詞の世界と小林のツボを押さえたメロディとが、見事にマッチしている。