ミニ・レビュー
“BENI”名義としては初となるフル・アルバム。時折挟み込まれる音楽的なキーワードと心象風景が一致する歌詞はもちろん、リリカルなバラード、アッパーなダンス・チューンといった音楽の手触りの中にも恋する女の子の喜怒哀楽が滲んでおり、アルバム全体で一編の恋愛小説を体現しているようだ。
ガイドコメント
同性からの支持も厚いBENIの、2009年9月リリースのアルバム。童子-Tの「もう一度…feat..BENI」のアンサー・ソング「もう二度と…」、花王「ビオレ ボディデリ」CMソング「Kiss Kiss Kiss」などを収録。
収録曲
01Bitter&Sweet Intro
アルバム『BITTER & SWEET』の冒頭を飾る、雷鳴と雨音から幕を開けるクラブ・エレクトロ調のミッド・スロー。スウィートなバック・コーラスのみによる1分強のイントロダクション・トラックだ。プロデュースは本作の多くを手掛ける今井大介。
02Kiss Kiss Kiss
2ndシングルのリミックス・ヴァージョン。特別な君とのキスを夢見る乙女心を描いたクラブ・ミッドが、パーカッシヴなビートが先導するライトなハウス・トラックに変貌。伝えきれない心苦しさが和らいで、ファッショナブルなラヴ・ソングとなった。
03ずっと二人で
カラフルでファンタジックな音像が特色のセツナ系ミッド。二人でいる奇跡を当たり前に思わずに、ずっとそばにいられるようにと願うホープフルな作詞曲には、BENI自身も参加。弦一徹チームによるストリングスが情感を高める4thシングル。
04恋焦がれて
ユニバーサル移籍第3弾シングル。恋する相手との伸縮する距離に一喜一憂する乙女心を綴った片想いソングで、留守電は消せずに聞き返すなど伝わらない気持ちを示す詞は共感度も高いはず。今井大介による切ない旋律が世界観と絶妙にリンクしたミッドR&Bだ。
05抱きしめて (feat.童子-T)
「もう一度」で好相性となった童子-Tを客演に迎えたミディアム・チューン。何もかも捨ててあなたとどこへでも……と歌うベッドメイキング・ソングで、迷いないBENIの歌唱に甘え加減でフロウで応える童子-Tが憎めない。制作は3rd Productions。
06Anything Goes!!
アグレッシヴなビートにうながされ、鼓動が高鳴る歌唱が展開するアッパー・エレクトロ。嫌なことを忘れるための“今日は何でもアリ!”というパーティ・チューンで、今井大介によるライアン・レズリー風のキラキラしたアレンジが気分をいっそうハイにさせる。
07stardust
2010年前後にシーンを席巻したエレクトロ・サウンドを機軸にした、スターゲイトあたりが得意とするコンテンポラリーなクラブ・アップ。ポコポコとした音とシンセ系のバックと同様、ゴージャスな世界観に添った弾けた歌唱を披露している。制作は今井大介。
08KIRA☆KIRA☆
タイトルよろしく、まばゆいアレンジが特色の5thシングル。今井大介による鍵盤が強調されたミディアムで、生まれて間もない恋のドキドキを“キラキラ”と描写。スウィートな感情をたたえた歌唱が、初々しさを見事に映し出している。
09GO ON
辛く悲しい経験も、すべては未来へとつながる……という、BENIからの心強いメッセージ・ソング。高みへ駆け上がるような“I'll Go On”のフレーズに、きっと立ち向かう勇気をもらえるはず。Shingo.Sによる爽やかなクラブ調ハウスだ。
10信じさせて
3rd Production制作のスロージャム風バラード。大切な人から裏切られた時に現れた、笑顔が素敵な君。弱り果てた心を癒して本当の愛を教えてという懇願を美しく映し出すラヴァーズ・ソウルだ。時折聴こえるワウの音がムード作りに一役買っている。
11nice&slow
スロージャム風のタイトルと主旋律だが、エレクトロ調アレンジによって、濃厚なソウルではなくコンテンポラリーなクラブ・ミッド・スローに。とはいえ、詞世界は感じるままに動いてというスロージャムの王道を受け継いだ“メイク・ラヴ”ソング。セクシーな歌唱も魅力だ。
12STAY
浮気な男に愛想を尽かした女性の心情を描いた、今井大介制作によるミッド・スロー。同じ過ちを冒す男に下されるのは、別れという結末。胸苦しく切ない感情が必要以上に重苦しく伝わらないよう、“エイ”の掛け声とエレクトロなアレンジのUS調R&Bに仕上げている。
13Beautiful World
エイコン風のアーシーなムードを下敷きにしたクラブ・ミッド。孤独な自分を救ってくれた人との出会いを、“恵みの雨”“私だけのBeautiful World”と表現、かけがえのない存在として描く。アフリカの大地と空を想起させる雄大なアレンジが秀逸。
14もう二度と…
BENI客演の童子-Tのシングル「もう一度」のアンサー・ソング。もう一度会いたいと願うも、結末は“もう二度と”戻れないという切ないものに。“おいていかないでよ”の孤独な声が胸に刺さる。弦一徹らのストリングス陣が、さらに哀惜を募らせる。
15Kiss Kiss Kiss (DJ HASEBE REMIX)
2ndシングルのリミックス・ヴァージョン。特別な君とのキスを夢見る乙女心を描いたクラブ・ミッドが、パーカッシヴなビートが先導するライトなハウス・トラックに変貌。伝えきれない心苦しさが和らいで、ファッショナブルなラヴ・ソングとなった。