ミニ・レビュー
4枚のシングル曲を収録した5枚目のアルバム。流行発信基地的な存在に恥じない、実験的要素と王道なポップさが共存した強力な作品。CDのみとCD+DVD(PV収録)が出たが、それとは別に武田真治らが出演のドラマDVDも付いている初回限定盤もある。★
ガイドコメント
倖田來未の5thアルバム。ヘヴィ・ロック調の「人魚姫」から純粋な恋愛ソング「恋のつぼみ」、映画主題歌となった「GO WAY!!」や「運命」など、話題曲が満載。トップ・アーティストに昇り詰めた貫禄すら感じられる1枚だ。
収録曲
01INTRODUCTION
アルバム『Black Cherry』のタイトルから連想されるような、艶めくブラックな雰囲気が漂うクラブ風のアレンジ。かわいいだけではない、力強い女性像を連想するイントロダクションとなっている。
02Get Up&Move!!
都会的でダンサブルなR&Bポップス。艶かしく衝動的な心情を歌う倖田のヴォーカルが、リビドーをかきたてる。「どうなったっていいじゃない」と誘うような歌声には、セクシーでデンジャラスなオーラが漂い、圧倒されてしまう。
03人魚姫
キュートなタイトルとは裏腹なハードなロック・ナンバー。「愛されたいのに結ばれないなら、人魚姫のように泡になった方がマシ」という、熱い思いを綴った切ないラブ・ソング。激しいヴォーカルが唸るようなギター・サウンドにマッチ。
04夢のうた
「ふたりで…」と同じメロディながら、異なる世界観を紡いだラブ・バラード。別れた人を思い、夢の中でもいいから会いたいと願ってしまう切ない気持ちを歌う。ストリングスの効いた編曲が広がりのあるサウンドを生み出している。
05月と太陽
ちょっと控えめな女性と太陽のように大らかな男性との関係を描いた等身大の恋愛が、抱きしめたくなるように愛らしい。温かなアコースティック・ギターのサウンドを中心にした、多くの人が共感するだろう、恋愛モード全開のR&B風ナンバーだ。
06Puppy
“Puppy”とは“子犬”という意味。男女関係を飼い主とペットの子犬の関係にたとえ、犬(女性)の目線から歌った独特のリリックは、「ご主人様」「お預けね」などの刺激的なフレーズが満載だ。小悪魔的に翻弄する魅力的な女性像は、倖田來未のイメージそのもの。
07恋のつぼみ
31stシングルは、フジテレビ系ドラマ『ブスの瞳に恋してる』の主題歌。関西弁で片思いのドキドキや好きな人への募る思いを歌ったラブ・ソング。テンポよく流れるストリングスの音色が、コロコロと変化する恋心を表わしているような心弾むナンバー。
08WON'T BE LONG (Black Cherry Version)
EXILEとコラボした、90年のバブルガム・ブラザーズの大ヒット曲のカヴァーを、歌詞の主語を「おまえ」から「あなた」に書きかえた倖田のソロ・ヴァージョン。ビートと低音を強調した、よりブラックでソウルフルな仕上がりとなっている。
09JUICY
倖田來未のコンテンポラリーな魅力が表現された、オリエンタルなアレンジに心奪われるR&Bチューン。。灼熱の太陽の下での汗ばむほどの熱い恋愛模様を描いた詞は、彼女独特の“エロかっこよさ”をしっかりと体現した悩ましげな一曲だ。
10Candle Light
無駄なものを削ぎ落としたような、ピアノ・オンリーの伴奏が哀しみを一層引き立てる、これぞ正統派のバラード。まるで嗚咽しているような吐息混じりのヴォーカルは、いつもの彼女とはひと味違う懸命さで、琴線が震えること間違いなし。
11Cherry Girl
超アップ・テンポでガンガンと盛り上げていく、勢いのある彼女にドンピシャリのナンバー。豪気な女性の愛らしさと艶っぽさを、濃い口テイストのロックで表現している。本人出演の東芝のソフトバンク向け携帯電話“811T”のCMタイアップ・ソング。
12I'll be there
夏のイメージ全開の爽やかなポップ・チューンだが、随所にR&Bテイストの要素をちりばめ、艶のあるヴォーカルでアダルトな彩りを演出しているのは、彼女ならでは。「そばで笑ってよ そばで笑いたい」という純粋な思いに、胸がキュンとさせられる。
13運命
映画『大奥』主題歌。細かいヴィブラートや歌い上げるファルセットなど、シンガーとしての聴かせどころが盛りだくさんの、ためを効かせてグッと込み上げるタイプのバラード。しっとりした演歌的情念を今風に表現して、映画の背景に沿った時代性をも捉えている。
14With your smile
R&BとJ-POPが絶妙なバランスでブレンドされた、アグレッシヴなダンス・チューン。夏らしい爽やかな開放感にあふれるサウンドにのせ、「君の笑顔がある限り頑張れる」という素直な気持ちを表現。聴けば聴くほどに元気になる、ビタミン・ソング。
15ミルクティー
倖田來未が作曲に初挑戦した、キュートでラヴリーなミドル・チューン。“幸せな日曜日の午後” をイメージしたという、陽だまりのような柔らかい曲調だ。甘過ぎない微糖のミルクティー……そんな表現が似合うアダルトなソウルフル・ヴォイスを聴かせてくれる。