ガイドコメント
通算7作目のアルバムで、60年代最高のロック・アルバムのひとつ。詩人とロックンローラーというボブ・ディランのふたつの個性が見事に融合し頂点を形成している。1966年作品。
収録曲
01RAINY DAY WOMEN 12 & 35
ニューオリンズのマーチング・バンドをイメージしたというそのサウンドは乱痴気パーティのように狂躁的。「誰もがストーンされるべきだ」という歌詞の内容からドラッグ・ソングだとも批判されたが、シングルは全米チャート2位のヒットを記録している。
02PLEDGING MY TIME
典型的なブルースのスタイルを踏襲しながら、ブルースを乗り超えようとする意志も感じさせるオリジナル・ブルース。全篇にわたって鳴り響くラウドなマウスハープが醒めた歌声と張り合っている。この時期のディランならではのバンド・サウンドも好サポート。
03VISIONS OF JOHANNA
ジョーン・バエズについて歌ったものだといわれている7分30秒のバラード。タメの効いたゆるやかなリズム・セクションをバックに、“歌う”というよりもむしろ“語る”に近いヴォーカルで長い歌詞を物語る。
04ONE OF US MUST KNOW (SOONER OR LATER)
『ブロンド・オン・ブロンド』では唯一のNY録音による曲。「ライク・ア・ローリング・ストーン」同様にアル・クーパーのオルガンをフィーチャーしたサウンドをバックに、魅力的なフックを持つメロディと明確な歌詞をディランが意図的に引き延ばすように歌ってみせる。
05I WANT YOU
ディランのレパートリーの中でも最もキャッチーなメロディを持った曲のひとつ。歌詞は幻想的で難解だが、ギャロッピング・ギターをフィーチャーした軽快なサウンドをバックにしたディランの歌声はとても明るい。シングルは全米チャート20位のヒットを記録。
06STUCK INSIDE OF MOBILE WITH THE MEMPHIS BLUES AGAIN
ディラン流ブルース・ロックの名曲。さまざまな人物が登場する超現実的な歌詞をトーキング・ブルース・スタイルで歌うディランが最高にイカしてる。アル・クーパーのオルガンも好演。名盤『ブロンド・オン・ブロンド』に収録された絶頂期の傑作。
07LEOPARD - SKIN PILL - BOX HAT
ミディアム・シャッフルのオリジナル・ブルース。皮肉っぽいニュアンスの嘲笑的なヴォーカルも魅力的だが、何よりもディラン自身が弾いているエキセントリックなリード・ギターが凄まじい。より過激にリメイクされた英国ツアーでのライヴ・ヴァージョンも圧巻。
08JUST LIKE A WOMAN
美しいメロディを滑らかに歌うディラン。ポップ・シンガーとしての彼の歌唱力を証明する1曲。当時の恋人イーディ・セジウィックについての唄だという説もある歌詞は辛辣なものだが、その辛辣さでさえも美しく感じさせる。全米チャート33位のヒットを記録。
09MOST LIKELY YOU GO YOUR WAY AND I'LL GO MINE
数あるディランのロック・ナンバーのなかでも指折りの名曲。メロディ、歌詞、ヴォーカル、力強いドラムのビートが一体化したサウンドが快調に疾走する。自信にあふれた力強い歌詞も秀逸。ザ・バンドとの共演による激烈なライヴ・ヴァージョンも圧巻。
10TEMPORARY LIKE ACHILLES
微熱があるかのようなダルいフィーリングが聴き手を包囲するブルージィなバラード。愛する女に拒絶されて戸惑う男が懸命に彼女を口説く歌だが、ディランの歌声は別にどちらでも構わないかのように飄々と響く。緩やかに流れる雲のようなサウンドも心地良い。
11ABSOLUTELY SWEET MARIE
ディランらしい閃きにあふれた比喩をちりばめた曲。場違いなまでにポップなサウンドをバックに、あくまでもマイペースで歌っているところが彼らしい。「法の外で生きるには……」という秀逸な一節を含む歌詞も良いが、やはり唯一無二の彼の歌声が1番の魅力。
124TH TIME AROUND
ビートルズの「ノルウェーの森」のアンサー・ソングだともいわれているワルツのバラード。アコギの美しいアルペジオをバックに、男女の関係を暗喩だらけの表現で歌っている。難解というよりも意味深な内容だ。
13OBVIOUSLY 5 BELIEVERS
アップ・テンポのシャッフル・ビートに乗って、ディランとバンドが快調に疾走してみせるシカゴ・スタイルのブルース曲。演奏の勢いだけなら名盤『ブロンド・オン・ブロンド』の中でもトップ・クラス。騒々しく泣き喚くマウスハープとリード・ギターが素晴らしい。
14SAD EYED LADY OF THE LOWLANDS
アナログ時代にはD面を占拠していた11分20秒のバラード。時代を軽やかに超越したディランの意味深長な歌声はいつ聴いても素晴らしい。巧みにコントロールされた“水銀サウンド”も古びることはない。歌詞の意味よりも言葉の響きを堪能したい名曲。