ミニ・レビュー
約4年ぶりの通算5作目。スヌープ・ドッグやアッシャー、ファーギー、ファレル、チャック・Dなど、超豪華なゲストを迎え、賑やかでポップなヒップホップを聴かせる。4年のブランクを埋めるのに十分な、エネルギッシュなパーティ・アルバムだ。
ガイドコメント
ヒップホップ・シーンのトップ・アーティスト、ネリーの約3年ぶり、5枚目となるアルバム。ファーギーをフィーチャーした「パーティー・ピープル」をはじめ、心の琴線を刺激するキャッチーにしてメロウな楽曲が満載されている。
収録曲
01U AIN'T HIM
扇動的なシンセ風サウンドがリードしていくミディアム・チューン。“ならず者”を思わせるくぐもったリック・ロスのラップ・パートをフィーチャーした、気鋭のウィッシュマスター制作曲。威嚇するようなファルセットのコーラスが印象的だ。
02HOLD UP
T.I.とLLクールJを客演に迎えた贅沢仕様のナンバー。アラビアン風味の漂うトラックの上で繰り広げられるのは、“オマエもビッグかもしれねぇが、まだまだオレにはかなわねぇ”という自慢話。プロデュースはフリー・エージェンツ。
03LA
中西部出身の男がLAへの愛を歌った、泥臭いギターを効かせたミッド・チューン。LAへ旅したネリーが、スヌープとネイトの両“ドッグ”のサポートを受けながら、地元の連中よりもLAらしく振る舞うという“ウェッサイ賛歌”だ。
04LONG NIGHT
アッシャーとの緩急の差を巧みにはめ込んだエネルギッシュなナンバー。ネリー、アッシャーと揃ってテーマが“長い夜”となれば、内容は明快なベッドタイム・ストーリー。口説き方は異なるが、どちらも熱い時間を確約するのに自信満々の口ぶりだ。
05LIE
潤いのあるキーボードが先導するメロディに食いついていくセント・ルナティックスの泥臭いフロウが特色のミッド・チューン。女のイライラに呆れた男という犬も食わない痴話ゲンカを、中毒性の高いフックで絶妙に料理したのはポロウ・ダ・ドン。
06PARTY PEOPLE
『ブラス・ナックルズ』のリード・シングル。「ロンドン・ブリッジ」コンビのファーギーを客演、ポロウ・ダ・ドンを制作に迎えた、サウス風味の文字どおりのパーティ・チューン。ショーン・ギャレットの共同参加で、よりハイエナジーな作りになっている。
07SELF - ESTEEM
“自分を信じれば必ず成功するはずだ”というポジティヴなメッセージを、パブリック・エネミーのチャック・Dと客演したコンシャス・ラップ。パーカッションとギターを軸としたファンキーな音の波に後押しされた意志の強い主張に、勇気がみなぎってくる。
08BODY ON ME
エイコン制作によるソウルフルなスムースR&B。アシャンティ『デクラレイション』収録曲とは別構成となる前述2人を従えてのネリー・ヴァージョン。トラックやアシャンティのコーラスはなめらかだが、詞の内容は互いに“欲しがってる”という濃厚なもの。
09STEPPED ON MY J'Z
ジャーメイン・デュプリとシアラを迎えたバウンス・アップ。新品のエア・ジョーダンを踏まれてオカンムリとなったジャーメインの話をリリックのアイディアにし、サウス風がプンプンするトラックの上でコミカルに描き出している。
10LET IT GO LIL' MAMA
ネプチューンズ制作のファットなボトムが特色のミッド・チューン。抑揚がそれほどない平坦なトラックだが、ファレルを迎えてホットに主張するのは“彼女がオレのモノを欲しがるのは、オレ様がリッチだからさ”という下ネタだ。
11ONE AND ONLY
静かな海をたゆたうようなシンセと美しいメロディが出色なミッド・スロー。トラックに比例するように“キミだけのオンリー・ワンになりたい”とファルセットを駆使して歌うネリーだが、ベタなモードに耐え切れずに終盤ではラップを披露。
12CHILL
ネリーと盟友のセント・ルナティックスのメンバーが強面マイク・リレーで綴るウィッシュマスター制作曲。タイトルこそ「チル」だが、緊張感漂うトラック上で“オレ様にはついてこれねぇぜ”と中西部訛りでカマす、自画自賛威圧ナンバーだ。
13WHO F***S WIT ME
軽快なアコギのリードで展開するBOOM-BATT制作のスパニッシュ風ミッド。ジャスティン・ティンバーレイク「マイ・ラヴ」を想わせる哀愁漂う旋律と客演のエイヴリー・ストームの相性も良し。“金で利息を儲ける俺に文句あるのか?”と挑発する内容だ。
14UCUD GEDIT
アルバム『ブラス・ナックルズ』本編を締めくくる、グッチ・メインとR・ケリーをフィーチャーしたポロウ・ダ・ドン制作曲。不穏な雰囲気を醸し出すボトムと妖しい女性コーラスといったダーティな匂いがプンプンするナンバーだ。
15BAY
中西部セントルイス出身のネリーがドゥループ・E(E-40の息子)を制作に迎えてベイ・エリアへの愛を示したハイエナジーなヒップホップ・チューン。“ベイ、ベイ……”“ダム、ダム……”と連呼する中毒性あるフックが病みつきになる。
16WADSYANAME
同時発表し大ヒットした前作から4年を経た“ネリー第2章”といえるアルバム『ブラス・ナックルズ』のセットアップ・シングル。K-Ci&JoJo「オール・マイ・ライフ」を敷いた、ネフ・U制作の美メロ・ミッド・スウィングだ。