ミニ・レビュー
ダンス・ロック・シーンの中核を担うBACK DROP BOMBの、約3年ぶりとなるサード・アルバム。ジャンル分け御法度のハイパーソニック・ロック・チューンが満載だ。唯一無二で革命的なそのサウンドが、秒速で身体中に浸透したら準備OK。あとは踊り狂うだけ。
ガイドコメント
『NIPSONG』から3年ぶりとなる3rdアルバム。ロックやパンク、ヘヴィ・ミュージックなど、さまざまな音楽要素を巧みにミックスし、それを昇華したハイブリッド・サウンドと、日本語リリックが心地良い。
収録曲
01INTRO
3rdアルバム『breakdawn』のオープニング・ナンバー。勢いよく鳴らされるドラム、威風堂々としたシンセサイザーの音、ぶっきらぼうに放たれるヴォーカル。それらがぶつかり合い交じり合う迫力は、そのずば抜けた音楽センスを見せ付けるのに十分だ。
02アティピカル
不穏な空気を作り出す歪んだギターと分厚いベースが、強烈なインパクトを与えるロック・ナンバー。効果的にメリハリをつけた演奏も巧みで、聴くものにまるで油断を許さない。ツイン・ヴォーカルの掛け合いやせめぎ合いが、これまたパワフルだ。
03LIKE 8 BEAT
ハード・ロッキンなギター・サウンドが吹き荒れる中、ツイン・ヴォーカルによる絶妙な駆け引きが繰り広げられる。呪文のように無表情に繰り返される歌声と焦燥感にかき立てられたように疾走する歌声。それらが作り出す混沌とした展開が刺激的。
04BOOGIE AND SWERVE
気まぐれに動きを変える電磁波のようなシンセサイザーがグイグイ引っ張る前半部から、アップ・テンポなロック・ソングが展開される後半部へ。予測不可能な曲展開を、違和感なく進めてしまう彼らの演奏の巧さとアレンジの良さが光るナンバー。
05THE MAZE
スカを思わせるペケペケと鳴る高音のギター。その音に合わさる早口ラップ。可笑しさも少し感じる曲だが、後半のヴォーカルがラップから歌に変わると曲にも浮遊感が出てきて、自然と身を委ねたくなるような雰囲気を醸し出すナンバー。
06OH、OH
シンプルに構成されたギター・リフとリズム隊をバックに、まるでお経を唱えているかのようなユニークなヴォーカルが印象的なナンバー。ユーモアとシリアスが混在したツイン・ヴォーカルの掛け合いは、歌というよりも劇を見ているようなリアリティを与えている。
07IN ORDER TO FIND THE NEW SENSE
イントロのギターとドラムが、カオスのような世界観を作り出しているロック・ナンバー。ノイズとアコースティック・ギターが絡むところは、聴く者が浮遊させられるような感覚にとらわれる。エンディングの繰返し音が機械の故障かと思えて、気になったまま終わってしまい耳に残る。
08HIGH TIMES
サウンドはロック・ナンバーそのものだが、ヴォーカルが実にユニーク。ラップというより、まるで暗号を朗読しているかのようだ。中盤の間奏は、かすかだが、70年代ジャズ・ロックのテイストも感じられる。このバンドの懐の深さは尋常ではないと思わせる楽曲だ。
09スリル
「高速で絶えず変化する」の歌詞のごとく、まるで気分次第で自由に変化する曲展開は、彼らの心(精神)とリンクしているかのように豊かな感情表現を演出。「宇宙のような映像だ」の歌詞のように、空間を広げていくシンセサイザーの効果にも注目だ。
10TWISTED
風と電話のSEに導かれて始まるこの曲は、途中でギターがヘヴィにはなるが、曲調は完全にニューウェイブ・スタイルのナンバー。ラストのドラムが途切れる箇所などもニューウェイブ期に多用されたダブの手法を使って、そのスタイルを貫いている。
11graySONGzone
いくつもの空間をつなぎ合わせていくような壮大な世界を構築するシンセサイザー、それに対抗するがごとく猛烈に疾走し破壊し続けるギター。そこから生まれるエネルギーはまさにバンドのダイナミズムだ。“こんな音楽が作りたい”と歌った詞も面白い。
12AMPLITUDE
ほぼ全編に細かく張り巡らされた器用なギターが印象的。曲を引っ張り、時にヴォーカル以上に感情表現をなすそのプレイは、それだけを聴いても飽きないほどの仕上がり。影で支えるベース・ラインの充実ぶりも聴き逃すなかれ。
13OUTRO
UKロック風のドリーミーで晴れやかなシンセサイザーに絡みつくのは、憂いをはらんだギターのメロディ。3rdアルバム『breakdawn』のラストは、静かな曲調の中に混沌を描き出すインスト・ナンバー。あっさりとした終わり方が、逆に不気味だ。