ガイドコメント
名作『ペット・サウンズ』に続く新作として発表されるはずだった幻の作品『スマイル』を、37年の歳月を経てブライアン・ウィルソン自らが新たにレコーディング。ロック史上最大の神話が明らかになる。
収録曲
01OUR PRAYER/GEE
ビーチ・ボーイズ1967年の未完成アルバムを37年ぶりにブライアン自ら甦らせた、2004年リリースの『スマイル』新録音盤のリード曲。美しいア・カペラではじまり、後半の「ジー」は山下達郎もカヴァーしたザ・クロウズのヒット曲。
02HEROES AND VILLAINS
ビーチ・ボーイズとしても発表された名曲。ネイティヴ・アメリカンとアメリカを植民地支配したスペイン人の間で生まれた娘の悲劇を描いた作品。複雑に入り組んだコーラスやさまざまな楽器が目まぐるしく交錯する組曲風の楽曲。
03ROLL PLYMOUTH ROCK
1620年ピューリタンを乗せたメイフラワー号が米国マサチューセッツ・プリマス到着時、最初に踏んだという岩を題材にアメリカの開拓史を皮肉った曲。ハープシコードの澄んだ音や達者なコーラスが摩訶不思議なサウンドを作っている。
04BARNYARD
アメリカ開拓時代にできた農場にある納屋の前庭の様子を描いた作品で、アルバム『スマイル』の中で最も短いナンバー。鶏や羊などの動物の鳴き声を真似たヴォイスも入っていて、牧歌的な雰囲気につつまれている。
05OLD MASTER PAINTER/YOU ARE MY SUNSHINE
チェロの前奏で始まる前半はインストで、後半は歌入りのメドレー形式の短い楽曲。2曲ともブライアンのオリジナルではなくアメリカン・ポピュラー・ソングのカヴァーで、郷愁感たっぷりのヴォーカルが切なく響く。
06CABIN ESSENCE
ビーチ・ボーイズとして発表された曲で、起伏に富んだダイナミックな演奏が展開される雄大な自然が続くアメリカの大地に鉄道が敷かれた様子や西欧文明の入り込んだ清濁を描いたナンバー。アルバム『スマイル』冒頭からこの曲までが第1楽章という構成。
07WONDERFUL
アルバム『スマイル』の第2楽章を構成する最初の曲。アコースティック楽器の響きにのせて、自由を保ち続けていくことを歌った美しいメロディ・ラインが印象的だ。
08SONG FOR CHILDREN
『スマイル』収録の前曲「ワンダフル」から続くメドレーで、静かな雰囲気から一転、軽快なビートに乗って「グッド・バイブレーション」に似たメロディも飛び出してくる。バンド演奏に加え管弦も加わる、シンフォニーのような美しい響きのナンバー。
09CHILD IS FATHER OF THE MAN
アルバム『スマイル』の前曲「ソング・フォー・チルドレン」から続く、緩急自在に満ちた曲。メロディや歌詞も一部転用されていて、「子どもは人の父」転じて“三つ子の魂百まで”をテーマにしたナンバー。
10SURF'S UP
ビーチー・ボーイズとしても発表されたナンバー。ブライアンとヴァン・ダイク・パークスの共作の中でもひと際美しい傑作。ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」と同じような、死や渾沌、緊張感を感じさせる心情が清澄に響く。
11I'M IN GREAT SHAPE/I WANNA BE AROUND/WORKSHOP
アルバム『スマイル』の第3楽章のスタートとなるメドレー・ナンバー。ノスタルジックなサウンドから始まり、中間にはジョニー・マーサー作によるトニー・ベネットのヒット曲のカヴァーを配し、後半にはカナヅチやノコギリのSEが鳴り響く構成となっている。
12VEGA-TABLES
“野菜たちに囲まれて、たくさん食べるんだ”と、野菜をテーマにしたカントリー・タッチのナンバー。ホンキー・トンク調のピアノやドゥー・ワップ調のコーラス、野菜をかじる効果音など、楽しい雰囲気いっぱいのサウンドがおもしろい。
13ON A HOLIDAY
サーカスの楽団のようなにぎやかで陽気なサウンドは楽しく、終盤のノスタルジックなコーラスは美しい。歌詞には「ロール・プリマス・ロック」の一部が流用されたり、休日に歌を口ずさむ海賊やハワイのワイキキが登場する。
14WIND CHIMES
マリンバとベースが醸し出すエキゾティックでシンプルな演奏をバックに、ブライアンの穏やかな歌声が響く。曲の後半は力強いドラムやキーボード、コーラスも加わり、ダイナミックな音のアンサンブルを聴かせてくれる。
15MRS.O'LEARY'S COW
1871年のシカゴの大火の原因となったといわれる、オレアリー夫人の飼っていた牛をテーマにしたインスト・ナンバー。映像が目に浮かびそうな、火事につつまれた街の混乱する様子をダイナミックかつ的確な演奏で表現している。
16IN BLUE HAWAII
アメリカ史をパノラマ的に描いたアルバム『スマイル』の終盤曲で、アメリカ50番目の州ハワイをテーマにした歌。呪術的なコーラスから始まり、徐々に明るい曲調へと変化。鮮やかなストリングスとコーラスで締めくくった甘美なナンバー。
17GOOD VIBRATIONS
『スマイル』のラストを飾るのはビーチ・ボーイズの代表曲で、ロック史に永遠に刻まれる名曲のセルフ・カヴァー。多彩な楽器と洗練されたコーラス、さまざまな音が駆けめぐる編曲で、めくるめくような高揚感を伝えるポップ・ナンバーだ。
18HEROES AND VILLAINS
19CABIN ESSENCE