ミニ・レビュー
ザ・ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトがブレンダン・ベンソンらと結成したニュー・バンドのデビュー作。レッド・ツェッペリンからの影響が色濃いレトロ・モダンでスタイリッシュなサウンドは、ハードさとサイケな味付けのバランスも絶妙だ。
ガイドコメント
オルタナティヴ・シーンで活躍し頂点を極めたジャック・ホワイトが、友人とともに結成したバンドの1stアルバム。互いの個性がぶつかり合いながらもメロディアスなサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01STEADY, AS SHE GOES
ラカンターズ結成のきっかけとなった曲。ジャック・ホワイトの持つブルースとブレンダン・ベンソンのポップなサウンドが猛烈な速度で転がっていく。ホワイト・ストライプス・ミーツ・ニルヴァーナとも言えるダイナミックさ。
02HANDS
荒々しくも美しいフィードバック・ノイズを奏でるギターとビートルズチックなコーラス・ワークが絶妙な一曲。ひねくれていながらもど真ん中にポップなメロディが高い中毒性を放ち、聴くものを病みつきにさせる。
03BROKEN BOY SOLDIER
火花の散るようなドラミングに悲壮なストリングスが絡み、何とも言えないダーク・サイドな音を現出させているが、音の向かう方向はより前向きな印象。ラカンターズの引き起こすロックンロールの源流的なイメージ。
04INTIMATE SECRETARY
ピコピコ・サウンドとフォーキーなメロディが理想的に融合した、ブレンダン・ベンソンの真骨頂的な激ポップ・ソング。甘く口当たりの良いサウンドの中に、ほんのちょっとの毒が絶妙なスパイスとして効いている。
05TOGETHER
カントリー風味のフォークで聴かせるメロウ・チューン。牧歌的で郷愁的なメロディが、乾いた風のように吹き抜けては胸に切なさを残して消えていく。ブレンダンとジャックの歌心が前面に押し出された一曲だ。
06LEVEL
ゴリゴリしたギター・サウンドが、ザクザクと掘り進む耕運機のごとく前進するブルージィなロックンロール。2分ちょっとと非常に短い曲だが、ダイナミックなサウンドがリスナーに与えるインパクトは大。
07STORE BOUGHT BONES
フリーキーなギターをはじめとして、奇天烈サウンドの炎上したかのようなセッションが引き起こす奇妙な音世界。にも関わらず、ポップ・ソングとして成立させてしまうのは、偏屈な変人が集まるこのバンドだからなせる技か。
08YELLOW SUN
おそらく一発録りであろう、メンバーのセッションをそのまま録音したデモ音源チックな一曲。荒いながらも、その場の熱が真空パックされて運ばれてきたような生々しさがあり、目の前で演奏をしてくれているような気分に浸れる。
09CALL IT A DAY
ルーズなリズムに乗せてフォーキーなフレーズを延々と反復させるミニマルな一曲。何かが起こりそうで、何も起こらない構成がなんとももどかしいが、肩の力の抜けたメロディと美しいコーラスが心を和ませてくれる。
10BLUE VEINS
ジャック・ホワイトのブルース魂がこれでもかと炸裂している特濃ブルース。淡々と綴られるメロディと時には絞り出すように、時には叫ぶように歌うジャックの歌声が味わい深い。彼のシンガーとしての醍醐味が存分に味わえる。
11THE BANE RENDITION
メンバーのセッションのみのインスト曲。ルーズなドラムとブルージィなギターがせめぎあって火花を散らし、臨界点を迎えて爆発し、またせめぎあうという繰り返しだが、かなりの凄みに圧倒されることは間違いない。
仕様
エンハンストCD内容:ジム・ジャームッシュ監督によるヴィデオ「ステディ、アズ・シー・ゴーズ」