ミニ・レビュー
デビュー25周年を記念した、88年から98年までのシングルを網羅した2枚組ベスト。デジタル・サウンドを基調にしたデビュー当初の音楽性から、徐々にハード・ロック色を強め、卓越した演奏技術と際立った歌詞のセンスを含めて独自のスタイルを確立していく過程がリアルに追体験できる。
ガイドコメント
2013年9月にデビュー25周年を迎えるB'zのシングル完全収録のベスト・アルバム。本作は88年のデビューから98年までのシングル26曲と、今回書き下ろされた「HEAT」「核心」を追加収録。ミリオンヒットの名曲が揃い踏みだ。
収録曲
[Disc 1]
01だからその手を離して
88年9月リリースの1stシングル。シンセサイザーをフィーチャーしたライトな4つ打ちのダンサブルなロック・チューン。特定の相手を全力で拒否している歌詞は謎めいていて、稲葉のヴォーカルは若さが感じられる。
02君の中で踊りたい
89年5月リリースの2ndシングル。緊張感と疾走感あふれるバンド・サウンドに乗せたエネルギッシュなハーモニーが美しい。エモーショナルなギター・ソロから激しいラップ・パートへの流れがとにかくエキサイティングだ。
03LADY-GO-ROUND
“こしひかるべき”“わがなみだかな”など、古語を取り入れた90年2月リリースのシングル。オリエンタルなフレイヴァをちりばめたバンド・サウンドとキャッチーなメロディのロック・チューンに仕上がっている。
04BE THERE
90年5月リリースの4thシングル。マイナー・コードのミディアム・テンポのサウンドは、アーバンかつちょっぴり哀愁が漂う。英語を織り交ぜながら、移り変わる時のさみしさや悲しさを綴ったロック・チューンに仕上がっている。
05太陽のKomachi Angel
ラテン・パーカッションとシンセ・ベース、スパニッシュ・テイストのギター・フレーズがインパクト大の90年6月リリースの5thシングルにして初期の大ヒット曲。グルーヴィなダンス・ロックに乗せて、恋の胸騒ぎを歌っている。
06Easy Come、Easy Go!
90年10月リリースの6thシングル。それまでのシングルとは一線を画す、はっきりとしたポジティヴなメッセージ性のある歌詞が、明るいトーンのメロディとよくマッチしている。“ナナナナナ”というコーラスが軽快で楽しい。
07愛しい人よGood Night...
シングルとしては初のバラードとなった、90年10月リリースの7thシングル。センチメンタルなピアノとヴォーカルの旋律をエモーショナルになぞるノイジーなギターの音色が肝の、真摯なラヴ・ソングに仕上がっている。
08LADY NAVIGATION
トリッキーなイントロに惹きつけられる91年リリースの8thシングル。キレの良いリズミカルなリフに心が弾む。間奏のギター・ソロも流麗なフレーズからディストーション・サウンドまでたっぷりと聴かせる。
09ALONE
91年10月リリースの9枚目のシングル。心象風景と情景描写がみごとに溶け合った歌詞とゆったりとしたテンポのドラマティックなサウンド・メイク、エモーショナルなギターの音色が壮大な音世界を築いている。
10BLOWIN'
92年5月リリースの10thシングル。カウベルの跳ねるような軽やかなリズムでスタートする軽快なロック・チューン。英語を多く織り交ぜた歌詞を紡ぐグルーヴィな歌唱がクセになる。ドラマティックな展開とキャッチーなメロディも◎。
11ZERO
92年10月リリースの11枚目のシングル。本質であるハード・ロックが全面に表われたサウンドでありながら、メロディ、歌詞ともにキャッチー。ハイテンションでノイジー極まりないギター・ソロ、畳み掛けるようなラップにシビれること必至。
12愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない
ストリングスが奏でるもの哀しげなイントロから一転、鋭利なギターが斬り込んでくる大ヒット・ロック・チューン。曲名をシャウトするサビはドラマティック度120%だ。93年3月リリースの12thシングル。
13裸足の女神
93年6月リリースの13thシングル。すべてを優しく包み込むようなおおらかなメロディが心地よい、癒しのロック・チューン。ラストの“ナナナナ”のコーラスがピースフルな、傷ついた人全員に捧げるメッセージ・ソングだ。
14Don't Leave Me
94年2月リリースの14thシングル。アッパーなホーンの音色とどうにかなっちゃいそうな稲葉のシャウトに震える、ブルーズ・テイストが色濃いレイドバック気味のミディアム・チューンに仕上がっている。
[Disc 2]
01MOTEL
アコースティック・ギターでつま弾かれるカントリー・テイストのイントロが印象的な、94年11月リリースの15thシングル。映画のようなストーリー性のある歌詞と、ラストの幾重にも重なるコーラスがロマンティック。
02ねがい
不協和音を奏でるピアノでスタートする95年5月リリースの16枚目のシングル。“〈いつのまにか〉じゃない 自分で選んで歩いてきたこの迷路”などハッとさせられる歌詞をいくつもちりばめた、現代社会で戦う大人のロック・チューンだ。
03love me、I love you
95年7月リリースの17thシングル。軽快な語り口ながら思わずわが身を振り返りたくなる教訓のような言葉を綴った歌詞に、明るいロック・サウンドをぶつけたユーモラスなナンバー。この絶妙なバランス感覚が心地よい。
04LOVE PHANTOM
切なさを湛えたストリングスと美しいハープの音色が織りなすイントロからしてドラマティックな、95年10月リリースの18枚目のシングル。疾走感あふれるメロディと畳み掛けるようなラップ、エモーショナルかつノイジーなギターが絶妙にマッチしている。
05ミエナイチカラ〜INVISIBLE ONE〜
96年3月リリースの19thシングル。切なくもポジティヴなメッセージを含んだ歌詞が楽曲全体に明るさをもたらす、ゆったりとしたミディアム・ナンバー。聴いていると文字通りどこからか力がわいてくる気がすること必至。
06MOVE
「ミエナイチカラ〜INVISIBLE ONE〜」と両A面となった、96年3月リリースの19thシングル曲。エンジン音のごときディストーション・ギター、骨太なベース・ライン、歯切れのいいヴォーカルがうねる、疾走感に満ちたロック・チューンだ。
07Real Thing Shakes
全編英語詞の96年5月リリースの20thシングル。鋭利で重厚なリフと強靭なリズム・セクションに呼応するかのように、稲葉のシャウト混じりのハイトーン・ヴォイスが暴れるハードなロック・チューンに仕上がっている。
08FIREBALL
“No synthesizer & No computer used”と銘打たれていたことも話題となった、97年3月リリースの21stシングル。ラップと歌の間のような言葉の紡ぎ方が稲葉の新境地となった、情熱的なロック・チューンだ。
09Calling
サビが2種類存在する変則的な構成のロッカ・バラードにして、97年7月リリースの22枚目のシングル。イントロとサビ以外はピアノと歌を基調としたシンプルな構成となっている。ストリングスの音色が華を添えている。
10Liar!Liar!
97年10月リリースの23枚目のシングル。挑戦的な歌詞が痛快で、それに呼応するかのようにハイテンションな稲葉のヴォーカルもエモーショナルなギター・ソロも疾走感に満ちている。ぶっきらぼうな歌詞がユーモラス。
11さまよえる蒼い弾丸
ガムラン・テイストを取り入れ、新境地のサウンドを開拓した98年4月リリースの24thシングル。生き急ぐ現代人を投影したかのような疾走感あふれる歌詞&サウンドがとにかく前のめり。ノイジーなギター・ソロもハイテンポで煽ってくる。
12HOME
ブルージィなテイストが香る、98年7月リリースの25thシングル。逆説的な投げかけで聴き手を問う歌詞に背筋が引き締まり、大らかで牧歌的なサウンドに真摯な気持ちにもさせられる。メッセージ性の強い壮大なロック・チューンだ。
13HEAT
2012年7月にキム・ヒョンジュンに提供した楽曲のセルフ・カヴァー。青空のように澄んだメロディにエモーショナルなバンド・サウンドを乗せた、爽快なロック・チューンに仕上がっている。希望を見出す歌詞が心に響く。
14核心
日本テレビ系水曜ドラマ『雲の階段』主題歌に起用された、2013年制作作品。ドラマの内容とリンクさせたかのような、あくまでクールに見せながら、内側に情熱を持っている人物の複雑な心境を描いた物語性のあるロック・チューンだ。