ミニ・レビュー
失礼ながらベスト? かと思ったら15年ぶりのアルバム。どことなく味わいの異なる豪快なブラス・ロック、甘さだけではない新たな魅力を持ったバラードなど、まるでデビュー作のように新鮮。新人女性シンガーとのデュエット曲もあり、別のバンドのようでもある。
ガイドコメント
2006年にリリースされた、およそ15年振りとなるシカゴのオリジナル・アルバム。ロックとR&Bの要素をバランスよく配備し、王者らしい風格を漂わせた、新たな意欲を感じさせる快作に仕上がっている。
収録曲
01FEEL
メロディアスに盛り上がるアルバム『シカゴ XXX』のオープニング・チューン。ロバート・ラムの塩辛いともいうべきヴォーカル、またホーンをフィーチャーしない無機質なサウンドなど、なんともシカゴらしくない? というか、これが新しいシカゴと宣言するかのような曲だ。
02KING OF MIGHT HAVE BEEN
ピアノ・ソロのイントロからしてすでに胸を締め付けられるようなバラード・ナンバー。次第にロマンティックに盛り上がっていく感動的な構成の曲で、甘く伸びやかな歌、控えめながら効果的なストリングスが印象的だ。
03CAROLINE
「キャロライン〜」という美しいコーラスで始まるミディアム・ナンバー。ホーン、ストリングスを中心にした変化に富んだ曲構成で、ラスト部分の力強いヴォーカルとコーラスの掛け合いは実にドラマティックだ。
04WHY CAN'T WE
ビル・チャンプリンと新人女性シンガー、シェリー・フェアチャイルドのデュエット曲。ピアノ中心のバラード・ナンバーだが、歌もサウンドもテクニックに走らず、あえてシンプルに仕上げたところがかえって感動的。
05LOVE WILL COME BACK
カントリー・トリオのラスカル・フラッツとのデュエット曲。甘酸っぱいヴォーカルと緻密なコーラス、はずむようなホーンが入ったドリーミーなバラードだ。まるで新人バンドのような新鮮さでいっぱい。
06LONG LOST FRIEND
タイトル通り友人と久々に再会した気持ちを歌った、ノスタルジックなミディアム・ナンバー。ホーンやストリングスの入った、華麗だがシンプルなバック・サウンドと、時々声を裏返しながらの力強いヴォーカルとの対比が印象的だ。
0790 DEGREES AND FREEZING
ダイナミックなホーンでスタートするシカゴならではのブラス・ロック。ロバート・ラムの若々しいヴォーカル、たたみかけるような迫力のあるホーンやピアノにギターなど、往年のファンには感涙の演奏だろう。
08WHERE WERE YOU
オープニングのコーラスとギターがかっこいい曲。キャッチーなメロディ、ストレートなドラムスなど、シンプルで親しみやすく、ノリがいいので爽快な気分に。甘いだけではないヴォーカルも聴きもの。
09ALREADY GONE
ビルと友人であるジョージ・ホーキンスとの共作曲。ホーンが大活躍し、曲の構成も凝っているため、華やかな雰囲気だ。ビルとジェイソンによるヴォーカルのバトルもスリリングで、ソウルフルな演奏で終わるのも見事。
10COME TO ME, DO
ゆったりとしたテンポのラブ・ソング。シャープなホーンやギターのカッティングなど、スタックス風のソウルフルなサウンドだ。ヴォーカルやコーラスも同様で、シンプルな仕上がりながらコクを感じさせる。
11LOVIN' CHAINS
「君の愛の絆」と歌われるラブ・ソング。とはいえバラードではなく、耳をつんざくようなホーンの洪水や唸りを上げるギターなど、実にパワフルだ。さらに、変化に富んだヴォーカルの充実ぶりはさすがと思わせる。
12BETTER
ビルの友人チャス・サンフォードが曲作りに参加。まるでヴォーカル・グループのようなコーラスの充実ぶりやファンキーな演奏に踊りだしてしまいそう。時にドスの効いたソウルフルなヴォーカルも曲によく合っている。
13FEEL
従来のシカゴ・ファンのために録音したシングルのホーン入りヴァージョン。じっくりと聴ける坦々としたシングル・ヴァージョンに比べ、いくぶんゴージャスになっている。無機質なサウンドとホーンの組み合わせがユニークだ。