ミニ・レビュー
数あるライのアルバムの中でも、ナンバー・ワンに数えられる名作。スラック・キィー・ギターの名人ギャビィ・パヒヌイらの豪華ゲストに囲まれて、ハワイアンからテックス・メックスまで、このうえなく豊潤な音世界が繰り広げられている。76年発表。
収録曲
01THE BOURGEOIS BLUES
原曲は白人への皮肉が込められたレッドベリー作のフォーク・ブルース。パーカッション以外の全楽器をライが担当し、12弦ギターの源流とされるメキシコの楽器“Bajo Sexto”も軽やかにプレイ。心地よくゆるやかな編曲だ。
02I GOT MINE
イントロこそポップでイマ風だが、曲が進むにつれて高まるのは懐かしく牧歌的な雰囲気。ディキシー風ブラスを交えた洒脱な解釈が、古きよき時代のミンストレル・ソングから温故知新的興趣をたっぷりと引き出している。
03ALWAYS LIFT HIM UP/KANAKA WAI WAI
マウンテン・ミュージック、ハワイアン、テックス・メックス、ゴスペルなどを溶け合わせたライ流ワールド・ミュージック。『チキン・スキン・ミュージック』の芳醇な音楽性と独自性を象徴した幸福感いっぱいの名演。
04HE'LL HAVE TO GO
ジム・リーヴスのヒットで知られるカントリー・ワルツがフラーコ・ヒメネスの温和なアコーディオンを得てテックス・メックスに変身。ボレロ風リズムやボビー・キングのヴォーカルが楽曲にひとさじの甘味を加えている。
05SMACK DAB IN THE MIDDLE
「シェイク・ラトル・アンド・ロール」の作者チャールズ・E.カルホーン作のナンバーを洗練さたっぷりに料理。ゴスペル・エッセンスあふれるバック・ヴォーカルや歌に併走する歌うようなギターがたまらなくクールだ。
06STAND BY ME
言わずと知れたベン・E.キングの名曲。この曲にゴスペル的なものを感じていたライによって、テックス・メックス風に味付けられたゴスペルだ。フラーコ・ヒメネスのアコーディングがスロー・テンポな曲調と共に郷愁を誘う。
07YELLOW ROSES
ギャビー・パヒヌイらハワイ在住ミュージシャンとのホノルル録音。原曲はハンク・スノウのカントリーだが、ここではそんな素性を微塵も感じさせないハワイアンにアレンジ。五感を心地よくスウィングさせる名演なり。
08CHLOE
ギャビー・パヒヌイ、アッタ・アイザックスとの名ギタリスト競演が楽しめる爽やかなインスト曲。ライもハワイアン・ギターの腕前を披露してみせるも、主役はパヒヌイとアイザックスとばかりに一歩引いてみせた印象。
09GOODNIGHT IRENE
レッドベリー作のフォーク・ナンバーをフラーコ・ヒメネスのアコーディオンを全面に出してテックス・メックスへと改変。やさしく、どこかいなせなライの歌声が、歌詞で描かれる愛おしい感情をいっそう得がたいものに。