ミニ・レビュー
某大手一流企業にいながらも、音楽のために退社してしまったスガシカオ。さぁ、どおする? でも、彼の才能ならば、きっと音楽でも食っていけるハズ。すでに多方面から注目を浴びており、今回のファースト・アルバムも心地よい生ギターと声を聴かせてくれる。
収録曲
01前人未到のハイジャンプ
渋みと優しさあふれるスガシカオの声が魅力的な、アコースティック・サウンドと見事に溶け合い胸に染み込むナンバーだ。爽快な風を感じさせるサビのコーラスと奥行き深いギターとキーボードのアレンジが素晴らしい。
02ドキドキしちゃう
君への想いが揺らぐ心情を、アッパーなテイストで聴かせる。エレクトリック・サウンドはカラフルなスポット・ライトのように空間を創り上げ、うねるギター・サウンドがアダルトで危険な雰囲気を醸し出すダンス・ナンバー。
03SWEET BABY (FULL Size)
失ってしまった愛情を求める心情や葛藤を綴ったナンバー。「求める愛」に起こる妄想は複雑に絡み合い、時に過激なイメージを描いてしまうもの。ギターの印象的なサウンドが、危険な香りを醸し出している。
04月とナイフ
弾き語りで見せる世界は、脳裏に焼きついた亡き愛しい人。過去を振り返り、後悔を経て希望を生み出そうとする自身の答えが、アコースティックの持つ温かくも悲しくも感じるメロディに見事に絡み合う。涙腺を刺激する曲だ。
05In My Life
自身をヒッピーになぞり、憂鬱さ漂う街や家族の風景を切り取っていく。60年代にみられた価値観を拒否し、脱社会的行動から希望を見い出す方法ではなく、「失望と夢」を抱く賢明さを持った現代的ヒッピーを感じさせる詞がユニーク。
06ヒットチャートをかけぬけろ (Album Version)
欲張り過ぎた結果、たどり着いたのは猿マネのコンセプト。それでもヒット・チャートを走り抜けて、君の胸へ届け、と願う。ブラス・サウンドを前面に押し出し、躍動感あるギターやドラムと混ぜ合わせたダンサブルなメロディが、爽快で心地よく響く。
07ドキュメント‘97
意中の人から連絡を待っているのに、友人から連絡が来てしまう瞬間を切り取ったドキュメント・ソング。些細な電話のやり取りの中にある焦りの描写が、リアルでコミカル。くすっと笑わせ親近感を持たせる仕上がりには敬服。
08サービス・クーポン
ミディアム・テンポのリズムから発光するようなパワーを持ったシャウトが感情を昂らせる。伸び伸びと広がるベース・ラインと中盤のテナー・サックスのソロが心を煽っていくと、聴き手が自然にスガシカオの世界に包み込まれていくようなナンバーだ。
09イジメテミタイ
あらがえない性の欲望を音楽に昇華する姿勢に圧倒される。タイトルからも読み取れるように、S的エロティックな世界観に満ちている。そんな感情をストレートに具現化した激しくかき鳴らされるギター・サウンドは、危険な刃物のようだ。
10黄金の月
情熱は冷めてしまっても、闇を背負ったとしても、そこから手さぐりで答えを掴み取ろうとする心情が綴られたナンバー。胸の深い部分を刺激するスガシカオの優しい歌声、緩やかで浮遊感漂うメロディが心へと染み込んでくるナンバー。