ミニ・レビュー
スリップノットのコリィとジェイムズにとって、サイド・プロジェクトの枠を超えたもうひとつの本気バンドのセカンド・アルバム。リリカルにしてヘヴィな質感を持つメロディのダイナミックなうねりからは、さまざまな感情のシーンが立体的に立ち上がってくる。
ガイドコメント
スリップノットのメンバーのサイド・プロジェクトとして始動したストーン・サワーによる、4年ぶりの2ndアルバム。元ソウルフライのロイ・マイヨルガを迎え、エッジの効いたヘヴィなサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
0130/30-150
ヘヴィで疾走感があり、血がたぎるような高揚感が味わえる『カム・ホワット(エヴァー)・メイ』のオープニング・ナンバー。新ドラマーとして迎えられた元ソウルフライのロイ・マイヨルガのダイナミックなドラミングが、楽曲を生き生きと躍動させている。
02COME WHAT (EVER) MAY
「人生の道程」という深い意味合いを持つアルバムの表題曲。苦難に立ち向かい、力強く生きようというメッセージが熱っぽい歌唱からビシビシ放たれる。鮮やかなタッピングが炸裂するギター・ソロも聴きどころだ。
03HELL & CONSEQUENCES
「人生の中で訪れるさまざまな恐怖に立ち向かおう」という前向きなメッセージが聴き手を鼓舞する。ジェイムズ・ルートのアイディアが冴えるアジアン・テイストのユニークな音色のギター・ソロなど、自由な発想によるプレイも魅力的だ。
04SILLYWORLD
穏やかで落ち着いたスロー・ナンバーかと思いきや、重厚なサウンドへと発展していく、これまでになかったタイプの楽曲。平和や自由、愛さえも不確かな現代社会の真相をえぐった詞世界が音に反映されており、全体に諦念や絶望が付きまとう。
05MADE OF SCARS
コリィ自身が幼少期に受けたつらい体験を基に作られたナンバー。内面から湧き出る、怒りとも哀しみともつかない感情を搾り出すような歌は一種のセラピー・ソングであるが、自虐的な負のエネルギーではなくポジティヴな光が感じられる。
06REBORN
邪悪なリフとスリップノット風の獣声で再生の狼煙をあげるサビが印象に残る、『カム・ホワット〜』中、最もアグレッシヴでヘヴィなナンバー。しかし、メロディの良さやメリハリのある演奏には押しの一手ではない、前作からの成長が感じられる。
07YOUR GOD
表情豊かな歌唱もさることながら、ギターの活躍度の高いのが本作の特徴。このチューンはその好例で、扇情的なリフ、テクニカルなギター・ソロや泣きのフレーズなどの多彩なプレイが、緩急ある展開をよりドラマティックに仕立てている。
08THROUGH GLASS
大ヒットとなった「バザー」を思い出させる、スリップノットでは絶対にないタイプのメロディアスで美しいバラード。心に染み入る歌が涙腺を刺激するが、大陸的な乾いた雄大さも持ち合わせており、湿っぽさやわざとらしさは皆無で、素直に聴ける。
09SOCIO
力強い歌と叩きつけるようなビートは、己の心に巣食う孤独や恐怖心に打ち克とうと、一歩一歩踏みしめて前進するメンバーの雄姿そのもの。内に秘めた燃えさかるパワーが伝わってくる情熱的なナンバー。
101ST PERSON
ヘヴィさとアグレッシヴさのバランスが絶妙なハードなナンバー。クリーンとデス・ヴォイスを使い分けた表現力豊かなヴォーカルとバンドのダイナミズムが合わさって生まれるテンションの高さは、スリップノットにも劣らない。
11CARDIFF
ひたすらダークでスローな楽曲で、『カム・ホワット(エヴァー)・メイ』の中ではわりと地味な印象。が、磨き込まれた歌とスケール感のあるサウンドは、決してさらっと聴き流せない重みと深みがあり、フィーリングはメタリカのバラードに近い様相だ。
12ZZYZX RD.
美しく力強い歌唱を中心に据えたピアノの弾き語り。郷愁の念を駆り立てる旋律と、クライマックスに向け徐々に盛り上がっていくドラマティックな構成がなんとも感動的。落ち込み傷ついた時にも心を癒し、希望を与えてくれそうだ。
13SUFFER
「レフト・ビハインド」辺りに通じる、へヴィネスとキャッチーをあわせ持ったトラック。非常にシンプルながら、魅力的なシンガロング・パートとコーラス・パート、弾きまくりのギター・ソロが盛り込まれており、このバンドの旨味が凝縮されている。