ミニ・レビュー
ダンス・ナンバーばかりノンストップでつないだ構成が、もはや異色の一言。アバを引用した(1)で大向こうを沸かせる半面、アンダーグラウンドの匂いを隠し味に利かせてもみせる。傾倒を表明したユダヤ教関係者の逆鱗に触れてみたり、女王様ぶりも健在だ。
ガイドコメント
メガ・ヒット・アルバムにして空前の問題作だった『アメリカン・ライフ』以来、女王マドンナの2年ぶりのアルバムは、世界を揺るがすダンス・チューンを満載した、ウルトラ・ポップな会心作だ。
収録曲
01HUNG UP
タイトルが“ダンスフロアでの独白”の意をなす11thアルバムからの1stシングル。79年のABBAのヒット曲「ギミー・ギミー・ギミー」をネタに使った打ち込みトラックで、キーンと張り詰めた空気感にグルーヴがうねるダンス・ポップ。
02GET TOGETHER
目覚まし時計のベル音から幕開けるイントロとは対照的に、深い眠りの底へ沈むような幻想的な感覚が襲うダンス・チューン。ダフト・パンクのような覚醒的なアンダーグラウンド・フューチャー・ディスコ。
03SORRY
仏、西、蘭、伊……そして英語と各語の“ごめんなさい”を、悲壮感漂う西欧的ストリングスの旋律へ乗せたイントロが、何とも印象的なナンバー。軸となるダンス・サウンドもどこか哀愁を帯びる。中盤には日本語の“ゴメンナサイ”も。
04FUTURE LOVERS
ポエトリー・リーディング風のイントロに低温のビートが這うハウス・チューン。どこか宗教的な色彩も見え隠れするミステリアスな雰囲気を保ちながら、ニューロマンティック風の妖艶なメロディが脳を刺激してやまない。
05I LOVE NEW YORK
JB「リヴィング・イン・アメリカ」やブルース・スプリングスティーン「ボーン・イン・ザ・USA」よりも、郷土愛が狭義的な、オンリー・ニューヨーク賛歌。現在彼女に宿る旬な音楽=ディスコ・サウンドに乗せ、その愛をクールに歌う。
06LET IT WILL BE
「パパ・ドント・プリーチ」を想起させる扇情的なストリングスからディスコ・ポップへの流れは、堰を切った川のよう。自由奔放で達観しているかのような心境さえ見せるヴォーカルに、彼女の余裕と自信がうかがえる1曲。
07FORBIDDEN LOVE
奥行きへ広がる深遠さと雄大さを兼ね備えたシンセの音色が、全身を包むようなハウス・チューン。運命のいたずらに委ねられた禁断の恋愛を、宇宙の闇あるいは胎内へと誘うようなまどろみ感あるテイストで構築している。
08JUMP
カラフルでポップなアレンジのイントロをやり過ごすと、物憂げで悲哀あるストリングスの調べがサウンドを覆う。ジャンプという弾けるテーマをあえて低温に保ち、内包的な決意を染み出させたダンス・チューン。
09HOW HIGH
澄んだ空気に漂うオリエンタル風にデザインされたエレクトロニック・ビートが、ヴォコーダー使いのアレンジとともに郷愁感を誘うテクノ・クラシカルなナンバー。うねりを持たせたなかのチープさが耳を惹きつける。
10ISAAC
カバラ学者のスポークン・ワーズを採り挙げた、異空間の佇まいを持ったドキュメンタリー・タッチのハウス・ナンバー。大陸的で土着的なエスニックの漂いと、先進的でクールなサウンドの融合やコントラストが斬新。
11PUSH
“私を後押しし続けて”と内包的ながらも強く懇願する、アンビエント的なダブ・ビート・チューン。陰極と陽極を行き来するようなサウンド・ワークの妙が、彼女の自信と脆さを曝け出しているようだ。
12LIKE IT OR NOT
苦難の淵を辿り歩いてきた彼女だからこそいえる、揺るぎない自信が随所から読み取れるアルバム『コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア』の終幕曲。哀愁あるメロディにくい込むビートは、漲るパワーの表われかも知れない。