ミニ・レビュー
乗りに乗っているグラミー・アーティストの第3作。スティーヴ・ジョーダン、ピノ・パラディーノという名人がギタリスト魂にも火を付けた。演奏がすごくいい。マテリアルも最高。そして心の琴線に触れる歌声。揺るぎない自信に満ちた、とんでもない傑作だ。
ガイドコメント
ジョン・メイヤーの通算3作目のオリジナル・アルバムは、またもや名曲揃いの永久保存盤だ。リード曲「ウェイティング・オン・ザ・ワールド・トゥ・チェンジ」はスティーヴ・ジョーダンとの共作。
収録曲
01WAITING ON THE WORLD TO CHANGE
ソウル・ミュージックへのオマージュがたっぷりと伝わってくるスウィートな作品。戦争に無関心だと決め付けられた若者世代の胸中を代弁する歌詞は、ネガティヴではなくポジティヴな無関心による反戦を表明している。
02I DON'T TRUST MYSELF (WITH LOVING YOU)
ヴィンテージな質感のサウンドと曲調で、男女のすれ違いを描いたラブ・ソング。ソウル・シンガー顔負けの甘い歌声で酔わせ、曲の締めくくりには切れ味あるギターで酔い醒まし。彼の若年寄な魅力が詰まった技巧的作品。
03BELIEF
「ウェイティング・オン・ザ・ワールド・トゥ・チェンジ」同様、若者世代の一歩引いた戦争観がうかがえるメロウ・ナンバーで、信念や信仰は一種の化学兵器だと指摘している。じわじわと熱気が上昇するベン・ハーパー客演曲。
04GRAVITY
冒頭からエリック・クラプトンを思わせるタッチのギターが鳴りわたるソウルフルなバラード。彼が志向するシンプルで、ピュアで、小賢しさの排除された作品を象徴するような楽曲は、キャリア中での重要な曲のひとつに。
05THE HEART OF LIFE
ジョージ・ハリスンの作風を思わせるイントロが印象的な3分間のポップ・ソング。フォーキーなメロディにブルージィなサウンドで味をつけたこの曲の完成度が、彼の作曲能力と隙を見せない構成力の高さを証明している。
06VULTURES
ジョン・メイヤー・トリオ名義でのライヴ作『トライ!』で発表したトリオ共作曲のスタジオ版。リズム隊の職人級にして達人級の規則的なリズム感覚が、楽曲が持つほのかなファンク・テイストをより美味に仕上げている。
07STOP THIS TRAIN
重なる年齢を走る列車にたとえ、「列車を止めてくれ、降りたい」と歌うモラトリアムなフォーキー・ソング。大人になることの畏怖を描いたこの歌詞は、彼が実際に父親と交わした会話を元にしたセミ・ドキュメンタリー調。
08SLOW DANCING IN A BURNING ROOM
“連続体”と題されたとおり、男女の破局までを時系列に並べた歌詞で描いている『コンティニュアム』。その破局がもはや目前であることを伝えるスロー・ナンバーで、アダルティなギターの音色はいまにも泣き出しそうだ。
09BOLD AS LOVE
叙情性あふれる名曲ながら、カヴァー曲は数えるほどしかないジミ・ヘンドリックス作品。凄腕リズム隊が生み出す跳ね気味のリズムの上で情熱的に展開される歌とギター。レニー・クラヴィッツを思わせる雰囲気がある。
10DREAMING WITH A BROKEN HEART
『コンティニュアム』の根幹をなす破局劇シリーズ“自問自答”編。もう恋人は去ったはずなのに、あれこれと部屋で考えてしまう主人公。ピアノをフィーチャーしたウェットな曲調が、ひび割れた心へとしみこんでくる。
11IN REPAIR
『コンティニュアム』の根幹をなす破局劇シリーズ“立ち直りかけ”編。彼が敬愛するチャーリー・ハンターとの共作曲で、チャーリーは代名詞の8弦ギターをプレイ。終盤、ジョンのギターが嗚咽のごとく泣きまくる。
12I'M GONNA FIND ANOTHER YOU
『コンティニュアム』の根幹をなす破局劇シリーズ“完結”編。いろいろ前向きに語ってはみせるも、言葉の端々からは終わりし恋への未練が。優しげなホーンを配したソウルフルな音世界で、弱い男を演じ上げたバラード。
13WHO DID YOU THINK I WAS
14GOOD LOVE IS ON THE WAY
ジョン・メイヤー・トリオ名義でのライヴ作『トライ!』録曲の新録版。コンテンポラリー・ポップな装いだが、ジョンのギターは縦横無尽。ジミ・ヘンドリックス系の多彩なリフを次々と繰り出している。
15WAITING ON THE WORLD TO CHANGE
シングルのカップリング用に録音されたベン・ハーパー参加のアコースティック・ヴァージョン。スティーヴ・ジョーダンがドラムを叩いていない分、原曲よりものんびりとした印象にしている。俗に言うオーガニックな雰囲気だ。