ミニ・レビュー
約3年ぶり6枚目のアルバム。アイリッシュ・ミュージックの影響が垣間見られる「三ツ星カルテット」「分別奮闘記」や、ソウルフルなバラード・ナンバー「angel fall」など、音楽性の幅を今まで以上に広げ、彼らでしか奏でることのできない高い音楽性を持ったアルバムに仕上げている。
ガイドコメント
約3年ぶりのアルバム。「魔法の料理〜君から君へ〜」「宇宙飛行士への手紙」「モーターサイクル」など4枚のヒット・シングルほかを収録。真摯なロック・ナンバーが揃った一枚。
収録曲
01三ツ星カルテット
夕暮れから夜の喧噪への時間の流れを想起させる、跳ねるビートと踊るようなギターが印象的。陽気なフラメンコともいえるような享楽的なナンバーで、恒星3つを目印に集ったカルテット(=メンバー4人)は音楽で結束していることを伝えてくれる。
02R.I.P.
過去の思い出のキーワードを詩的に並べたヴァースが、グッと世界観に深みをもたらす。タイトルは本来「安らかに眠れ」の意だが、ここではこれまでの体験や記憶を哀惜する感情に対して語っている。空間的な広がりを感じるバンド・サウンドも魅力の15thシングル。
03ウェザーリポート
雨上がりの下校の様子を思い返して綴ったポップ・ロック・チューン。相合い傘の内側で起こる小さな世界は、意外と繊細。傷ついても笑顔を絶やさないあなたを愛しく思う、懐かしくも甘酸っぱい愛着が湧くナンバーだ。
04分別奮闘記
ゴミの分別と夢とを対比させた詞がユニーク。君が捨てた夢はゴミとして“持って行かれてないぜ”と告げる、アイロニーを効かせたバンプ流応援歌だ。陽気な民族舞踊を思わせる颯爽とした曲調は、ファンタジーに満ちている。
05モーターサイクル
18thシングル。日常生活のサイクルにおけるさまざまな葛藤や矛盾に、突き放すでもなく関心するでもない一見日和見的な態度で皮肉る世界観は、藤原基央の感性ならでは。明朗なヴァースと一気に風を切るように突き抜けていくコーラスとのギャップが痛快。
06透明飛行船
後ろからグイグイと押されるようなグルーヴィなギター・リフが、周囲へ取り繕う心情を導き出す。平気なふりが通用せず路頭に迷う人たちへの、子供の頃は“そんなに上手に生きていましたか”という投げかけが優しく伝う。明日を生きる安定剤といえるアッパー・ロックだ。
07魔法の料理〜君から君へ〜
NHK『みんなのうた』起用の17thシングル。微かに郷愁を感じる朗らかでシンプルなバンド・サウンドを背景に、大人の自分から幼い頃の自分へ語りかける。“君の願いはちゃんと叶うよ”……期待と不安が入り交じる幼い君へのタイムマシン的なメッセージ・ソングだ。
08HAPPY
16thシングルとなったビートルズ風味のフックやブリッジが印象的なロック・チューン。喜怒哀楽がめぐる人生のなかで、痛みや虚しさを受け止め手探りで歩んできた人たちへ“どうせいつか終わる旅”なら一緒に歌おうと語りかける。バンプ流バースデイ・ソングだ。
0966号線
ヨーロピアンな薫りがほのかに漂うエスニックな曲風に包まれた、愛する人への唄を作り続けるというメッセージ。フォーキーな佇まいのシンプルなバンド・サウンドだが、訴求力は抜群。“音符を鍛えて剣にした”のフレーズからは、疑心暗鬼な自身からの成長がうかがえる。
10セントエルモの火
内なる鼓動の高鳴りが止まない、推進力を持ったグルーヴィなロック・チューン。タイトルは船上に火が灯ると嵐が静まったという伝承に由来する発光現象のこと。暗闇の道程が怖くないのは君が羅針盤になってくれたから……と、大切な君へ送る感謝の歌だ。
11angel fall
夜空に輝く星の行く末にバンプらしい死生観を重ねたミディアム・チューン。別世界への旅立ちを“一人減った未来”“一人多かった過去”と描写した詞が秀逸。星は消えても勇気は残る……は、いつまでも歌は消えないという強い思いの表われだ。
12宇宙飛行士への手紙
風が通り抜けるような爽やかでグルーヴィなバンド・サウンドは、未来が詰まった宇宙の広がりを思わせる。かけがえのない人生をともに生きたいという強い願いが込められた、7thアルバム『COSMONAUT』先行の18thシングル。
13イノセント
早口でササッと口ずさむようなヴァースと彼方へと叫ぶようなコーラスとの対照的な歌唱が特色。葛藤や苦悩を認めながら、言葉と音符で君の力になりたいと赤裸々に歌う。U2を想起させる雄大でストーリー性の高いロック・サウンドだ。
14beautiful glider
結局、最後は自分自身で悩んで踏み出すしかないんだ……苦難を乗り越えようとする心境を雨雲の中へ飛び出すグライダーにたとえた詞が素晴らしい。希望を感じる軽やかなギターがささやかに添えられたミディアム・チューンだ。