ミニ・レビュー
今をときめく上田ケンジ(元ケンジ&ザ・トリップス)を参謀に迎え、作詞作曲、編曲まで自前でこなす。KinKi Kidsの堂本剛ではない、“自己表現しているオレ”を堪能したかった気分は伝わる。ここまで発散した以上、本来の歌謡曲畑でもおきばりやす。
ガイドコメント
堂本剛がプロデュースするソロ・ワーク・プロジェクト、ENDLICHERI☆ENDLICHERI(エンドリケリー・エンドリケリー)の渾身のデビュー・アルバム。シングル「ソメイヨシノ」を含む話題の1枚。
収録曲
01ENDLICHERI☆ENDLICHERI
KinKi Kids堂本剛のソロ・ワーク「ENDLICHERI☆ENDLICHERI」のテーマ曲ともいえるインスト・ナンバー。深い川底から光り射す地上へとはい上がってくるかのような力強さが感じられるサウンド。
02故意
時を経ても愛する人のそばにいられることの幸せ感を、温かさあふれるメロディにのせた心地よいラブ・ソング。「ベッドも小さく感じることが幸福のはじまり」との歌詞に、男のキュートさを表現。優しい雰囲気のテクノ・サウンドも新鮮。
03雄
情けないほど彼女を愛してやまない“雄”の姿を、独特の堂本剛節で綴った作品。ふたりが出会うことは昔から決められていたこと……、そんなロマンチックさも。琴の音をモチーフとしたジャパニーズ・テイストのサウンドがお洒落にマッチ。
04闇喰いWind
サイケデリックな香りが感じらえるサウンドに、ドラマチックに盛り上がるブラス・アレンジがカッコイイ逸品。生きることに不安と期待が交錯するなか、奇跡を信じて前へ進むべきか。そんな哲学的要素を含んだ詞は“生”を考えさせられる。
05a happy love word
歪みある社会の中で上手に生きることは難しい。そんな今の時代を風刺したナンバー。哀愁漂うブルースチックなメロディ・ラインが胸に深く入り込んでくる。“a happy love word”が見つかるのはいつだろうか。
0616
答えの出ない恋、臆病ゆえに答えを出したくない恋……。誰もが1度は経験したことのある甘酸っぱい恋心を綴った楽曲。ベースの音が切なくも力強く心に響くソウルフルなサウンドと、色気ある堂本剛のヴォーカルが見事に調和されている。
07Chance Comes Knocking.
「Chance Comes Knocking」のフレーズだけが、まるで楽器のひとつのように唄い織り込まれているファンキーなインスト曲。派手なブラス・セクションがやけにカッコイイ仕上がり。
08御伽噺
オーケストラ・アレンジにテクノ&ファンクをミックスさせた、不思議なスケール感のあるサウンド。居心地のよい“御伽噺”の世界に浸かっていたいけれど、そうはいかない現実をユニークに表現。交響曲のような曲展開が面白い。
09Six Pack
“Six Pack”とは腹筋が6つに割れている最強の腹筋のこと。“僕が恋の不安を受け止めてあげるよ”と言いながら、実は自分が一番不安という、強がりな男の唄。そのいじらしい詞とキャッチーなメロディが耳に心地よく馴染む。
10ソメイヨシノ (album version)
通称“ENDLI”の第1弾シングルのアルバム・ヴァージョン。いつの間にか年を重ねていた母の姿から感じた、素敵な生き方とはなんぞやと投げかけた作品。堂本剛が持つ優しさと繊細さが詞の中に垣間見られる。
11Coward
アルバムのタイトルでもある“Coward”とは臆病者という意味。まるで海中を周遊しているような穏やかなさのなかに、目に見えない何かに怯えながらも前に進んでいく、ポジティヴさが感じられるキャッチーな曲。
12美しく在る為に
ストリングスが美しいミディアム・ナンバー。勝手さ、傲慢さなど、取り繕うために人が行なってきたことを皮肉を込めて綴っている。一見重い内容だが、ラストに「信じる力は繋がるわ/清い抵抗は繋がるわ」と希望を込めているのが心憎い。
13これだけの日を跨いで来たのだから
人は“生きる”ことに臆病になりがちな生き物。そんな不安も含めて輝かしい人生を歩んでいこうよ、というテーマのアルバム『Coward』を締めくくるポップ・ナンバー。ブラス・サウンドにピアノが加わることで、温かさを醸し出している。