ミニ・レビュー
シングル(6)(8)(10)を含む通算22枚目のオリジナル作。本人も大満足なようで、アッパーな歌い上げも囁くようなバラードも彼女の魅力を最大限に反映した楽曲ばかり。辛苦を知った大人だからこそ実感できる愛や希望に満ちた歌詞や、薔薇で統一されたブックレットも◎。★
ガイドコメント
2006年にデビュー25周年を迎える中森明菜のオリジナル・ニュー・アルバム。本人出演で話題となったドラマ『プリマダム』エンディングの「花よ踊れ」のアルバム・ヴァージョンなどを中心に、ダンス・ミュージックをフィーチャーした内容となった。
収録曲
01紅夜-beniyo-
大人の男女が恋に堕ちていく様子をマニキュアの色の変化にたとえた、アップ・テンポのナンバー。出だしは低くつぶやき、中盤で切なさを見せ、サビで一気に感情を爆発させるという、明菜ならではのヴォーカルが心地良い。
02嘘つき
強く見られがちな女性の“恋に揺れる姿を見抜いてほしい”という本音を綴った、シンガー・ソングライター、川江美奈子による歌詞も秀逸のメランコリックなナンバー。繊細な裏声や淋しげなギターの音色が情景を鮮明に描写している。
03Seashore
夜の浜辺を歩き、過去にとらわれずに生きることを決めた、という前向きでポップな楽曲。明菜の地声が力強く響くと、点在した抽象的な言葉が線となり、女性へのエール・ソングへと結実する。感情を煽るコーラスも効果的。
04眠れる森の蝶
現実から逃避して愛に生きる二人を描いたクラブ系ポップス。強く触れたら壊れてしまいそうなガラス細工を彷彿とさせるような明菜の繊細な歌声や、終始ループしている電子音が、夢うつつの世界を漂流するさまを巧みに演出している。
05鼓動
愛しい人との別離後も、相手の心や笑顔を胸に前向きに生きていけるという想いを描いた、重厚ながら爽快なアップ・テンポのナンバー。音程が低めのメイン・ヴォーカルに沿って響くギターやベース音が、主人公を鼓舞するような演出になっている。
06GAME (Album Version)
パチンコ『CR中森明菜・歌姫伝説』イメージ・ソングにもなっている、アゲアゲなサルサ風歌謡ナンバー。作曲を手掛けた林田健司が明菜と掛け合う形でコーラスに参加し絡み合う。アッパーなノリに、自然と気持ちが高揚させられる。
07夜の華
夜の性愛を大胆に描いた歌詞を、明菜が気高く歌うことでいやらしくならずにセクシーな要素が全面に出ている。這うようなベースのリズムと、吐息とも喘ぎとも区別のつかないウィスパー・ヴォイスが、夜の世界を艶やかに演出している。
08花よ踊れ (Album Version)
本人主演の日本テレビ系ドラマ『プリマダム』テーマ曲。ドラマの内容にリンクして、夢を諦めずに生まれ変わろうという歌詞を、明菜が力強い低音をきかせ励ますように熱唱。アルバム・ヴァージョンでは男性コーラスが加わり、いっそうムードを盛り上げている。
09LOVE GATE
愛が始まり扉が開く動きにたとえたミディアム調のナンバー。官能的でありながら女性の美しさを反映させた歌唱に思わずウットリ。歌唱も演奏も終盤に向けてどんどんエスカレートするので、ライヴでも盛り上がり必至だ。
10落花流水 (Album Version)
テレビ東京系・新春ワイド時代劇『天下騒乱 徳川三代の陰謀』主題歌。男女の関係を流れる水に運ばれる花に喩える松本隆による歌詞、艶やかに歌い上げるヴォーカル、そして異国情緒を醸しだす曲や演奏のバランスが見事。
11Only you
古今東西、このタイトルと同名の歌は数あれど、本作ほど愛欲にこだわったものはなかったか。「誘って」「淫らに感じて」「抱いて」「欲しがる」「あたしがあたしでなくなるほど」……などのフレーズが明菜の情念がにじみ出たヴォーカルで飛び交う、まさに究極の恋歌だ。
12Grace Rain
失恋のために雨に濡れてたたずむ女性を優しく励ますミディアム・バラード。明菜の低くうねる声が同性へのいたわりを感じさせる。ヴォーカルに寄り添うように終始聴こえるサックスが女性をエスコートするかのよう。