ミニ・レビュー
パンク・ロックをルーツに持ちながらも、アコースティカルで心地良いコーラス、メロディでリスナーを魅了するウエストコースト出身4人組のデビュー作。適度にビートを利かせ、シャープなロックンロールも美味で、甘酸っぱいムードにあふれた一作だ。
ガイドコメント
アメリカのロック・バンド、メイレイのメジャー・デビュー・アルバム。ポップ・パンクを背景に持ちながらも、美しいピアノとメロディアスかつ繊細なギター・サウンドが見事に融合されている。
収録曲
01BUILT TO LAST
2007年の夏を代表する洋楽ヒットとなったポップ・ロック・ナンバー。ピアノのメロディアスなアルペジオとアコースティック・ギターの歯切れ良いコード・ストロークに乗せて、クリス・クロンの伸びやかな歌声が響きわたる。
02RHYTHM OF RAIN
ハリケーン“カトリーナ”に破壊されたニューオリンズへの想いを歌い上げたメッセージ・ソング。ほこりっぽいエレクトリック・ギターの音色がアメリカの広大な平野を思わせる、スケールの大きなロック・サウンドに仕上がっている。
03FREQUENTLY BABY (SHE'S A TEENAGE MANIAC)
パンキッシュになったビリー・ジョエルといった趣もある、クリス・クロンのピアニストとしての側面が堪能できるポップなロックンロール・ナンバー。80年代ポップを巧みに消化した、ゴージャスでビッグなサウンドが印象的。
04FOR A LIFETIME
アメリカ社会の不平等な現実に対する疑問が込められたメッセージ・ソング。「このおなじみの通りには悪魔と天使がいる」と、アルバム・タイトル『デヴィルズ&エンジェルズ』の元になった一節が歌われている点にも注目。
05DRIVE AWAY
コールドプレイやキーンといったイギリスの叙情派バンドとの同時代性も感じさせる、メロディアスなバラード・ナンバー。“過去を振り返るのは止めて、前に進まなくちゃ”と、まっすぐな想いがどこまでも伸びやかに歌い上げられている。
06CAN'T HOLD ON
厳かで優美なストリングス・アレンジが感動的な、壮大なスケールを持つピアノ・バラード。メイレイの前身となるバンドでキーボードを担当していた日本人女性のクモン・リナが、バッキング・ヴォーカルとして参加している。
07IMITATION
リッキー・サンズのガールフレンドの自閉的な姉妹を励ますために作られたラヴ・ソング。哀愁漂うキャッチーなメロディ・ラインに絡む、往年のE.L.O.を彷彿とさせる華やかなキーボード・アレンジがポップ極まりない。
08LOVE CARRIES ON
“過ちは誰だって犯すもの。それを正すのに遅すぎるなんてことはないんだよ”。そんな優しいメッセージが確信をもって歌い上げられるポップ・ナンバー。特徴的なイントロはロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」をモチーフにしたもの。
09SHE'S GONNA FIND ME HERE
70年代のアメリカ南部ロックのマナーを継承した、ブルージィでアーシーなバラード・ナンバー。深い包容力を感じさせるメロディ・ラインを、クリス・クロンが朗々と歌い上げる。乾いた音色のエレクトリック・ギターも味わい深い。
10BIGGEST MISTAKE
ミッチ・ライダーの「デヴィル・ウィズ・ア・ブルー・ドレス・オン」に対するオマージュまで飛び出す、元気いっぱいのバンド・アンサンブルが魅力的。アメリカン・ロックの先達への愛に満ちたロックンロール・ナンバーだ。
11YOU GOT
エレクトリック・ギターのグルーヴィなコード・カッティングがフィーチャーされた、ちょっとダサめなノリが楽しいファンキー・チューン。リッキー・サンズいわく、「マイケル・ジャクソンのようなタイプの曲だ」とのこと。
12STAND UP
「立ち上がるんだ! 自分自身の足で立つんだ!」……そんな力強いポジティヴなメッセージが繰り返し歌われるロック・チューン。決して押し付けがましくない、リスナーを励ますかのようなクリス・クロンの優しい歌声に涙腺が緩む。
13YOU MAKE MY DREAMS
モータウン調の弾けるビートと甘酸っぱいメロディが印象的なダリル・ホール&ジョン・オーツの81年のヒット曲を、オリジナルに忠実にカヴァー。クリス・クロンの歌声は、その伸びやかなファルセットもあいまって、まるでダリル・ホールの生き写しのよう。
14NEW HEART
『デヴィルズ&エンジェルズ』録音前のデモとして制作された、バンド自身のセルフ・プロデュースによるポップなロックンロール・ナンバー。クリス・クロン自身がミックスを行なった生々しいガレージ・ロック・サウンドが印象的。
15SICK
ビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の本歌取りといった趣の、弾けるリズムが印象的なポップ・チューン。ジャズ風なインプロヴィゼーションが繰り広げられる間奏パートからは、メイレイの音楽性の深さが垣間見られる。