ミニ・レビュー
女優/歌手として高い評価を得ている今井美樹が敬愛するユーミンの曲をカヴァー。まさに、大人の大人による大人のためのアルバム。オリジナルをリスペクトしながらもスタイリッシュにアレンジされ、“今井美紀のアルバム”となっている。いい歌はいつの時代にもいい曲なんだと実感する。
ガイドコメント
2013年10月9日リリースの、今井美樹初となる邦楽カヴァー・アルバム。シンガーとしての原点といえるユーミンの名曲をセレクト。アレンジにインコグニートのブルーイらを迎え、優雅に粋なサウンドで名曲を彩っている。
収録曲
01卒業写真
いわずと知れた1975年発表の松任谷由実の名曲カヴァー。ピアノを中心とした繊細なアレンジに、今井美樹の優しく凛とした声が映える。誰もが知ってる名曲だからこそ、奇をてらわずに、大きく手を加えることなく、大切に歌い上げている。
02中央フリーウェイ
アルバム『14番目の月』収録曲として1976年に発表された松任谷由実の楽曲をカヴァー。原曲はAOR的なアレンジだったが、こちらはインコグニートがアレンジを担当。もちろん一級品のスタイリッシュなサウンドに仕上がっており、見事に生まれ変わっている。
03あの日にかえりたい
TBS系ドラマ『家庭の秘密』主題歌として人気を集めたユーミンのシングル曲のカヴァー。原曲にもあったボッサ・テイストを若干押し出しつつ、ストリングスでドラマティックな部分も演出。儚げなメロディに声質がピッタリとはまっている。
04人魚になりたい
松任谷由実が1980年に発表した『SURF&SNOW』収録曲をカヴァー。“フィズの泡”を思わせるピアノをはじめ、“和音感”を少なめにして幻想的なサウンドスケープを構築。ひとつひとつの言葉を置いていくかのような、丁寧なヴォーカルも見事。
05やさしさに包まれたなら
スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』エンディング・テーマとして広く知られる名曲のカヴァー。心が弾むようなアレンジだったユーミンの原曲よりも若干テンポを落とし、全体的に大人っぽい仕上がり。アプローチの方向はまったく異なるものの、完璧に溶け込んでいる。
06シンデレラ・エクスプレス
ドラマの主題歌や東海道新幹線イメージソングなどでも親しまれるユーミンの代表曲のカヴァー。ピアノとギターを中心に据えたゆったりとしたアレンジになったことで、与えるイメージはがらり一変。遠距離恋愛する主人公の姿も変わったように感じるのが楽しい。
07ようこそ輝く時間へ
「中央フリーウェイ」と同じく、インコグニートがアレンジを担当。原曲もホーンなどを配した洗練されたアレンジだっただけに違和感は少ないが、“大人の夏休み”というテーマにピッタリのどこかアンニュイな雰囲気をプラス。色気がグッと増している。
08霧雨で見えない
1987年発表の松任谷由実『ダイアモンドダストが消えぬまに』収録曲のカヴァー。ピアノを中心としたゆったりとしたバラードだが、アレンジの主役はハープ奏者のCamilla Pay。幻想的な音色に、優しいヴォーカルが映える。
09青春のリグレット
アルバム『DA・DI・DA』収録曲として1985年に発表された松任谷由実の楽曲のカヴァー。アップ・テンポだった原曲から、ボッサのテイストも入れつつグッと落ち着いた雰囲気に。“私を許さないで”のサビも、どこかやわらいだ響きに感じさせる。
10青いエアメイル
1979年に発表されたユーミンのアルバム『OLIVE』収録曲をカヴァー。原曲を踏襲したようなゆったりとしたアレンジで、離れ離れになり、まだ好きな気持ちが消えない大切な人を歌い上げる。親密さがうかがえるバックの演奏との空気も好感。
11手のひらの東京タワー
1981年のユーミンのアルバム『昨晩お会いしましょう』収録曲のカヴァー。ジャズのテイストを前面に押し出した大人っぽいアレンジで、“東京タワーのお土産”をテーマにした物語にあらたな広がりを与えている。余韻たっぷりのアウトロも心地よい。
12私を忘れる頃
1983年リリースの松任谷由実のアルバム『VOYAGER』に収録された楽曲をカヴァー。ピアノとギターを中心としたシンプルなサウンドに生まれ変わっており、多めに残された余白とささやくような歌声によって、描かれている長崎県稲佐山の風景が入り込んでくる。