「歌」の幅の広がりにヒラリー・ダフの成長が存分に堪能できる曲。ダンサブルなリズムにのせて、ヘヴィなギターがサウンドをリードしていく。2006〜7年のトレンドであるアラビック音階のフレーズもあり、随所に完成度の高さが感じられる。

サビでベース・ラインがオクターブを弾く2006〜7年にJ-POPで大流行したアレンジが特徴のアルバム『ディグニティ』のタイトル・チューン。ヒラリーが「あなたには尊厳（DIGNITY）がないの？」と繰り返す内容に、彼女の強い自尊心が見え隠れしている。

ヒラリーにとっては久しぶりとなるヒット・シングル。80年代に最もカッコ良かったブラック・コンテンポラリーのリズムに歪んだギターがうまくマッチしてしており、アルバム『DIGNITY』のコンセプト、“ロックとダンスの融合”に成功している。

80年代の打ち込みリズムに70年代のスペイシー・サウンドが乱舞するディスコ・チューン。21世紀を背負うアーティストらしいアプローチが、新しい感覚を運んでくれる。16ビートを盛り上げるにはどうギターをカッティングすればいいか？ の答えもここにあるはず。

ヒラリーの姉ヘイリー・ダフが曲作りに参加した、R＆Bテイストのリフが映える曲。オリエンタル・サウンドでタイトルが「ジプシー・ウーマン」にはもうひとひねり欲しいが、乱舞するサンプリング・ヴォイスとヒラリーの細やかな演技ぶりが好印象だ。

Aメロが4小節目だけ4分の3拍子になる変拍子アレンジで、そこからシャッフルのモータウン・サウンドに展開する。中間部でスクエアなビートになり、エンディングで跳ねリズムに帰還。プログレッシヴ・ロックのような構成のジェットコースター・ポップスだ。

ドラム缶のようなスネアの音が印象的な、ミシェル・ブランチのプロデュースで有名なグレッグ・ウェルズの作品。抜けの良いスネアのリズムも強力だが、しっとりとしたメロディとヒラリーがやさしく歌う“20歳のキモチ”も負けず劣らず強力だ。

ポップスの楽しさが詰まった80年代のエレクトリック・2ビート。いやなことを忘れさせてくれる爽快なサウンドとは対照的な歌詞は“オッカケ”の男の子に対する辛らつなもの。ヒラリーが女の子っぽく歌っているところが皮肉たっぷりだ。

親しみやすいポップ・サウンドで歌われるのは、ストーカーへの激しい嫌悪。この手のアーティストが「私を見ないで」と歌うのもあまりあることではない。甘いサウンドにヒラリーのロック・ヴォーカルがのっており、そのアピールの威力倍増だ。

ヒラリーが最も得意とするロック・テイストたっぷりのパワー・ポップ。若さやオンナを売りモノにするアーティストではないことを改めて感じさせてくれる力強い曲だ。ソングライター陣にマライア・キャリーらを手がけるレット・ローレンスも名を連ねる秀作。

たっぷりのストリングス・サウンドがヒラリーの歌う「苦悩」をデフォルメする。ヒラリーは明るい曲よりマイナー・キーのほうがポテンシャルが発揮できると改めて感じさせる迫力あるナンバーで、ストリングス・フレーズとコーラスのユニゾンもかっこいい。

P！NKが曲作りに参加したキレの良いドラム・ビートの爽快なポップス。ヒラリーのハスキー・ヴォイスが曲の進行とともに徐々に力を帯びていき、音が分厚くなったところで解き放たれるサビの演出は、彼女の表現力でこそ成せる技だ。

アルバム『ディグニティ』の中で唯一ダンスの要素がなく、70年代の香り漂う泥臭いギター・リフに支配される曲だ。歌がリフをなぞっていいのか？ という永遠のテーマに挑んでいるが、この曲はリフがかっこいいせいか、サビでなぞっている。

アルバム『ディグニティ』の先行シングルとして2006年秋に発表されたシングル曲。サウンドは歌謡曲MEETSアメリカン・ロックといった感じの歯切れの良いポップスになっており、ソングライター陣にはウィル・アイ・アムも名を連ねる意欲作だ。

派手なミクスチャー・サウンドにも負けないヒラリーの歌が聴きどころ。どぎついオート・ワウのベース・サウンドは好き嫌いがあるだろうが、ユーロビート好きという事実やヒラリーのヴォーカルの魅力に引き寄せられる可能性が大のリミックスだ。