ガイドコメント
新作も好評なELOの79年作品が、ジェフ・リン監修のデジタル・リマスター&ボーナス曲追加で再発。本作は最高傑作との呼び声高い1枚で、ジェフのポップ・センスが縦横無尽に発揮されている。
収録曲
01SHINE A LITTLE LOVE
大胆に取り入れたディスコ・サウンドに、流星のようなSE、跳ねるストリングス、ファルセット歌唱、必要以上に多様なギター・リフなどが絡まるバウンシーな曲。終盤での「E・L・O!!」のコーラスが楽しい。全英6位、全米8位。
02CONFUSION
耳に残るシンセサイザー・サウンドを駆使し、ジェフ・リン流の“ウォール・オブ・サウンド”を築き上げた労作。米国ポップスへの深い愛情をメロディのみならず、ロイ・オービソン化した歌唱でも表現している。全英8位、全米37位。
03NEED HER LOVE
歌詞の背景に大人の事情めいたものを感じさせるバラード・ナンバー。スライド・ギターをフィーチャーした優しげな曲調は、ジョージ・ハリスンを如実に思わせる叙情的世界。余韻を残すようなハーモニーも美しい。
04THE DIARY OF HORACE WIMP
若者が告白して結婚するまでを歌ったビートリッシュな曲。恋の進展を曜日別に描写する展開が面白いこの曲は、なぜだか土曜日が登場しない。のちにジェフ・リンにより明かされた理由はいかにも英国的で脱力。全英6位。
05LAST TRAIN TO LONDON
アルバム『ディスカバリー』収録曲でもっとも“Disco Very”な美メロ曲で、同じディスコ系の「シャイン・ラヴ」に比べると飛び道具的な演出は控えめ。ファルセット歌唱とクールなベース・ラインも本格的だ。全米39位。
06MIDNIGHT BLUE
この時期に結婚したジェフ・リンの幸福感が、そのまま楽曲に投影されたようなミディアム・バラード。複雑な構成をシンプルに感じさせる高度な楽曲で、美しいメロディもファルセットによるコーラスもとろけるような甘さ。
07ON THE RUN
ジェフ・リンが「風変わりなイントロを作るのに凝っていた」と振り返るとおりの一風変わった冒頭。シーケンサーをふんだんに活用したスピード感も心地よいポップ・ソング。ベースとシンセの絡みも面白い、隠れた名曲だ。
08WISHING
休日を満喫していたジェフ・リンの安らいだ気分が投影されたミディアム・バラード。ベース・ラインやストリングスなど全編にR&Bの香りが色濃く漂っている曲調は、むしろブルー・アイド・ソウル好きに喜ばれそう。
09DON'T BRING ME DOWN
ロックとクラシックの融合をテーマに掲げた彼らが、初めてストリングスを使わなかった転機曲。低音のリフを印象的に使ったラウドなロックンロール・スタイルは、その後の彼らの作風を代表するものに。全英3位、全米4位。
10ON THE RUN
完成版ほどシーケンサーがにぎやかでないデモ版。試作段階ながらコーラスまで聴ける興味深い音源の完成度に、のちにELOがジェフ・リンのソロ・プロジェクト化してしまったのも納得。完成版と聴き較べながらの鑑賞がオススメ。
11SECOND TIME AROUND
正式に楽曲として発表されていない未発表バラードのデモ。出し惜しみしたのか、わずか40数秒しか聴けないのが残念だが、それでもメロディの良さは十分に伝わってくる。デモ段階ながら、すでにコーラスが付いている。
12LITTLE TOWN FLIRT
一時期はジェフ・リンとも覆面バンド仲間だったデル・シャノンが、62年に全英4位、全米12位を記録したヒット曲(邦題「街角のプレイガール」)をカヴァー。印象的なコーラスを含め、原曲のムードを損ねない真摯な解釈がなされている。