ミニ・レビュー
自身のレーベル“HAPPY SONG RECORDS”設立後、そしてバンドが4人編成になって初のオリジナル・アルバム。いつまでも変わらないストレートでピュアなロック・サウンドはやはり彼らならではの技であり、今作でも瑞々しく輝いている。ユーモアもたっぷりだ。
ガイドコメント
自主レーベルからは初となる、約2年ぶり8枚目のオリジナル・アルバム。「砂鉄」「荒野はるかに」などのヒット・シングルを収録。彼らならではのパワフルなロックンロール・ナンバーが詰まった注目盤だ。
収録曲
01ゴーン
アルバムのオープニングを飾る軽快なロック・ナンバー。2分音符の連続というハイロウズらしいシンプルかつキャッチーなサビ・メロディが魅力。3番の“ゴーン”は「行ってしまった」を意味する“gone”。
02砂鉄
ハーモニカの音色がリフとなって楽曲を引っ張っていくにぎやかなサウンドが特徴的で、バラエティあふれるバンド・サウンドも華やかさを演出している。型に捉われない言葉遊び的な歌詞にもイマジネーションを掻き立てられる。
03ノロノロ
甲本ヒロトらしいユニークなロックンロール。行列をテーマにした歌だが、怒っている訳ではなくニュートラルな視点で綴られているのが特徴的。歌いはじめの“あ〜”や、随所でのパンチの利いたヴォーカルが聴きどころ。
04荒野はるかに
甲本ヒロトの口笛で始まる西部劇ロック。難しいヒネリや抽象的な表現は一切なく、一貫してさすらいのガンマンの心情が綴られる。映画のようなキザな言葉ばかりだが、確かな演奏とヒロトのヴォーカルには妙な説得力がある。
05アネモネ男爵
洗練度の高いロック・ナンバー。軽快なロックンロール調のAメロから歌謡曲風Bメロを経てキャッチーなサビへ展開するスムーズな流れが見事。聴き手それぞれの“アネモネ男爵”像を抱かせる懐の深い歌詞にも注目。
06夜の背
裏拍を強調したビートが心地良いポップ・ロック・ナンバー。いつになくヴァラエティに富んだコーラス・ワークと丁寧に歌う甲本ヒロトのヴォーカルが聴きどころ。不意を突くチャーミングなアレンジも特筆に値する。
07ブラジル
目まぐるしく変化する異色ナンバー。レゲエ〜ダブ風Aメロから軽快なシャッフルのBメロ、8ビートのサビ、さらに三線の間奏へと巧みに展開。ディレイなどのエフェクト加工されたサウンドも随所にちりばめられている。
08暴力アラウンド・ザ・クロック
ハイロウズらしいユーモアあふれるロック・ナンバー。すべての単語に“暴力”が付いた極めてユニークな歌詞で、朝から晩まで24時間、タクシーから風呂まで至るところすべてが暴力。間違いなくライヴ映えする1曲。
09ズートロ
ライヴ人気の高いチャーミングなロック。“ズートロ”“パートロ”“グートロ”といった具合に延々と意味不明のカタカナが続く。“ずーっとロック”ということらしい。わざと調子をズラす間奏のベースもユーモラス。
10スパイダー・ホップ
オールディーズ風ギターが印象的なポップ・ロック・チューン。深い意味はないが歯切れの良い単語が並ぶ歌詞とリズミカルなメロディとが絶妙にリンクした1曲。ベテラン・バンドらしいタイトなアンサンブルも魅力的だ。
11ザリガニ
散歩中に出会ったザリガニについて綴る切ないナンバー。スムーズな4ビートや多彩なコーラス、ユーモアあふれる歌詞など、聴きどころ満載。突然「ピンクパンサー」風のバリトン・サックスが入るなど、楽しいサプライズも。
12ヘッドホン
ベースとギターのユニゾンが印象的な8ビート・ロック。テンションの高い瞬間の心境を歌ったようなナンバーで、テルミンらしき浮遊サウンドや笑いのある歌詞など、甲本ヒロトのチャーミングな一面が堪能できる。
13たつまき親分
行進のような足音で始まるミディアム・ロック。赤ん坊を“たつまき親分”と呼び、優しく語りかける歌で、甲本ヒロトの深い愛情に満ちあふれている。マーチ風ドラム・ロールがこの子の明るい将来を暗示しているかのよう。
14プラプラ
アルバム『ドゥ!!ザ★マスタング』のラストを飾るセンチなミディアム・ナンバー。過度な演出の一切ないシンプルな1曲で、ゆえに甲本ヒロトの魅力的なヴォーカルが最大限引き立てられている。犬を飼っている人、必聴!