ミニ・レビュー
2005年札幌で結成の男女5人組ロック・バンドの5枚目のアルバム。時報とタイプライター音をバックにタイトル・コールするオープナー「RL」を皮切りに、幻想的ノスタルジアとでもいえる空間を演出。「アイデンティティ」などシングル3曲を含む、文学的な詞世界もますます冴えを見せる必聴盤だ。
ガイドコメント
北海道出身の5人組ロック・バンド、サカナクションの5thアルバム。シングル曲「アイデンティティ」「ルーキー」「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」を収録。さらなるスケール・アップを遂げた独自のサウンドを聴かせている。
収録曲
01RL
5thアルバムの幕開けを告げるインスト。時報とキーボードを叩く音をバックに発音されるアルバム・タイトル『DocumentaLy』のスペル。本来“R”の部分を“L”とすることで、タイトルの中に“mental”の単語を浮かび上がらせている。
02アイデンティティ
「東進」CMソング起用の3rdシングル。ダンサブルな4つ打ちビートで進むサカナクションらしいナンバーだが、パーカッションによるラテンのフレイヴァーが新鮮。サビの“どうして〜”のシャウトも強烈で、彼らのアンセムといえる一曲だ。
03モノクロトウキョー
シンセサイザーとベースのリフが印象的なロック・ナンバー。音の抜き方にバンドとしてのアンサンブルの精度の高さがにじみ出ている。明け方5時の東京の街を描いた詞をエモーショナルに歌い上げる山口一郎のセクシーな歌声が刺さる。
04ルーキー
うなるようなシンセサイザーと山口一郎のヴォーカル、そこに絡むダンサブルなビート。ダンス・ミュージック×ロックという彼らの音楽性がぎっしりと詰まったナンバー。崩壊寸前までビートを壊すブリッジや抽象的に描く詞世界も秀逸。
05アンタレスと針
ベタッとしたベース・ラインにギターのカッティングで生み出すビートが、スタイリッシュなジャズ・ファンクのにおいを感じさせる。星の瞬きを“シャウラ シャウラ”と描く言語感覚、ディープなシンセを入れ込んであっさりさせすぎないさじ加減が絶妙。
06仮面の街
YMOを想わせる、テクノ・ポップ風のピコピコしたシンセ・サウンドによるイントロが印象的なナンバー。そこに乗せる速いテンポのヴォーカルとリズムを壊すバッキングが変態性を、仮面をつけて生きる様子を描いた歌詞が緊迫感を生み出している。
07流線
ゆったりとしたアコースティック・ギターと歌を中心に、ドラマティックで壮大な風景を描く。決してうるさくはせず、それでもどんどんと熱量を帯びていくサウンドと“流線 新たに流線”という抽象的な言葉がミステリアスな雰囲気を作り上げている。
08エンドレス
5thアルバム『DocumentaLy』のリード曲となるナンバー。前曲「流線」の世界を継ぐピアノの穏やかなイントロから、一気にサカナクションらしいエレクトロとロックが融合したサウンドへと展開。合わせ鏡の中のような歌詞の世界も象徴的。
09DocumentaRy
5thアルバム『DocumentaLy』に収録のインストゥルメンタル。タイトルからもわかるとおり同アルバム収録のオープニング・ナンバー「RL」と対になるような作品で、実験音楽のようなエレクトロなサウンドが展開されている。
10「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」
東進ハイスクールCMソング起用の5thシングル。ゴスペルのようなコーラス、エレクトロ・サウンドから一気にバンド・サウンドへと展開するアレンジ、タイトルにもあるバッハの旋律をフィーチャーするなど、彼らの探求心と音楽性が現れたキラー・チューンだ。
11years
5thシングルのカップリング。アンビエント風のテイストを持つ、3拍子で展開するエレクトロ。この先待ち受ける時代の泥が、はさみが僕たちを傷付けたとき、君のことを思い出してもいいかい? と、希望の光を灯すような歌詞が響く。
12ドキュメント
5thアルバム『DocumentaLy』の本編ラストを飾るナンバー。アルバムのテイストを凝縮したような、ドロッとしつつも希望を感じさせるサウンドをバックに、ラストの“愛の歌 歌ってもいいかなって想い始めてる”のフレーズが強く余韻を残す。
13ホーリーダンス (Like a live Mix)
5thアルバム『DocumentaLy』のボーナス・トラックとして収録の、3rdシングル「アイデンティティー」のカップリング曲の“Like a live Mix”。韻を踏むような言葉遊びと高揚感のあるサウンドが心地よい。