ミニ・レビュー
ジャック・ジョンソンの来日公演の前座を務めたサーファー・ミュージシャンのデビュー盤。そのジャックの家でレコーディングされ、ゲストにはG・ラヴなどこの周辺の仲間たち多数。アコギにハスキーな歌声がなんともオーガニック。リラックスできる好盤。
ガイドコメント
ジャック・ジョンソン主宰のブラッシュファイアー・レコードから、アロハ・サーフ系アーティストのメジャー・デビュー作が登場。G・ラヴも参加した心地好いアコースティック・サウンドだ。
収録曲
01IT DON'T MATTER
肩の力の抜けたアコースティック・サウンドが心地よい1曲。ジャック・ジョンソンに通じる手触りを持ったドノヴァン・フランケンレイターの音楽性をよく表わしている、名刺代わりのナンバーといっていい、自然体のラブ・ソングだ。
02FREE
盟友ジャック・ジョンソンとの共作/デュエットという話題性もあって、1stアルバムを代表するナンバーとなったが、そうした予備知識を抜きにしても、素晴らしいメロディを持った名曲。タイトル通り“自由な”気分にさせてくれる。
03ON MY MIND
アコースティック・ギターにエレピが絡む、心地よい演奏だ。こうしたスタイルは、70年代から普通にあったものだが、ドノヴァン・フランケンレイターがやると、なぜか新鮮に聴こえてしまうから不思議。
04OUR LOVE
古典的な8ビートのロックンロール・ナンバーながら、ドノヴァン・フランケンレイターならではの味は存分に発揮されている。30年も前のスタイルをやっても、しっかりと今風の雰囲気があるのが、実に面白いところだ。
05WHAT'CHA KNOW ABOUT
レーベル・メイトであるG.ラヴがギターやハーモニカで参加しているナンバー。聴きどころは、やはり、そのG.ラヴによるブルース・ハープとギターで、ふたつの楽器をユニゾン風に重ねて演奏しているのが、非常にユニークである。
06BUTTERFLY
洒落たメロディに乗り、つかの間の夢を見る男の心情を綴ったナンバー。蝶々のようにフワフワと空間を舞うような、浮遊感に満ちたムードがこの曲の魅力だろう。アコースティック・ギターの伴奏だけで、この豊かな彩り……、なんとも感心してしまう。
07BEND IN THE ROAD
愛の終わりを歌った、センチメンタルなナンバー。ゆったりとしたリズムと哀愁を帯びた旋律、そして、女性に囁きかけるように歌うドノヴァン・フランケンレイターのヴォーカルが、絶妙のコンビネーションをみせている。
08DAY DREAMER
軽快なテンポのこの曲を聴くと、なんだかとても軽やかな気分になる。「他人からなんと言われようと、夢を見続ければいい」という、ドノヴァン・フランケンレイターからのさりげないメッセージを受け取ることができる曲だ。
09MAKE YOU MINE
歌詞だけを読むと、「君を僕のものにするよ」と繰り返す、かなり情熱的な求愛の歌だが、曲調やヴォーカルは、意外と軽やかでクール。そうした、決して暑苦しくならないところが、ジャック・ジョンソンにも通じる個性といえそうだ。
10CALL ME PAPA
タイトル通り、父親が可愛いわが子に呼びかけるナンバー。子供を授かったときの父親の心境というものは、古今東西、誰でも同じなのだろう。曲調も穏やかで、父親の気分を雄弁に物語っているかのようだ。
11HEADING HOME
“最新”のものが“最高”という風潮に対する疑問や、地球の環境破壊に対する警鐘などが歌い込まれたナンバー。自身もプロのサーファーであるドノヴァン・フランケンレイターだからこそ説得力を持つ歌といえるだろう。
12SO FAR AWAY
遠く離れた場所にいる恋人のことを想う男の心情を歌った曲。ゆったりとしたテンポで、メロディも歌い方も憂いを帯びているが、ここでは、それが恋人との間の実際の距離であり、それに対するあきらめの気持ちでもあるかのようだ。
13SWING ON DOWN
心地よくスウィングするナンバー。レーベル・メイトであるG.ラヴがギターやハーモニカで参加しているのも話題で、間奏での彼のハーモニカ・ソロも渋くてカッコイイ。楽しくセッションしている様子が伝わってくるような和やかな演奏だ。
14IT DON'T MATTER
スタジオ・ヴァージョンに比較的近い感じの仕上がりだが、キーボードの演奏が前面に出ていて、非常に軽やかで心地よい印象だ。ドノヴァン・フランケンレイターらしさが存分に発揮された名曲といえるだろう。
15MAKE YOU MINE
6分にも及ぶ長尺ヴァージョン。間奏における、各楽器間のフリーキーなインタープレイが最大の聴きどころで、グレイトフル・デッドの雰囲気も感じさせる。ドノヴァン・フランケンレイターのミュージシャンシップが味わえる、ライヴならではの演奏だ。
仕様
※〈エンハンストCD〉内容:ドノヴァン・フランケンレイターE.P.K.