ガイドコメント
ナイアガラ20周年企画の最後を飾る、84年の傑作アルバムのリマスター盤。曲順、音質、音圧どれを取っても究極のクオリティを誇る、まさにファイナル・リマスター仕様。ボーナス・トラックにも注目。
収録曲
01夏のペーパーバック
大滝詠一のファルセット・ヴォイスが堪能できるミディアム・ナンバー。軽い肌触りのサウンドに乗せて、避暑地で出会った女性への募る想いが歌われる。効果的に使用されたサックスの音色も爽快だ。
02Bachelor Girl
全編にストリングスを配したスウィートなミディアム・ナンバー。リゾート地を舞台に、恋に破れた主人公のもろく崩れそうな想いが歌われる。稲垣潤一によるカヴァー・ヴァージョンもヒットを記録した。
03木の葉のスケッチ
別れた恋人と偶然の再会を果たした主人公の、心の揺れ描いたセンチメンタルなナンバー。物悲しいストーリーに反して、クラリネットの音色が全編に配されたアレンジは、煌びやかでゴージャスな仕上がりに。
04恋のナックルボール
想いを寄せる女性への気持ちを、マウンドに立つピッチャーと重ね合わせた心浮き立つナンバー。ドゥ・ワップ・コーラスや随所に配された効果音など、大滝詠一のユーモア・センスにあふれたアレンジが施されている。
05銀色のジェット
ストリングスを全編に配した、スウィートでロマンティックなバラード・ナンバー。大滝詠一の歌の上手さを知るには最良の一曲で、感情の機微を見事に歌い上げたそのスキルには、あらためて驚かされる。
061969年のドラッグレース
分厚いファズ・ギターのイントロで幕を開けるアップ・テンポなナンバー。直接的な描写はないものの、歌詞は“はっぴいえんど”のことを歌ったものだとか。細かな部分まで深読みしたくなる、罪作りな一曲だ。
07ガラス壜の中の船
不思議なコード進行がクセになるバラード・ナンバー。ポツリポツリと語りかけるAメロから、爽快な広がりを見せるサビへの盛り上がりが絶品。エレガントなバッキングとヴォーカルの相性も文句なしだ。
08ペパーミント・ブルー
山下達郎にも通じる、流麗なメロディに彩られたミディアム・ナンバー。注目点は、なんといってもコーラス・アレンジの素晴らしさ。幾重にもなった声の層が、聴く者を非日常な夢の世界へといざなってくれる。
09魔法の瞳
恋の始まりのドキドキ感を歌ったアップ・テンポなナンバー。“イチゴ”“ショートケーキ”“ピーターパン”といったキーワードが並ぶ、オモチャ箱をひっくり返したような可愛らしくドリーミーな1曲だ。
10レイクサイド ストーリー
冬の湖を訪れた主人公が、別れた彼女との想い出に浸るセンチメンタルなナンバー。雪景色が眼前に浮かぶようなサウンド・メイクも秀逸だが、1足のスケート靴から物語を展開させていく松本隆の手腕にも驚かされる。
11フィヨルドの少女
別れた恋人を捜す主人公の漂泊感を、リズミカルなドラムによって加速させたアップ・テンポなナンバー。「さらばシベリア鉄道」ほど露骨ではないが、ギター・ソロなどにはスプートニクスあたり影響も見受けられる。
12Cider '83
大滝詠一のライフ・ワークといっても過言ではない、1973年から手がけ始めた三ツ矢サイダーCM曲の83年版。30秒ほどの超小品だが、そのわずかな時間にナイアガラ・サウンドの真髄がギュッと凝縮されている。
13恋のナックルボール (1st Recording Version)
『EACH TIME』のナイアガラ20周年企画盤に収録された、1stレコーディング・ヴァージョン。ぐっとテンポを落としたアレンジは、オリジナルの魅力を知る人にとっては好き嫌いが別れるところか。
14マルチスコープ
NHK『マルチ・スコープ』の主題歌で、『大滝詠一 SONGBOOK2』に収録されている「ゆらりろ」とは異名同曲。科学番組の主題歌ということもあり、デジタルな効果音が随所に配されている。