ミニ・レビュー
4年ぶりのオリジナル・アルバム(通算6枚目)。離婚を経験後に制作されたパーソナルな作品ということだが、これまでのダークさ、ヘヴィさを残しながらもポップさも感じさせるようになった。また、ギター・ソロも多くなり、変化を感じさせるが、いい演奏だ。
ガイドコメント
『ザ・ゴールデン・エイジ〜』以来、約4年ぶりとなる2007年6月発表のオリジナル・アルバム。“鬱のブラック・ホール”にインスピレーションを受けたという、彼らしい退廃的なベクトルを踏襲した作風だ。
収録曲
01IF I WAS YOUR VAMPIRE
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』のオープニング曲。おなじみのシアトリカルなスタイルで、ゆったりとして重々しい曲調だ。アルバムのイントロ・ナンバーにふさわしい重厚な内容で、コーラスもムードを助長。
02PUTTING HOLES IN HAPPINESS
パワフルなギター・ソロでスタートするミディアム・ナンバー。歌詞を噛みしめるかみしめるようにじっくりと歌うヴォーカルとヘヴィなサウンドが一体となって迫ってくる。間奏でもティム・スコルドのギターが大活躍。
03THE RED CARPET GRAVE
マリリン・マンソンらしくないポップな感覚のイントロが印象的。ヴォーカルと詞はおなじみのスタイルだが、サウンド的にはイントロに象徴されるように、より親しみやすい仕上がりだ。カッコいいギター・ソロがフィーチャーされている。
04THEY SAID THAT HELL'S NOT HOT
従来のゴシック的なイメージが少なく、ポップなサウンドが耳に残るナンバー。離婚の経験から生まれたと思われる、悲哀が感じられる曲で、彼らの新境地を感じさせる。曲全体に緩急があり、ドラマティックな仕上がりだ。
05JUST A CAR CRASH AWAY
インダストリアル系の金属的なサウンドを聴かせるスロー・ナンバー。間奏はハード・ロック風のサウンドで、ギター・ソロも効果的にフィーチャーされている。終わりに近づくにつれて、じわりと盛り上がっていく展開は感動的だ。
06HEART - SHAPED GLASSES (WHEN THE HEART GUIDES THE HAND)
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』からの第1弾シングル。新しい恋人とのエピソードにインスパイアされた曲で、その影響か、デヴィッド・ボウイを思わせるこれまでにはないタイプの演奏に驚かされる。濃密な歌やサウンドが魅力的だ。
07EVIDENCE
鐘の音色で静かに始まるも、核になるのは、攻撃的なヴォーカルや重々しいドラムス。ギター・ソロが多い本作『イート・ミー,ドリンク・ミー』だが、この曲も例に漏れずギターが魅力的。歌とともについ聴き入ってしまう。
08ARE YOU THE RABBIT?
ブルージィなフィーリングもあるミディアム・ナンバー。ポップさを適度に取り入れているアルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』の中で、この曲は従来のマリリン・マンソンらしい硬質な演奏だ。怒りを吐き出すようなヴォーカルなど、聴きどころ満載だ。
09MUTILATION IS THE MOST SINCERE FORM OF FLATTERY
体を動かしたくなるようなリズミックなナンバー。「フ○○ク・ユー」が連呼されている過激な歌詞で、ヴォーカルは熱っぽくエキサイティングな演奏だ。シンプルな構成の曲だが、かえって凄みがストレートに伝わってくる。
10YOU AND ME AND THE DEVIL MAKES 3
電線から火花が散るような音色のギターのイントロからスタート。ポップさを廃した従来の過激さをダイレクトに反映したナンバーで、呪術的な雰囲気を持ったパワフルな歌や演奏が光っている。
11EAT ME, DRINK ME
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』本編のラストとなるタイトル・チューン。『不思議の国のアリス』をモチーフにしたという、捉えどころのないどろどろとしたサウンドや鬼気迫るヴォーカルが魅力の、本作のハイライトのひとつだ。
12HEART - SHAPED GLASSES (WHEN THE HEART GUIDES THE HAND)
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』のボーナス・トラック。シングルのリミックス・ヴァージョンで、デヴィッド・ボウイを思わせる原曲の面影はなく、よりフロア向きのダンス・ナンバーとなっている。ヴォーカルとも相性がいいアレンジだ。
13HEART - SHAPED GLASSES (WHEN THE HEART GUIDES THE HAND)
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』ボーナス・トラック。シングルをダンス・ナンバーにアレンジしたリミックスで、本作はジェイド“AFI”ヴァージョン以上に遊び心を重視。ヴォーカルも含め、原曲のイメージを大胆に崩した仕上がりだ。
14PUTTING HOLES IN HAPPINESS
アルバム『イート・ミー,ドリンク・ミー』のボーナス・トラック。最初はやや違和感を覚えるアコースティック・ヴァージョンだが、やはりパワーは変わりがないと実感。ヴォーカルの存在感がそう思わせるのだろう。スライド・ギターに注目だ。