ミニ・レビュー
71年リリースのこの名作を得て、T・レックス、というかマーク・ボランはあとにも先にも彼一人の“グラム・スター”へと大出世。けばけばしいおもちゃのようなサウンドに、黒人音楽を自己薬篭化したよろこびが光る。プリンスに似ていた。発見!です。
ガイドコメント
71年のこの作品で、ついにT.レックスがグラム・ロック時代に突入。近頃は“グラム”がブームらしいので、『ジギー・スターダスト』とともに、このアルバムは絶対に押さえておくべき。
収録曲
01MAMBO SUN
淡々と爪弾かれるエレキ・ギター。シンプルなフレーズが繰り返される優しいミディアム・ナンバー。詞は情熱にあふれ、ワンフレーズごとに「for you」という言葉が登場する。アルバム『電気の武者』のオープニングだが、心憎いほど控えめなアレンジ。
02COSMIC DANCER
ストリングスとアコースティック・ギターのアレンジが心地よいフォーキーなスロー・ナンバー。包み込むような温かさは、T.レックスの前身、ティラノサウルス・レックスの匂いを感じさせる。
03JEEPSTER
アップ・テンポでダンサブル、一度聴いたら頭から離れないフレーズで迫る王道的なロックンロール・ナンバー。中性的なヴォーカルから後半のシャウトの展開は、ヴォーカリスト、マーク・ボランの魅力を十分に堪能できる。
04MONOLITH
女性コーラスとクラップで始まる落ち着いた雰囲気のスロー・ナンバー。エレキ・ギターの高音ソロと随所に登場するマーク・ボランのシャウトが、ロック・テイストのスパイスとして抜群の効果を発揮している。思わず手を叩きたくなるノリのよさだ。
05LEAN WOMAN BLUES
愛する女性に対する切ない想いを歌う王道ブルースを、T.レックスの解釈で昇華させたようなナンバー。ブルース独特の気だるさの中にも、マーク・ボランが持つ中性的な歌唱法が全体に爽やかさを与えている。
06GET IT ON
1970年代突入後、フォーク的アプローチからロックへの傾倒をみせた、T-REXの全英No.1ヒット。マーク・ボランのキャラクターどおり、“ワイルドでかわいい女にぞっこんさ”というセクシーなロック。
07PLANET QUEEN
冒頭のドラム&アコースティック・ギターの乾いたストロークが心地よいグラム・ロック・ナンバー。女性コーラスとマーク・ボランのヴォイス・コラボレーションが、楽曲タイトル通りの神秘的な魅力を醸し出している。
08GIRL
弾き語りで始まるスロー・ナンバー。以降もホーンとギターのシンプルなフレーズのみ。最小限のアレンジが、美しいメロディを最大限に引き立たせている。聴けば聴くほど、マーク・ボランの魅力にとりつかれてしまうような名曲。
09THE MOTIVATOR
大ブレイク作『ゲット・イット・オン』を彷彿とさせる軽快なロックンロール・ナンバー。誰もが耳にしたことのある、現在まで引き継がれているエレキ・ギター・ストロークの原点を感じることができる。
10LIFE'S A GAS
「でも、それは実際に重要なことではない」という、すべてをリセットしてしまうようなサビのフレーズが印象的。完成度の高いメロディの上に乗る投げやりな言葉。若さゆえの危うげな美しさを見事に表現したグラム・ロック・ナンバー。
11RIP OFF
メロディより感情を優先させたようなロック・ナンバー。マーク・ボランのエモーショナルな部分が全面に出ている。ストリングスやホーンを多用した重厚なアレンジは、単なるロックンロールでは片付けられない華やかさを持っている。