ミニ・レビュー
'70発表のセカンド・アルバムから'73年『ピアニストを撃つな』まで、エルトン・ジョンの初期の名盤がようやくCD化された。この5枚のCDの中にはピアノの吟遊詩人からゴージャスなロック・スターへと変容していくエルトンの軌跡が記録されている。特に最初期の作品の中では『グッドバイ・イエロー・ブリック・ロード』で完成する彼の音楽がよりピュアーな形で生きている。エルトンはポール・マッカートニーと並ぶメロディー・メイカーだ。
収録曲
01YOUR SONG
天から降ってきたようなメロディと天使が書いたような歌詞によるラブ・バラードの名曲。ピアノのイメージが強いが、ポール・バックマスター編曲のストリングス、そしてアコギの音色が効いている。ジョン・レノンのお気に入りの1曲でもあった。全米8位のヒットを記録。
02I NEED YOU TO TURN TO
初期のエルトンが愛用していたハープシコードをフィーチャーした、バロック調のアレンジによるラブ・バラード。“guardian angel”という言葉を使った古風なニュアンスのある歌詞にもよく似合っている。ポール・バックマスター編曲によるストリングスも素晴らしい。
03TAKE ME TO THE PILOT
日本盤シングル「僕の歌は君の歌」B面収録の、ピアノを弾くロックンロール・シンガーの伝統を受け継ぐ曲。パフォーマーとしての彼を象徴する、初期のライヴでは最も人気の高い曲のひとつ。バーニー・トーピンらしいナンセンスな歌詞も楽しい。
04NO SHOESTRINGS ON LOUISE
米国南部のフィーリングを漂わせたエルトン流ゴスペル・ソング。当時最新のスワンプ・ロックの世界をスライド・ギターをフィーチャーしたアーシーなサウンドとゴスペル・クワイア調コーラスで表現し、雰囲気を盛り上げる。米国南部の生活を幻視した歌詞も面白い。
05FIRST EPISODE AT HIENTON
古風なタッチのピアノが過去の世界へと聴き手を誘うバラード。テルミン仕様のシンセサイザーの音色も良い。バーニー・トーピンが生まれ育った、リンカーン州での少年時代の想い出を綴った歌詞も泣かせる。2ndアルバムの中では最も地味な曲だが、佳作。
06SIXTY YEARS ON
暴力的なまでに劇的なストリングスによるイントロに驚かされるバラード。スパニッシュ・ギターが誘う異国情緒あふれる中世的なムードも魅力的。間奏のオーケストレーションはまさに圧巻で、ドラマティックな曲想は初期のライヴでもハイライトのひとつだった。
07BORDER SONG
ソウルフルなヴォーカルとクワイアをフィーチャーしたエルトン流ゴスペル・ソングの傑作。旧約聖書の時代まで遡った歌詞も素晴らしい。1970年3月に発表された4thシングル曲。全米92位に終わったが、アレサ・フランクリンのカヴァーによって多くに知られる曲となった。
08THE GREATEST DISCOVERY
若き詩人バーニー・トーピンの才能を思い知らせるバラード。まだ幼い兄の眼を通して弟が生まれる日の情景を描いた歌詞が素晴らしい。その歌を“The Greatest Discovery”と名づけるユーモアのセンスも秀逸。若きエルトンの瑞々しい歌声も胸に沁みる。
09THE CAGE
サザン・ソウルの影響を感じさせるファンキーなR&Bソング。ホーン・セクションを導入した賑やかなサウンドは、内省的なバラードが多い2ndアルバムでは異色だった。家畜の眼を借りたかのような歌詞は、バーニー・トーピンの“南部幻想シリーズ”のひとつといえる。
10THE KING MUST DIE
ホーン・セクションとストリングスをフィーチャーしたドラマティックなバラード。徐々に雰囲気を盛り上げていくエルトンのソウルフルなヴォーカルとダイナミックなピアノが素晴らしい。聴き手に強烈な印象を残す意味深な歌詞もバーニー・トーピンならでは。
11BAD SIDE OF THE MOON
12GREY SEAL
13ROCK N ROLL MADONNA
観客の拍手や歓声を挿入した擬似ライヴ仕様のロックンロール・ソング。ヴォーカルや演奏もライヴ仕様で、初期のステージの楽しさがストレートに伝わる仕上がり。エルトンのピアノ・ソロも秀逸。英国や日本ではシングルとして発表されたが、米国では未発売。