ガイドコメント
プライマルの7thアルバムは、ボビー・ギレスピー自ら“エレクトロニック・ガレージ・バンド・フューチャー・ロックンロール”と銘打ったもの。マイブラのケヴィン・シールズをゲストに迎え、独自のガレージ・サウンドを展開。
収録曲
01DEEP HIT OF MORNING SUN
豊富なドラッグ体験を音にして昇華させたサイケデリック・ナンバー。転調し放題、ギター歪み放題な曲の中で揺れ動くコーラス。まるでノイ!とバーズとビーチ・ボーイズが一服キメながらセッションしているような曲だ。
02MISS LUCIFER
元セイバーズ・オブ・パラダイスのジャグズ・クーナーがプロデュースを手がけているエレクトロ・ガレージ・ブギ。ロックンロールの官能性と暴力性を強調したサウンドは、頭を空にして踊り狂うのにも最適な開放感。
03AUTBAHN
ジーザス&メリー・チェインを思わせるコーラスをジャーマン・ロック風サウンドに乗せた近未来サイケデリック・チューン。タイトルはクラフトワークの有名曲に、ロック・クラシック「ルート66」を合体させたもの。
04DETROIT
プロデューサーにケヴィン・シールズ、ゲスト・ヴォーカルにジーザス&メリー・チェインのジム・リードを起用。近代英国ロック三傑の顔合わせから、まさかデトロイト風味のデジタル・ロック・ナンバーが生まれようとは。
05RISE
“9.11”以前に「国防総省を爆撃しろ」と歌っていた歌詞が問題視された「Bomb The Pentagon」の改定版。それでも管理社会や武器社会を弾劾する歌詞は十二分に挑発的だし、PILを思わせるダビーなサウンドも鋭利だ。
06THE LORD IS MY SHOTGUN
ブルース・ハープと痙攣するギター・フレーズがブルージィでサイケデリックな空間を作り上げている、かなり独創的なトラック。ハープを吹くのは、偶然スタジオ近くを歩いていたとの理由で起用されたロバート・プラント。
07CITY
デヴィッド・ホルムスに提供したボビーとアンディ・ウェザオール共作曲「シック・シティ」の改作版。エレクトロに味つけされたローリング・ストーンズ風の原曲を、さらにロックンロール血中濃度を上げて激演。
08SOME VELVET MORNING
ナンシー・シナトラ&リー・ヘイゼルウッドが1968年にヒットさせた曲を、“スーパー・モデル”ケイト・モスをフィーチャーしてカヴァー。シンセ・ベースの醸し出すアシッドな雰囲気が、彼女の歌声をよりアンニュイに。
09SKULL X
デジタル化著しい彼らにしては珍しい正統ガレージ・パンク・ナンバー。ここでの主役はギタリストのアンドリュー・イネスで、ギュイギュイと自由度高く弾きまくる彼に牽引され、他のメンバーも自由度高いプレイを展開。
10A SCANNER DARKLY
“経験豊富”なボビーが「薬物中毒者の姿が正確に描かれている」と評するP.K.ディックの小説『暗闇のスキャナー』。その小説に触発され生まれたインスト曲で、終末感、不条理感など、小説世界に相通じる空気が漂う。
11SPACE BLUES 2
マーティン・ダフィーがリード・ヴォーカルを務めたナンバーで、かつて彼が在籍したフェルトのローレンス・ヘイワードに捧げられている。チリチリとしたサウンドが降り注ぐ、エレクトロニカ・ゴスペル・ナンバーだ。
12SUBSTANCE D
「ア・スキャナー・ダークリー」のリミックス版で、タイトルはP.K.ディック『暗闇のスキャナー』に登場する架空のドラッグ名から。キィキィきしむサウンドや、高鳴る鼓動のようなリズムが、聴き手の精神状態を不安定に。