ミニ・レビュー
ロックでもあり、テクノでもある孤高の二人が放つ6作目は、持ち前のアッパーさをすべてポジティヴに昇華したような“意外性”のある作風でまとめられた。生々しいタイトルの言葉は作り手の素直さの表われでもありそうだ。ほどよいポップさが昂揚感を増幅する。★
ガイドコメント
ヨーロッパ・デビューから10周年を迎えた、ブンブンサテライツの通算6枚目のアルバム。世界75ヵ国で公開の映画『ベクシル -2077日本鎖国-』の挿入歌「EASY ACTION」など、高揚感に満ちたエレクトロ・ロックが展開されている。
収録曲
01UPSIDE DOWN
歪んだシンセ音とスピード感を持って押し寄せるバンド・サウンドが、濃密なトランス調ロック。奔放に渦巻くディープなサウンドと複雑かつ驚異的な音進行に、張り詰めた緊張感がほとばしる。ぶちまけるようなシャウトも熱い。
02WHAT GOES ROUND COMES AROUD
力強く打ち込まれるドラミングが体の芯に響きわたるビート・テクノ・ロック。ギターやシンセなど、あらゆる音を詰め込み吹き荒れる音の嵐。聴く者をその音圧で押し潰す、アシッド&トランス風味の昂揚感が気持ち良い。
03MORNING AFTER
高速ビートで駆け抜ける、攻撃的なトランス・ナンバー。朝を題材にしながら、ヒップホップ的なヴォーカルとダンス・ミュージックのグルーヴを取り入れた音が刺激的。身を持ち崩しながらも、戦う意欲にあふれる男の朝を歌う詞も面白い。
04SHUT UP AND EXPLODE
ロックのエナジーを凝縮した、鮮やかな最新型ロックンロール。“破壊衝動に駆られた詞が書きたかった”という、レモンを題材にした不思議な詞が独特の雰囲気を作っている。BPM130以上という高速ビートに、体が心地よく麻痺するよう。
05BRING IT ON DOWN
切迫感をともなってヒートアップしていく力強いビートと高揚感に満ちたトラック。“You shake it!(もたもたするな)”と叫ぶ川島道行のヴォーカルが、怒りや欲求といった衝動をダイレクトに表わしているようだ。
06INTERGALACTIC
複雑に作りこまれた音とシンセの響きが独特の広がりをみせるダンス・トラック。刻々と移り変わるメロディの変化とハイテンションに突き進むヴォーカルが鮮烈。“人生に近い生々しい音楽をやりたい”と願う彼らの魂が込められている。
07SIX FORTY FIVE
炸裂するラップ調のヴォーカルと重厚なギター・サウンドを前面に出したロック・ナンバー。川島道行がヴォーカリストとしての高い実力を発揮している。ギターやベースなどさまざまな音が折り重なり、渾然一体となった雰囲気を作っている。
08FIENDS
割れるようなベース音が印象的なビッグ・ビート・テクノ。4つ打ちをベースにした熱い鋭角的なビートと攻撃的かつ繊細なプログラミングを施したテクニカルなサウンドが、彼ららしい。エフェクトを施したヴォーカルも絶妙。
09ENTERING ORBIT
派手なシンセ音が都会的なムードを作るインスト・ナンバー。ドラムをはじめとした生音と中野雅之が作り出すテクニカルなプログラミングが、絶妙に調和。これまでに体感したことのない、前衛的かつ壮大な音世界を描き出している。
10EASY ACTION
アヴァンギャルドな雰囲気が漂う、ヘヴィ・ロック調のテクノ・ナンバー。抑揚を持たせたメロディとエフェクトを効かせたエモーショナルな歌声、そして凶暴性すらもはらむ性急なビートが交錯する。未知のサウンドスケープへと誘われるよう。
11CLUSTER
わずか1分強のインストゥルメンタルは、激情的なパンク・チューン。モッシュするような激しいテンポで一気にヒートアップする構成には、どこか崇高さすら漂う。激烈な演奏を繰り広げながら、突如ブツリと終わるさまが潔く個性的だ。
12GET BACK IN MY HOUSE
ビッグ・ビートやデジタル・ロック、ニューレイヴ、ロック、そしてダンス・ミュージックまでが渾然一体となって吐き出される濃密なトラック。シンプルなビートに複雑なサウンドが絡み合い、ハードコアな雰囲気を作り出している。