ミニ・レビュー
各方面から絶賛の評価を受ける新鋭5人衆が、満を持して放つセカンド・アルバム。飄々とした志村節に乗って、変幻自在にくねるビートはより一層磨きがかかり、クリアさを増したサウンドと絶妙に溶け合っている。また一歩、新たな段階に踏み込んだ自信作。★
ガイドコメント
ロング・ヒットを記録した前作から約1年ぶりとなる2ndフル・アルバム。4〜6thまでの3枚のシングル曲など、彼ららしい印象的なナンバーが満載。練られたサウンドの中にある独特の懐かしさが魅力。
収録曲
01モノノケハカランダ
アルバム『FAB FOX』のオープニングを飾るのにふさわしい、最高に痛快なロック・チューン。刃物のように切れ味鋭いギターが曲を先導していくが、志村正彦のヴォーカルもそれに煽られるように、いつも以上にアグレッシヴに突き進んでいく。フジファブリックというバンドの勢いが実感できる一曲だ。
02Sunny Morning
アルバム『FAB FOX』1曲目の「モノノケハカランダ」同様、フジファブリックというバンドの勢いが実感できるナンバー。テーマは“旅立ち”。それならば、もちろん歩いてゆくよりも全力疾走のほうがいい、というのがフジファブリック流なのだ。「飛び込め!」という歌詞がポイントだが、ライヴの際にはダイヴのし過ぎにくれぐれもご注意を。
03銀河 (Album ver.)
1stシングル「桜の季節」から続いてきた“四季”をテーマにしたシリーズの最終章となる、“冬盤”ともいえる4thシングル曲のアルバム・ヴァージョン。「タッタッタッ」「パッパッパッ」といった擬音を巧みに使用することで楽曲のインパクトをアップさせるという、“劇画”的な手法が秀逸なロック・チューンだ。
04唇のソレ
ギターの速弾きがどこかカントリー&ウエスタン風のコミカルな味わいのナンバー。ちょっぴりユニコーンを連想させる感じが興味をそそらせる。内容は、誰しもが少なからず持っている“フェティシズム”についてのもので、こうした三枚目を演じるフジファブリックも魅力的だ。
05地平線を越えて
フジファブリックならではのポジティヴなロック・チューン。ボトムが太くハードにドライヴィングしていく全体のサウンドやキーボードのフレーズ、そして間奏における凝ったギター・ソロなど、どこか60年代後半〜70年代初頭のころのアート・ロックを彷彿とさせる。バンドの懐の深さが存分に味わえる一曲。
06マリアとアマゾネス
フジファブリックらしい歯切れの良いロック・ナンバー。主人公は、彼女が“マリア”から“アマゾネス”へと変貌するのを楽しんでいるフシがある。ということは、彼は相当のマゾヒストなのか? それとも……と、ついつい想像をたくましくしながら聴いてしまう一曲だ。
07ベースボールは終わらない
1960年代のアメリカン・ポップスを彷彿とさせるイントロのピアノのライン、ソフト・ロック調の弾むベース・ラインと、フジファブリック流にポップを極めたといったナンバー。晴れた休日は、こんな曲を聴きながら、河原のグラウンドで草野球……なんていうのもいいかも、と思わせてくれる聴後感がイイ。
08雨のマーチ
雨が降ると、いつもの見なれた街の景色がちょっぴり変わって見えてきたりするもの。そんな時、決まって気分はセンチメンタル……という“雨”についての歌。70年代に活躍したシンガー・ソングライターであるニルソンの作品をフジファブリック流に演奏している、という表現がピッタリの曲調だ。
09水飴と綿飴
歌詞の内容そのままに“祭りのあと”の寂しさに満ちた心持ちを歌ったバラード。あの娘と一緒に夏祭りに行けてとても楽しかったはずが、ふたりでトボトボと帰り道を歩きながら、まだ何か物足りないと感じてしまう……。そんな誰もがきっと経験したことがある心境や遠い記憶を呼び覚ましてくれる、不思議な曲。
10虹
雨上がりの気持ち良い空気をそのまま曲に昇華させたような、爽快ギター・ロック・ナンバー。シンプルに据えられたベース・ラインの上で、コロコロとキーボードがステップを刻む。きれいに寄り添ったAメロのコーラスが、清涼感を際立たせて心地良い。良質のポップ・センスを持つバンドだと改めて実感させられる。
11Birthday
誕生日がきて、今年もまたひとつ歳を取ると、一年前とはあまり変わっていない自分を実感し、ちょっとばかり焦ったりする。そして毎年思うのだ。“オレはもっとスゴイことができて、きっと他人に対しても思いやりの持てる人間のはず”だと。そんな思いが込められた、フジファブリック流のバースデイ・ソング。名曲です。
12茜色の夕日
インディ時代の1stミニ・アルバム『アラカルト』に収録されていた人気曲の別ヴァージョン。独特の詞世界とどこか懐かしくも力強いメロディが魅力的。綺麗な夕焼けを目にして、感じることやふと思い出すことはきっと人それぞれ違うもの。ちょっぴり大袈裟にいえば、それが人生というものなのだ……。そう思わせるナンバーだ。