ミニ・レビュー
米ブラック・ミュージック界の人気者のコラボレーション・アルバム。ヒップホップとR&Bのミックスというわけで、全編で熱くスリリングな掛け合いがたっぷり味わえるのがうれしい。二人が触発し合い、新たな魅力を発揮しているのも聴きものだろう。
ガイドコメント
アメリカのヒップホップ・スター、Bow Wowと元B2Kのリード・シンガー、Omarionによるコラボレート・アルバム。R&Bテイストの作品が多く、メロウで情熱的なハーモニーの魅力が最大限に引き出されている。
収録曲
01FACE OFF
歪んだ8ビートの刻みが怪しく揺さぶるアルバム『FACE OFF』の幕開け。“俺たちは最高の組み合わせ”と宣言される内容とぴったりフィットする2人の息の合ったパフォーマンスは、とてもエネルギッシュだ。
02HOOD STAR
メアリー・J.ブライジの作品で名高いフル・スケール制作のキャッチーなサウンド。オマリオンの歌唱とバウ・ワウのラップが絶妙な配置で楽しませてくれる。シンセ・フレーズやサビのメロディは甘いが、全体のサウンドは硬派に迫ってくる完成度の高い作品だ。
03GIRLFRIEND
リアーナの「アンブレラ」の作者、ザ・ドリームことテリアス・ナッシュならではのキャッチーで切ない胸キュン(!)サウンド。極上のメロディを極上に聴かせる、オマリオンお得意のロング・トーンが冴えわたる。音の隙間も最高に心地よい作品だ。
04HEY BABY (JUMP OFF)
リック・ルービンが手がけたL.L.クールJの名作「ゴーイング・バック・トゥ・カリ」を下敷きにしたコミカルな作品。古典で遊びながら、力を抜いた2人のパフォーマンスは器用そのもの。最後にネタ借用を請うオチが秀逸だ。
05HE AIN'T GOTTA KNOW
一聴してT-PAIN作品だと分かるメロディアスなR&B。揺れる16ビートにオマリオンの横揺れヴォーカルが絶妙に絡み、バウ・ワウのスクウェアなラップがサウンドの背筋を正している。2人の得意技が適材適所で際立つ秀作だ。
06BACHELOR PAD
ループ・フレーズをバウ・ワウがなぞった後に、オマリオンがまったく違うメロディで聴かせてくれるアイディア・サウンド。サンポーニャの音を使ったループと変態的なリズムが交錯して生まれるビートは、オリジナリティにあふれている。
07LISTEN
R.ケリー/バウ・ワウ名義のヒット曲「アイム・ア・フラート」を手がけたリル・ロニーの制作。腰のすわったピアノと深いバスドラに支えられて、ストリングスが忙しく舞う。オマリオンのやさいしい声とバウ・ワウの高速ラップとの溶け合いが絶妙だ。
08CAN'T GET TIRED OF ME
デスチャやブランディ&モニカの仕事で知られるロドニー・ジャーキンス一派のリック“ルード”ルイス制作。ダビーなオリジナル・トラックとバウ・ワウのリズムがズレながら進んでいく演出はとても高度。ゆったりコード感をつけるピアノがなんともリッチだ。
09NUMBER ONES
スパニッシュ・ホーンのネタ借用が大成功の熱いサウンド。オマリオンがサウンドに合わせてスペイン語っぽく歌っているのが微笑ましい。速い16ビートにバウ・ワウが水を得た魚のごとく軽快にラップしている。2人の柔軟性に感心してしまう作品だ。
10BABY GIRL
フュージョンがかった西海岸の幾何学サウンド。難解なリズムにもオマリオンが惑わされずに安定感のある歌唱を聴かせてくれる。何でもない言葉をリズムまみれにするバウ・ワウのスキルも光る。自在なうねりを生み出すサウンドに体が揺さぶられる。
11TAKE OFF YOUR CLOTHES
構成楽器がめまぐるしく変わるごった煮サウンドからは和笛の音も聴こえてくる。分厚くなったり薄くなったりするアレンジは飽きがこなくて良い。無国籍サウンドだからこそ、正統派パフォーマンスで挑む2人の演出が際立つ。
12ANOTHER GIRL
デュラン・デュランの82年のヒット曲「セイヴ・ア・プレイヤー」のフレーズをループさせたファンキー・サウンド。T-PAINやプリティ・リッキーとの仕事で知られるジム・ジョンシンの手腕が光るリズム・トラックは、とてもキャッチーだ。
13LIGHTS, CAMERA, ACTION
イントロの“オレはやらしい”には笑ってしまうが、ピアノのロー・トーンとワウ・サウンドが際立つトラックはひたすらクール。音域が似た2人の声を違う世界で聴かせる魔法が楽しめる。オマリオンのウィスパーと歌唱が混ざるサビは、とてもぜいたくな仕上がりだ。
14LET ME HOLD YOU
ルーサー・ヴァンドロスのメロウ・バラード「イフ・オンリー・フォー・ワンナイト」のAメロの1フレーズを前面にフィーチャーしたアイディアが光る、2005年の大ヒット。原曲を超える切なさを生み出すサウンドは、いつまでも色あせないはずだ。