ミニ・レビュー
武満は映画音楽の達人でもあった。と同時に無類の映画好きで頻繁に映画館に足を運んでいたことも知られている。彼の映画音楽は、作り手と見る側との観点と要求を兼ね備えた音楽だったといえるかもしれない。たとえば勅使河原作品だけでも8作品あるが、『サマー・ソルジャー』や『砂の女』などの前衛的作風から、『他人の顔』のクラシカルなワルツ、『利休』でのアジアン・テイストを盛り込んだものまで実に多彩な音楽を書いていて興味尽きない。さらにはこれも武満だったのかと再認識させる意外な名作も数多くありまことに楽しい。全7枚で計45作品(プラスα)を収録。7枚目は特典盤で「映画音楽とわたし」と題した対談があり、『天平の甍』やデビュー作となった『狂った果実』などを取り上げ含蓄の深い話が聞ける。武満の音楽芸術を語る上では欠くことのできないアルバムである。★
ガイドコメント
武満徹の没後10年企画BOXセット。90〜91年に発売された『武満徹の映画音楽1〜6』に、貴重な対談音源などを収録した当時の特典盤をプラスしたアイテム。日本が世界に誇る音楽家の功績を知るに最適。
収録曲
[Disc 1]〈小林正樹監督作品篇〉
01怪談
02切腹
03燃える秋
04からみ合い
05日本の青春
06化石
[Disc 2]〈篠田正浩監督作品篇〉
01化石の森
02沈黙
03美しさと哀しみと
04暗殺
05異聞猿飛佐助
06はなれ瞽女おりん
07あかね雲
[Disc 3]〈大島渚・羽仁進監督作品篇〉
01愛の亡霊
02東京戦争戦後秘話
03夏の妹
04儀式
05不良少年
06充たされた生活
[Disc 4]〈勅使河原宏監督作品篇〉
01他人の顔
02サマー・ソルジャー
03おとし穴
04白い朝
05砂の女
06ホゼー・トレス
07燃えつきた地図
08利休
[Disc 5]〈黒沢明・成島東一郎・豊田四郎・成瀬巳喜男・今村昌平監督作品篇〉
01どですかでん
02青幻記-遠い日の母は美しく-
03四谷怪談
04乱れ雲
05黒い雨
[Disc 6]〈市村崑・中村登・恩地日出男監督作品篇〉
01京
02太平洋ひとりぼっち
03古都
04二十一歳の父
05紀ノ川
06あこがれ
07女体
08素晴らしい悪女
09しあわせ
[Disc 7](特典盤)
01けものみち (須川栄三監督)
02最後の審判 (堀川弘通監督)
03錆びた炎 (貞永方久監督)
04桜の森の満開の木の下で (篠田正浩監督)
05対談「映画音楽とわたし」