ミニ・レビュー
ヒット・シングル「遠く」を含むメジャー・ファースト・アルバム。ロック、ヒップホップからラテンまでを網羅するジャンルレスなバンド・サウンド、恋愛から世界平和までをリアルに映し出すリリックがナチュラルに溶け合う音楽性は、1作目とは思えないほどの完成度。
ガイドコメント
2006年12月発表の1stアルバム。2MCのラップとキャッチーなサビが光るファンク・ロック「ASIAN VIBRATION」などのシングル曲を中心に、インディ時代からのライヴ人気曲などをコンパイル。彼らの魅力を凝縮した、内容の濃い1枚に仕上がっている。
収録曲
01Stormy Crazy Show
エレクトリック・ギターの鋭いカッティングが楽曲全体を引っ張っていく、ディスコティックなファンキー・チューン。2MCが掛け合いながらテンションを極限まで高めていく。情感たっぷりの泣きのギター・ソロも印象的。
02BRAZIL
インディ時代の代表曲をメジャー・レーベルならではのゴージャスなサウンド・プロダクションでリメイク。アコースティック・ギターの歯切れ良いコード・ストロークが前面に押し出された、スパニッシュ調のパーティ・チューンだ。
03ASIAN VIBRATION
音楽という武器を抱いて前へ前へと進んでいくんだ……。そんな強い決意が凝縮された、ASIAN2のテーマ・ソングともいえるミクスチャー・ロック・ナンバー。外国人が喋るつたない日本語を模した歌詞がユーモラスで楽しい。
04Bitter Sweet
ジャズ・コンボ・スタイルの演奏にアップ・テンポのラップをミックスしたユニークな構成が光るナンバー。軽く韻を踏みながら、“人生は山あり谷ありの連続だが、みんな地に足を付けてマイ・ペースで進もう”と呼びかけている。
05marmot (一)
ささやくようなラップと静謐なピアノ・サウンドがフィーチャーされた、怪しい雰囲気漂う小品。楽曲が展開していくにともなってドラムスにディレイがかけられたり、音像が左右のチャンネルを行き来するなど、実験的な音響処理が施されている。
06like a be burned
天国へと旅立って行ったかつての恋人に向かって歌われる喪失感に満ちたラブ・ソング。永遠の別れを経験した男が、忘れられない大切な思い出を抱きながら、それでも前向きに生きていこうとする姿を描いた歌詞が感動的だ。
07workin' man blues
日本を支える労働者たちに捧げられた、ブルージィなASIAN2流ワーク・ソング。日々の過酷な仕事に汗を流す平凡な人々の方が、肩書きだけの権力者よりも充実した人生を送っていて遥かに偉大だ、と高らかに歌い上げられる。
08BRIDGE
ハードなディストーション・ギターと極太のチョッパー・ベースが絡みまくるパワフルなファンク・ロック・ナンバー。キャッチーなメロディを持ったフックを軸に、フリーキーかつ豪快なラップが縦横無尽に飛び交うさまは圧巻だ。
09hanaoto
ディストーションで歪められたヴォーカル・サウンドによって、いやが上にもテンションを上げられてしまうヘヴィ・ロック・ナンバー。オリエンタルなフレーズを奏でるピアノが、ハードなバンド・アンサンブルの中のアクセントになっている。
10Ma:rchen- MトRCHEN -
いつの日か人種差別のない平和な世界が実現することを願う、真摯な想いと希望が込められたメッセージ・ソング。荘厳なストリングス・アレンジとサンプリングを多用した、ヒップホップ・サウンドの組み合わせが新鮮だ。
11遠く
ゆったりとしたテンポと美しいハーモニーで展開するラップ調のナンバー。戦争や差別、無謀な開発競争や環境破壊など、人類の歪んだ部分を告発しながら、愛と平和と自然の大切さをソフトに歌いかけている。
12marmot (二)
アルバム『five men l'amant』の「RISKY」のイントロにして「marmot(一)」のリズムを発展させた、ポスト・ロック風インストゥルメンタル・ナンバー。U2のエッジを彷彿とさせる、ディレイのかかったエレクトリック・ギターの音色が特徴的。
13RISKY
終わることのない真夜中の喧騒に身を委ねる快感を歌い上げたパーティ・チューン。エレクトリック・ギターが刻む軽快なカッティングが、楽曲のダンサブルなビートをいっそう強調している。力強く咆哮するサックス・ソロが艶やかだ。
14Come fly with me
タイトルそのままに、いつまでも自由に空を飛んでいこうとする強い意志を歌い上げた、ポジティヴなディスコ・チューン。重厚なストリングス・サウンドの隙間を軽やかに吹き抜けるフルートの音色が、歌の持つ世界観を巧みに音像化している。