ガイドコメント
“ベルセバ”人気を決定づけた2000年のアルバムを紙ジャケ復刻。スチュワート以外のメンバーの作品が増えたため、バラエティ豊かな印象を与える名作。全英チャート10位を記録。
収録曲
01I FOUGHT IN A WAR
ある兵士の一人称で淡々と綴られる、戦場での惨劇。4thアルバム『わたしのなかの悪魔』の冒頭から深いメランコリーを誘う、物悲しい叙事詩である。綿密に織り上げたハーモニーにトラッド・フォーク然とした気品を漂わせた音の美しさは圧巻だ。
02THE MODEL
木漏れ日のように降り注ぐバンド・アンサンブルのなか、牧歌のごとく穏やかに語られる“僕”の日常。それはまるで、我々自身の人生のスケッチのよう。夢見心地のサウンドとぶざまな現実とのギャップが、僕らをとことんやるせなくさせるのだ。
03BEYOND THE SUNRISE
ヨセフが夢の中で魅惑的な女に出逢うというシーンを描いた、幻想的な作品。神のごとく厳かなスティーヴィーの語り部と、甘く官能的なイザベルの誘惑。2人の生み出す深いコントラストは、まさに美しき英国フォークのラビリンスだ。
04WAITING FOR THE MOON TO RISE
乙女のロマンティックな空想を、サラのメランコリックな歌声で綴る。収録アルバム『私のなかの悪魔』の推薦文で、草野マサムネが彼らの作品を「雨の匂いみたいな切ないメロディ」と表しているが、まさにその名評がフィットする楽曲だ。
05DON'T LEAVE THE LIGHT ON BABY
マードックのアンニュイな語り口で描かれる、振られ際の男のやりきれない哀愁。しっとりしたコーラス・ワークとフェンダーローズのごとくヴィンテージ感たっぷりのキーボードをフィーチャーした、渋いスロー・ナンバーだ。
06THE WRONG GIRL
理想の子って、なかなかいないもの……。愛を模索する思春期のもどかしさを綴った、瑞々しいフォーク・チューン。室内楽集団ならではの極上ハーモニーが木漏れ日のごとく降り注ぐ、ベルセバ流のやわらかサンシャイン・ポップ。
07THE CHALET LINES
「蛍の光」を彷彿とさせる、スコットランド民謡のごとく、美しく奥ゆかしいメロディが心に染みる。ピアノの深い調べに乗せて静かに綴られるのは、“私はあいつにレイプされた”という、怒りに満ちた衝撃の告白だ。
08NICE DAY FOR A SULK
田園風景の中をテクテク散歩するような、のどかなフォーク・サウンドに乗せて、ある男の思いきり不機嫌な一日を歌う。平和な日常にも人間の負の感情は常に渦巻いている……。そんな事実を突きつける、深い衝撃を秘めた作品だ。
09WOMEN'S REALM
10FAMILY TREE
イザベルの甘く可憐な歌声と麗しきフルートの調べ。その日溜りのごとくやわらかいハーモニーで描かれるのは、ある少女の息苦しい日常。この世界はなんと美しく、そして哀しいんだろうか?……そんなジレンマが感じられる作品だ。
11THERE'S TOO MUCH LOVE
このやり場のない、あふれんばかりの恋心をどうしよう……。そんな想いが生きる喜びとして、音楽という形で見事に昇華された珠玉の名曲。英国フォークの秘宝、ペーパー・バブルのサウンドが現代に蘇った、奇跡のハーモニー・ポップ!!